無資格の書類作成で逮捕|行政書士法違反と特定技能の線引き

無資格の書類作成で逮捕|行政書士法違反と特定技能の線引き
受入企業向け 2026年10月の事例

無資格の書類作成で逮捕|行政書士法違反と特定技能の線引き

2026年10月8日、静岡県警清水署が、資格を持たずに許可申請書類を作成していたとして、53歳の男性を行政書士法違反の疑いで逮捕したと報じられました。入管の手続とは別の分野の事案ですが、「報酬を得て、他人の官公署に提出する書類を作る」という点は、特定技能の申請書類や届出とまったく同じ構造です。2026年1月には改正行政書士法が施行され、報酬の名目を問わず業務制限の対象になることが条文上明確になりました。受入企業として押さえておく点を整理します。

読了 約7分 公開日:2026年10月10日 カテゴリ:特定技能/行政書士法 執筆:行政書士 鹿間英樹
執筆:行政書士 鹿間英樹(行政書士しかま事務所・東京都行政書士会新宿支部/登録番号 第24080583号)/特定技能・技術・人文知識・国際業務を中心に累計500件超の在留申請に対応
この記事の結論
  • 行政書士法第19条第1項は、行政書士・行政書士法人でない者が、報酬を得て業として他人の官公署提出書類を作成することを原則として禁止しています(他の法律に別段の定めがある場合などは除かれます)。
  • 2026年1月の改正で、「いかなる名目によるかを問わず」が条文に入りました。支援委託費でも、手数料でも、コンサルティング料でも扱いは同じです。
  • 違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。両罰規定により、法人にも罰金が科されます。
  • 受入企業として確認すべきは、「申請書類を誰が作成し、その対価がどの契約に入っているか」です。

実際に逮捕された事例(2026年10月)

報道によると、2026年10月8日、静岡県警清水署は、沼津市の自称・会社員の53歳の男性を、行政書士法違反の疑いで逮捕しました。おととし11月ごろ、静岡市清水区内の法人の依頼を受けて、国土交通省に提出する許可申請書を作成したとされています。男性は行政書士の資格を持っていなかったとされ、今年3月に「無資格で行政書士業務をしているのではないか」という情報が寄せられて捜査が始まったと報じられています。警察は少なくとも1年以上は無資格で業務をしていたとみているとされ、認否は明らかにされていません。

入管の手続とは別分野の事案です

この事案は特殊車両の通行許可に関するものと報じられており、在留資格の手続ではありません。ただし、第19条第1項の制限は、特定の許認可の分野だけを対象とするものではありません。官公署に提出する書類である以上、在留資格の申請書類や届出についても、同条との関係を確認しておく必要があります。

何が禁止されているのか

行政書士法は、報酬を得て官公署に提出する書類を作成することを行政書士の業務と定め(第1条の3第1項)、資格のない者がこれを行うことを禁止しています。

条文内容
第19条第1項
(業務の制限)
行政書士または行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として、官公署に提出する書類などを作成することができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合などは除かれます(弁護士など、他の法律で業務が認められている場合があります)
第21条の2
(罰則)
第19条第1項に違反した者は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
第23条の3
(両罰規定)
法人の代表者や従業者が、その法人の業務に関して上の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人にも罰金刑が科される

現行の行政書士法(e-Gov法令検索で条文を確認)。電子申請で作成する電磁的記録も、書類の作成に含まれます。

ポイントは3つです。「他人の依頼を受けて」「報酬を得て」「業として」行う場合に制限がかかります。自社の従業員が自社の申請書類を作ることは、これに当たりません。

2026年1月の改正で明確になったこと

2026年1月1日に施行された改正で、第19条第1項に「いかなる名目によるかを問わず」という文言が加わりました。報酬の呼び方を変えても扱いは変わらない、ということが条文上はっきりしたことになります。

改正前の行為が適法だったという意味ではありません

日本行政書士会連合会は、令和7年11月1日の会長談話で、この改正は確認的な改正であり、施行前であっても同条違反に当たるとの考え方を示しています。「2026年1月から新しく規制が始まった」と理解するのは正確ではありません。

一方で、今回報道された事案で問題とされているのは、2024年11月ごろの行為です。改正法の附則には、施行前にした行為に対する罰則の適用についてはなお従前の例によるとの経過措置が置かれています。逮捕された事案の処罰と、改正後に整理された罰則・両罰規定の適用関係は、分けて考える必要があります。

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特定技能で論点になりやすい形

特定技能では、受入企業のほかに、登録支援機関、人材紹介会社、通訳会社など複数の関係者が関わります。その中で、申請書類の作成が誰の仕事として整理されているかが曖昧なまま進むことがあります。

1

支援委託費に、申請書類の作成が溶け込んでいる

月額の支援委託費や初期費用の中に、申請書類の作成が含まれているのかどうかが契約書から読み取れない形です。名目が支援委託費であっても、実質が書類作成の対価であれば同じ枠組みで評価されます。

