【企業必見】外国人社員の円満退職サポート術|在留資格手続き・届出の完全ガイド
【企業必見】外国人社員の円満退職サポート術|在留資格手続き・届出の完全ガイド(2025年最新版)
この記事を読むとわかること
- 外国人社員退職時に企業がすべき入管・ハローワークへの届出義務と期限
- 在留資格ごとの退職後の注意点(3ヶ月ルールなど)
- 自己都合退職と会社都合退職での企業側の対応の違い
- 外国人社員の転職支援や帰国準備サポートのポイント
- 円満退職のためのコミュニケーションと法的リスク回避策
こんなお悩みありませんか?
- 「外国人社員が辞める時、どんな手続きが必要なの?」
- 「入管への届出を忘れると、どうなるの?」
- 「会社都合で辞めてもらう場合、ビザへの影響は?」
- 「退職後のトラブルを避けるために、何に気をつければいい?」
- 「離職票や源泉徴収票以外に、外国人に渡すものは?」
1. はじめに:外国人社員の退職、企業が知っておくべきこと
こんにちは。行政書士しかま事務所の鹿間と申します。外国人の在留資格手続きを専門とする行政書士として、多くの企業様の外国人雇用に関するご相談をお受けしております。
近年、日本企業においてグローバル化が急速に進み、外国人社員の採用が増加しています。一方で、外国人社員の退職時には、日本人社員とは異なる特別な手続きや配慮が必要となることを十分に理解していない企業様も少なくありません。
外国人社員の退職は、単に労働契約の終了ではなく、その方の在留資格に関わる重要な変更事項です。適切な手続きを怠ると、企業は法的なペナルティを受ける可能性があり、外国人社員本人も在留資格の取消や次の就職活動に支障をきたすリスクがあります。
本記事では、2025年5月24日時点の最新の出入国管理及び難民認定法(入管法)および関連法規に基づき、外国人社員が退職する際に企業が必ず知っておくべき法的手続き、届出義務、そして円満な退職をサポートするための実務上の注意点を網羅的に解説いたします。
2. 【最重要】入管への届出義務:退職後14日以内の手続きとは?
最重要事項:契約機関に関する届出の提出義務
外国人社員が退職(または解雇、契約終了)した場合、受入れ機関(企業)は、その事実を知った日(通常は退職日)から14日以内に管轄の地方出入国在留管理局に届け出る法的義務があります。
※入管法第19条の17に基づく義務であり、違反すると30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
届出の対象となる外国人
この届出義務の対象となるのは、中長期在留者として在留する外国人です。具体的には以下の在留資格が該当します
- 技術・人文知識・国際業務
- 特定技能
- 技能実習
- 研修
- 高度専門職
- その他の就労系在留資格
届出方法
届出には以下の3つの方法がありますが、オンラインでの届出が便利で推奨されています
- オンライン届出:出入国在留管理庁電子届出システム
- 郵送:管轄の地方出入国在留管理局宛て
- 窓口持参:管轄の地方出入国在留管理局窓口
届出内容
契約機関に関する届出には、以下の情報を正確に記載する必要があります
- 外国人の氏名、性別、生年月日
- 住所、在留カード番号
- 在留資格、在留期間
- 契約終了理由(自己都合退職、解雇、契約期間満了等)
- 契約終了年月日
届出を怠った場合のリスク
- • 企業に対する30万円以下の罰金
- • 今後の外国人受け入れ申請時の審査に悪影響
- • 企業の信頼性・コンプライアンス体制への疑問視
- • 虚偽の届出を行った場合は1年以下の懲役又は20万円以下の罰金
3. ハローワークへの届出も忘れずに(外国人雇用状況の届出)
入管への届出とは別に、企業にはハローワークへの外国人雇用状況の届出義務もあります。これは労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(旧雇用対策法)に基づく義務です。
届出の対象
以下の外国人を除く、すべての外国人労働者が対象となります
届出対象外
- 特別永住者
- 在留資格「外交」の者
- 在留資格「公用」の者
届出の種類と期限
雇用保険被保険者の場合
雇用保険被保険者資格喪失届に外国人雇用状況を記載
期限:離職日の翌日から10日以内
雇用保険被保険者でない場合
外国人雇用状況通知書を単独で提出
期限:離職日の翌日から10日以内
届出に記載する内容
- 外国人の氏名、在留資格、在留期間
- 生年月日、性別、国籍・地域
- 離職年月日、離職理由
- 資格外活動許可の有無
届出を怠った場合の罰則
ハローワークへの外国人雇用状況の届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
4. 在留資格別:退職後の外国人社員の「その後」と企業の配慮
外国人社員の退職後の状況は、その方が持つ在留資格によって大きく異なります。企業として適切なサポートを行うために、各在留資格の特性を理解しておくことが重要です。
就労系ビザ(技術・人文知識・国際業務、技能など)の場合
3ヶ月ルールとは?
