特定技能の「日本人と同等以上の報酬」|有期雇用を理由に下げられない理由
特定技能の「日本人と同等以上の報酬」|有期雇用を理由に下げられない理由
賃金を決める段階でよく出てくるのが「特定技能は有期雇用だから、正社員より低くても仕方ない」という説明です。しかし同等報酬基準で比較されるのは、役職・職務内容・責任の程度であって、雇用形態ではありません。ここを取り違えたまま雇用条件書を作ると、申請の段階で説明を求められます。
- 根拠は特定技能基準省令第1条第1項第3号。外国人に対する報酬の額が、日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることが、特定技能雇用契約の基準とされています。
- 比較の軸は役職・職務内容・責任の程度です。参考様式第1-4号は、比較対象となる日本人労働者のこの3点が申請人と同等であることを示すよう求めています。
- 「有期雇用だから」は説明になりません。様式に雇用形態の違いを記載する欄はなく、そこを理由に差を設けても説明として成り立ちにくいと考えます。
- 比較対象の日本人がいない場合は、賃金規程、近い業務の日本人、近隣同業他社の特定技能外国人の順で判断されます。
- 報酬以外の待遇は、同省令第1条第1項第4号と労働法令の側で問われます。
同等報酬基準の根拠
特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(特定技能基準省令)の第1条第1項第3号に、次の基準が置かれています。
特定技能基準省令 第1条第1項第3号
外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること。
これは特定技能雇用契約が満たすべき基準です。賃金設定の問題であると同時に、在留資格の要件そのものだという点を最初に押さえてください。申請時には、雇用条件書に加えて特定技能外国人の報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)で、同等以上であることを説明します。
比較されるのは雇用形態ではありません
参考様式第1-4号の記載要領は、比較対象となる日本人労働者について役職、職務内容、責任の程度が申請人と同等であることを示すよう求めています。あわせて、年齢や経験年数の比較も記載する構造になっています。
「有期雇用だから低い」は説明として通りにくい
様式には、雇用形態の違いを理由に報酬差を説明する欄が設けられていません。比較の軸として想定されているのは、あくまで役職・職務内容・責任の程度・経験年数です。
そもそも特定技能の在留資格は、業務区分の範囲でしか就労できず、1号には通算上限もあります。こうした制約は同等報酬基準が置かれた時点で前提になっているものです。その前提を持ち出して報酬を下げる説明は、基準の趣旨からしても成り立ちにくいと考えます。
賞与・退職金も見られます
基本給だけを合わせても、賞与や退職金の有無で差が生じていれば、報酬全体として同等以上といえるかが問われます。就業規則や賃金規程で支給すると定めている手当・賞与・退職金は、報酬の一部として検討の対象になると考えられます。
実務でよく見るのが、正社員向けの賃金規程と、特定技能外国人に適用する雇用条件書が別々に作られていて、両者を並べると説明がつかなくなっているケースです。雇用条件書を作る前に、賃金規程と突き合わせてください。
比較対象の日本人がいない場合
同じ業務に従事する日本人がいない事業所も多くあります。入管庁の「特定技能制度に関するQ&A」では、この場合の考え方が示されています。
賃金規程がある場合
賃金規程に基づいて報酬が決定されているかを確認する形になります。規程の内容が外国人にも同じように適用されていることが前提です。
近い業務を担う日本人がいる場合
その日本人労働者の役職や責任の程度を踏まえたうえで、特定技能外国人との報酬差が合理的に説明されているか、年齢及び経験年数を比較しても報酬額が妥当かを検討して判断するとされています。
賃金規程がなく比較対象の日本人もいない場合
雇用契約書記載の報酬額と、当局が保有する近隣同業他社における同等業務に従事する同等程度の経験を有する特定技能外国人の報酬額を比較することとされています。
技能実習からの移行では経験年数の扱いに注意
技能実習を修了して特定技能へ移行する方は、その分野で複数年の実務経験を積んでいます。未経験者と同じ初任給を当てはめると、経験年数の比較で説明がつかなくなります。移行の場面では、技能実習時の報酬額を上回っているかどうかもあわせて確認してください。
報酬以外の労働条件は別の枠組み
同等報酬基準が対象としているのは報酬です。寮費の負担額、教育訓練、福利厚生施設の利用といった報酬以外の待遇は、別の規定で問われます。
特定技能基準省令 第1条第1項第4号