2

紹介手数料や「手続き代行料」に含めている

人材紹介の手数料や、名目を変えた代行料の中に、申請書類の作成の対価が入っている形です。第19条第1項が名目を問わないとしているのは、まさにこうした整理を想定したものです。

3

「取次ぎができる」ことと混同している

特定技能では、一定の要件を満たす登録支援機関の職員が申請の取次ぎを行うことができます。ただし、取次ぎができることと、報酬を得て書類を作成できることは別の話です。

当事務所は多くの登録支援機関と提携しています。支援は登録支援機関、申請書類の作成は行政書士という形で分けておけば、どちらにも無理のない体制になります。実際、ご紹介をいただいて受入企業と直接ご契約し、必要な情報は三者で共有しながら進めている案件が多くあります。

受入企業が確認する3つのこと

契約の前に確認しておきたい点

  • 申請書類を実際に作るのは誰か——会社、行政書士、それ以外のどれか
  • その対価がどの契約・どの費目に入っているか——支援委託費と申請費用が分かれているか
  • 行政書士が関わる場合、誰が受任しているか——受入企業との契約か、別の会社との契約か

費用の総額が変わらなくても、契約の形を整理しておけば、後から説明を求められたときに困りません。受入企業にとっては、申請の責任の所在がはっきりするという利点もあります。

なお、当事務所が受入企業と直接ご契約する形を基本としているのは、事実関係の確認と責任の所在を明確にするための当事務所の方針です。直接契約でなければ法令違反になる、という意味ではありません。

特定技能の申請費用|当事務所の報酬(すべて税別)
申請の種類報酬備考
在留資格認定証明書交付申請
(特定技能1号)
50,000円1名あたり
在留資格変更許可申請
(特定技能1号)
50,000円1名あたり
在留期間更新許可申請
(特定技能1号)
30,000円1名あたり
在留資格変更許可申請
(特定技能2号へ)
50,000円1名あたり
初回相談無料全国オンライン対応
着手金は不要で、申請時点でのお支払いです。入管に納める手数料等の実費は別途となります。

よくある質問

報酬を得て官公署に提出する書類を作成できるのは誰ですか。

行政書士法第19条第1項は、行政書士または行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として官公署に提出する書類の作成を行うことを原則として禁止しています。ただし、他の法律に別段の定めがある場合などは除かれ、弁護士など他の法律で業務が認められている場合があります。違反した場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。

会社の従業員が自社の申請書類を作るのも違反ですか。

禁止されているのは、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として書類を作成することです。自社の従業員が自社の申請書類を作成することは、これに当たりません。問題になるのは、他社の申請書類の作成を引き受け、何らかの名目で報酬を受け取っている場合です。

支援委託費に申請書類の作成費用が含まれていると問題がありますか。

行政書士法第19条第1項は「いかなる名目によるかを問わず」と定めています。支援委託費、手数料、コンサルティング料など、名目が何であっても、他人の官公署提出書類の作成に対する報酬であれば対象になります。契約の中で、支援の業務と申請書類の作成を分けておくことが大切です。

申請の取次ぎと書類の作成は同じですか。

別のものです。特定技能では、一定の要件を満たす登録支援機関の職員が申請の取次ぎを行うことができます。一方、報酬を得て申請書類そのものを作成する行為は、行政書士法上の制限がかかります。取次ぎができることと、書類を作成して報酬を受け取れることは、分けて考える必要があります。

違反した場合、会社も処罰されますか。

行政書士法第23条の3は両罰規定を置いており、法人の代表者や従業者が、その法人の業務に関して第19条第1項違反の行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人にも罰金刑が科されるとされています。

まとめ

この記事のまとめ

  • 実際に逮捕事例が出ています——2026年10月、無資格での許可申請書類の作成
  • 対象は分野を問いません——官公署に提出する書類であれば同じ枠組み
  • 名目は関係ありません——支援委託費でも手数料でも同じ(他の法律に別段の定めがある場合は除かれます)
  • 法人にも罰金——両罰規定が置かれています
  • 役割分担を契約で明確に——支援は登録支援機関、申請書類は行政書士(業務分担の一例)

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参考にした法令・資料

行政書士法(昭和26年法律第4号)第1条の3・第19条・第21条の2・第23条の3(e-Gov法令検索で条文を確認)
静岡朝日テレビ「LOOK」2026年10月8日配信の報道(https://look.satv.co.jp/content_news/incident/100051)、テレビ静岡 2026年10月8日配信の報道
行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)本文・附則
日本行政書士会連合会 会長談話「行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について」(令和7年11月1日)
総務省 自治行政局長通知「行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)」(令和7年6月13日)および別添「行政手続窓口等における行政書士法違反の防止に向けた取組について」

この記事の情報について

本記事は2026年10月10日時点の法令・公表資料および報道に基づいています。記事で取り上げた事案は逮捕の段階であり、有罪が確定したものではありません。個別の契約が行政書士法に抵触するかどうかは事案によって異なりますので、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。

執筆:行政書士 鹿間英樹(行政書士しかま事務所/東京都新宿区西新宿4-40-5 西新宿ビューハイツ903)