【登録支援機関・監理団体向け】育成就労制度における支援機関の役割と技能実習との違い

【登録支援機関・監理団体向け】育成就労制度における支援機関の役割と技能実習との違い | 行政書士しかま事務所

2024年6月に「外国人の育成就労に関する法律」及び「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が可決・成立し、技能実習制度に代わる新たな「育成就労制度」が創設されることとなりました。2025年3月11日には、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」及び閣議において特定技能制度及び育成就労制度の基本方針が決定され、制度移行に向けた準備が着々と進められています。

新しい育成就労制度においては、外国人材を支援する機関として、既存の登録支援機関の役割が見直されるとともに、技能実習制度における監理団体が「監理支援機関」として再構築されることになります。これにより、外国人材への支援体制が大きく変化することが予想されます。

本記事では、育成就労制度における支援機関(登録支援機関・監理支援機関)の新たな役割・責務と、技能実習制度からの変化について詳しく解説します。特に、現在の登録支援機関や監理団体の関係者の方々にとって、今後の事業展開を考える上で参考になる情報をお届けします。

育成就労制度の概要と技能実習制度との違い

まず、育成就労制度と技能実習制度の根本的な違いについて理解しておきましょう。

比較項目技能実習制度育成就労制度
制度の主目的開発途上国への技能・技術等の移転による国際貢献我が国の人手不足分野における人材の育成・確保
在留期間最長5年間原則3年間(一部例外あり)
制度間の移行特定技能制度への移行(試験免除あり)特定技能制度への移行(評価試験に合格が必要)
転籍・転職原則不可同一企業で1年以上就労後可能
支援・監理主体監理団体監理支援機関・登録支援機関
日本語要件特に設定なし在留資格取得に一定の日本語能力が必要

技能実習制度が国際貢献を主目的としていたのに対し、育成就労制度では日本国内の人手不足解消という国内事情に焦点が移っています。また、在留期間は原則3年に短縮される一方、転籍が可能になるなど柔軟性が高まります。

POINT

育成就労制度では、技能実習制度にはなかった「特定技能への移行」を明確に制度設計の軸に据えています。外国人材の育成計画も、将来的な特定技能資格の取得を見据えた内容となっており、日本での長期的キャリア形成が視野に入れられています。

支援機関の制度的位置づけの変化

育成就労制度では、外国人材を支援する機関として、「監理支援機関」と「登録支援機関」の2種類の支援機関が位置づけられます。技能実習制度における監理団体とは異なる役割が期待されています。

監理支援機関について

技能実習制度における監理団体は、育成就労制度では「監理支援機関」として再定義されます。ただし、単なる名称変更ではなく、許可要件や業務内容に大きな変更があります。

監理支援機関の許可要件の厳格化

監理支援機関の許可要件は、技能実習制度の監理団体に比べて厳格化されています。主な変更点は以下の通りです。

  • 外部監査人の設置が義務化
  • 受入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与が制限
  • 財政基盤の強化要件(例:供託金制度の導入)
  • 職員体制の強化(必要な専門知識を有する職員の配置)
  • 相談・支援体制の拡充

特に外部監査人の設置は、監理支援機関の適正な運営を担保するための重要な制度的変更です。これにより、制度運用の透明性が高まることが期待されています。

監理支援機関の業務範囲の拡充

監理支援機関の業務範囲も、技能実習制度時代から大きく拡充されます。特に注目すべき新たな業務には以下が含まれます。

  • 育成就労計画の作成支援と認定申請の代行
  • 日本語学習支援の充実(特定技能への移行を見据えた支援)
  • 転籍支援(同一分野内での転籍をサポート)
  • 特定技能への移行支援(試験対策、在留資格変更申請等)
  • 相談対応体制の強化(多言語対応等)

特に、転籍支援や特定技能への移行支援は、技能実習制度にはなかった新たな業務であり、監理支援機関に求められる能力・知識も変化しています。

登録支援機関の位置づけ

特定技能制度における登録支援機関は、育成就労制度においても引き続き重要な役割を担います。特に育成就労から特定技能への移行をスムーズに行うための橋渡し的な役割が期待されています。

登録支援機関は、特定技能制度と育成就労制度の両方において支援業務を提供できる立場にあり、制度間の連続性を確保する上で重要な位置づけとなります。

POINT

現在の技能実習の監理団体が、そのまま監理支援機関になれるわけではありません。育成就労法第23条において、「監理支援を行う事業」を行おうとする者は、主務大臣の「許可」を受けなければならないと規定されており、新たな許可申請が必要となります。従来の監理団体としての許可とは別に、新制度の厳格化された基準に適合することが求められます。

支援機関に求められる新たな役割と業務内容

育成就労制度の導入により、支援機関に求められる役割や業務内容も大きく変化します。以下、主要な変化について詳しく見ていきましょう。

支援機関の役割の変化

①日本語教育の強化

育成就労制度では、特定技能への移行を見据えた日本語能力の習得が重要視されています。育成就労者は、入国時点で一定の日本語能力(例:JFT-Basic程度)が求められるケースが多く、さらに特定技能への移行には日本語能力試験N4相当以上の能力が必要です。

支援機関には、計画的な日本語学習支援の実施が求められ、従来よりも体系的な教育プログラムの提供が期待されています。具体的には、以下のような支援が必要です。

  • 定期的な日本語レッスンの実施または外部教育機関との連携
  • 日本語能力試験(JLPT)や日本語基礎テスト(JFT-Basic)の受験支援
  • 業種別・職種別の専門用語や実務日本語の習得支援
  • 日本語学習の進捗管理と定期的な評価