外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと。
加えて、労働基準法第3条は、労働者の国籍等を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをすることを禁じています。入管法令上の基準を満たしているかどうかと、労働法令に適合しているかどうかは、別々に確認が必要です。
報酬を変更したときは届出が必要です
昇給や手当の変更などで報酬額が変わった場合、特定技能雇用契約の変更に係る届出の対象になることがあります。詳しくは特定技能の随時届出をご覧ください。
「この賃金設定で説明がつきますか」
賃金規程との突き合わせ、比較対象の選び方、説明書の組み立てまで。
雇用条件を決める段階からご相談いただけます。着手金は不要です。
よくある質問
有期雇用だから基本給を低く設定してもよいですか。
説明としては通りにくいと考えます。参考様式第1-4号が求めているのは、比較対象となる日本人労働者の役職、職務内容、責任の程度が申請人と同等であることを示すことです。雇用形態の違いを記載する欄は設けられていません。
賞与や退職金も同等報酬基準の対象ですか。
就業規則や雇用契約で支給すると定めている場合は、報酬の一部として検討の対象になると考えられます。基本給だけを合わせても、賞与や退職金の有無で差が生じていれば、報酬全体として同等以上といえるかが問われます。
比較対象となる日本人労働者がいない場合はどうしますか。
入管庁の特定技能制度に関するQ&Aでは、近い業務を担う日本人労働者がいるときは、その役職や責任の程度を踏まえて報酬差が合理的に説明されているか、年齢及び経験年数を比較しても報酬額が妥当かを検討して判断するとされています。賃金規程がなく比較対象の日本人もいない場合は、雇用契約書記載の報酬額と、当局が保有する近隣同業他社における同等業務に従事する同等程度の経験を有する特定技能外国人の報酬額を比較することとされています。
寮費を給与から控除していますが、問題になりますか。
控除の可否は、労働基準法第24条第1項の賃金全額払いの原則との関係で別途検討が必要です。金額の妥当性だけでなく、控除を行うための手続が整っているかが問われます。この論点は範囲が広いため、別の記事で扱います。
ご依頼と費用
同等報酬の説明は、申請書類を作る段階ではなく、雇用条件を決める段階で組み立てておくほうが確実です。当事務所は特定技能に特化し、来客対応を行わない完全オンライン体制で運営しています。賃金設定のご相談だけでも承ります。
| 種類 | 報酬(税別) | 備考 |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請 /在留資格変更許可申請 | 50,000円 | 1名あたり。雇用条件書・報酬に関する説明書の作成を含む |
| 在留期間更新許可申請 | 30,000円 | 1名あたり |
| 随時届出 | 20,000円 | 1件あたり。報酬変更に伴う届出を含む |
| 初回相談 | 無料 | 賃金設定の確認のみでも可 |
まとめ
この記事のまとめ
- 根拠は特定技能基準省令第1条第1項第3号——報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること
- 比較の軸は役職・職務内容・責任の程度——参考様式第1-4号がこの3点を示すよう求めている
- 雇用形態の違いは説明にならない——在留資格の制約は基準が置かれた時点の前提
- 賞与・退職金も報酬——基本給だけを合わせても足りない
- 比較対象がいない場合は3段階——賃金規程、近い業務の日本人、近隣同業他社の特定技能外国人
- 報酬以外は別の枠組み——省令第1条第1項第4号と労働基準法第3条
雇用条件を決める段階からご相談ください
申請の直前に賃金設定を組み替えるのは負担が大きくなります。
全国オンラインで対応しています。
参考にした一次情報
特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(e-Gov法令検索)出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」
出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」に掲載の参考様式第1-4号(特定技能外国人の報酬に関する説明書)
労働基準法第3条
この記事の情報について
本記事は2026年9月5日時点の法令および出入国在留管理庁の公表資料に基づいています。様式および運用は改正されることがありますので、申請にあたっては必ず最新の情報をご確認ください。個別の賃金設定の妥当性は事案ごとに異なります。具体的な事案については専門家にご相談ください。
執筆:行政書士 鹿間英樹(行政書士しかま事務所/東京都新宿区西新宿4-40-5 西新宿ビューハイツ903)