②転籍支援の実施

技能実習制度では原則として転籍が認められていませんでしたが、育成就労制度では同一企業で1年以上就労した後に転籍が可能となります。支援機関には、適切な転籍支援が求められます。

  • 転籍希望者への適切な情報提供(求人情報、転籍手続き等)
  • 転籍先受入れ機関との調整
  • 育成就労計画の変更手続きのサポート
  • 転籍後の継続的な支援体制の構築

転籍支援は、外国人材の権利保護と業界全体の人材流動性確保の両面で重要です。支援機関には、公正かつ透明な転籍支援の実施が期待されています。

③特定技能への移行支援

育成就労制度の主要な目的の一つが「特定技能への移行」であるため、支援機関には移行に関する包括的な支援が求められます。

  • 特定技能評価試験の受験対策(技能習得支援)
  • 在留資格変更申請のサポート
  • 特定技能制度に関する情報提供
  • 特定技能所属機関とのマッチング支援(必要に応じて)

育成就労から特定技能への円滑な移行は、制度成功の鍵となる要素です。支援機関には、このプロセスを効果的に支援するための専門知識と支援体制の構築が求められます。

④コンプライアンス体制の強化

外国人材の権利保護と制度の透明性確保のため、支援機関には厳格なコンプライアンス体制の構築が求められます。

  • 外部監査人による定期的な監査の実施(監理支援機関)
  • 苦情処理・相談対応体制の充実(多言語対応含む)
  • 適切な記録管理と定期報告の実施
  • 法令遵守状況のモニタリングと改善

POINT

監理支援機関には、外部監査人の設置が義務付けられます。これは技能実習制度にはなかった新たな要件であり、支援業務の透明性と適正性を確保するための重要な仕組みです。外部監査人の適切な選定と効果的な監査体制の構築が求められます。

支援機関が今後直面する課題

育成就労制度への移行に伴い、支援機関は様々な課題に直面することが予想されます。

①新制度への対応と体制整備

技能実習制度とは異なる許可基準や業務内容に対応するため、組織体制の見直しや業務プロセスの再構築が必要になります。特に、外部監査人の設置や専門性の高い職員の確保など、新たな要件への対応が課題となるでしょう。

②職員の専門性向上

日本語教育支援や特定技能への移行支援など、新たに求められる業務に対応するための専門性の向上が必要です。職員研修の充実や専門人材の採用など、人材育成・確保戦略の見直しが求められます。

③システム対応とデジタル化

育成就労者の育成状況や日本語能力の進捗管理、転籍支援に関する情報管理など、より複雑化する業務に対応するためのシステム構築やデジタル化が課題となります。

④ネットワーク構築

転籍支援や特定技能への移行支援を効果的に行うためには、受入れ機関や特定技能所属機関とのネットワーク構築が重要です。業界内での連携体制の構築が課題となるでしょう。

支援機関にとっての新たな事業機会

育成就労制度への移行は、課題だけでなく新たな事業機会ももたらします。以下、支援機関が検討すべき事業展開の可能性について考察します。

①総合的な外国人材支援サービスの提供

育成就労制度と特定技能制度の両方に対応できる支援機関は、外国人材の採用から育成、特定技能への移行、定着支援までをワンストップで提供できる強みがあります。総合的なサービス展開により、受入れ機関からの信頼獲得と差別化が可能です。

②専門特化型サービスの展開

日本語教育や特定技能移行支援など、特定の分野に特化したサービスを提供する戦略も考えられます。専門性の高いサービスは、差別化要因となり、複数の支援機関との連携も促進します。

③デジタル技術を活用した支援サービス

オンライン日本語教育、業務管理システム、転籍支援プラットフォームなど、デジタル技術を活用した新たな支援サービスの開発も事業機会となります。特に、地方の受入れ機関や育成就労者へのサポートにおいて、オンラインサービスの需要は高まると予想されます。

④コンサルティングサービスの提供

育成就労制度は新制度であるため、受入れ機関に対するコンサルティングニーズは高いと考えられます。育成就労計画の作成支援、社内教育体制の構築支援、コンプライアンス体制の整備支援など、幅広いコンサルティングサービスの提供が可能です。

POINT

育成就労制度と特定技能制度の両方に関わることができる支援機関は、外国人材のキャリアパス全体をサポートできる立場にあります。この連続性を活かしたサービス設計が、競争優位性につながるでしょう。特に、外国人材の長期的なキャリア形成を支援する視点は、今後ますます重要になると考えられます。

まとめ:育成就労時代の支援機関に求められるもの

育成就労制度の導入により、外国人材を支援する機関の役割と求められる機能は大きく変化します。特に以下の点が重要です。

  • 単なる監理・管理から、外国人材の「育成」と「キャリア支援」へと役割が変化
  • 転籍支援や特定技能への移行支援など、技能実習制度にはなかった新たな支援業務への対応
  • コンプライアンス体制の強化(外部監査人の設置等)
  • 日本語教育支援の充実と体系化
  • 特定技能制度との連続性を意識した支援体制の構築

このような変化に対応するためには、組織体制の見直しや業務プロセスの再構築、専門人材の確保・育成など、様々な準備が必要です。特に、技能実習制度における監理団体から育成就労制度における監理支援機関へと移行を目指す団体にとっては、新たな許可基準に適合するための準備が急務となります。

一方で、この制度移行は新たな事業機会をもたらす可能性も秘めています。外国人材の育成と特定技能への移行を総合的に支援できる体制を構築することで、支援機関としての付加価値を高め、受入れ機関からの信頼を獲得することができるでしょう。

今後も政省令や運用要領等の詳細が順次公表される予定です。支援機関は常に最新情報を収集し、適切な対応策を検討することが重要です。

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