就労系の在留資格を持つ外国人が退職した場合、原則として3ヶ月以内に新たな就職先を見つけて就労活動を再開するか、他の在留資格へ変更しないと、在留資格取消事由に該当する可能性があります。
企業の配慮ポイント
• 離職票の迅速な発行
• 転職活動に必要な推薦状や在職証明書の準備
• 本人の今後の意向(転職か帰国か)の確認
特定技能ビザの場合
特定技能外国人の場合、他の就労ビザとは異なる特別な取扱いがあります。
転職の特徴
- 同一の業務区分内での転職が可能
- 転職先が決まるまで「特定活動(就職活動)」ビザへの変更が可能な場合がある
- 在留資格変更許可申請の手続きが必要
企業都合の離職時の転職支援義務
特定技能外国人を企業都合(解雇・雇止めなど)で離職させた場合、受入れ企業には以下の転職支援義務があります
- 転職先に関する情報提供
- ハローワークや職業紹介事業者の案内
- 推薦状の作成(求めがあった場合)
- 有給休暇を利用した転職活動の配慮
身分系ビザ(日本人の配偶者等、永住者など)の場合
身分系の在留資格を持つ外国人の場合、退職しても直接的に在留資格が失われるわけではありません。ただし、生計維持能力などが次回の更新時に影響する可能性があるため、退職後の生活基盤について本人と十分に話し合うことが大切です。
技能実習ビザの場合
特別な注意が必要
技能実習生の場合、原則として転職はできません。やむを得ない事情(実習実施者の倒産、不正行為など)がある場合を除き、契約期間満了前の退職は帰国を前提とすることが一般的です。企業としては、帰国準備のサポートや関係機関との連絡調整が重要になります。
5. 退職理由別(自己都合・会社都合・契約満了)の企業の対応ポイント
外国人社員の退職理由によって、企業が取るべき対応や注意点が異なります。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
自己都合退職の場合
企業の対応ポイント
本人の意思を明確に確認し、書面で退職届を受理する
離職票、源泉徴収票、退職証明書(本人希望時)の迅速な準備
残存有給休暇の消化または買取りに関する説明
業務の引継ぎスケジュール調整と後任者への説明
会社都合退職(解雇・雇止め)の場合
特に慎重な対応が必要
法的要件の遵守
- 労働契約法・労働基準法に基づく解雇ルールの厳格な遵守
- 解雇理由の客観的合理性と社会的相当性の確保
- 解雇予告または解雇予告手当の支払い(30日前予告または30日分以上の平均賃金)
- 外国人であることを理由とした不当な解雇の禁止
特定技能外国人の場合の追加義務
- 転職先に関する情報提供
- ハローワークや民間職業紹介事業者の案内
- 推薦状の作成(本人からの求めがあった場合)
- 帰国費用の負担(雇用契約書で定められている場合)
契約期間満了の場合
適切な事前準備が重要
契約満了日の1〜2ヶ月前に更新の有無を明確に伝達
更新しない場合の今後の手続き(転職活動、帰国準備など)について詳しく説明
転職希望の場合は推薦状の作成、帰国希望の場合は手続きサポート
共通の注意点
どの退職理由であっても、外国人社員の場合は在留資格への影響を十分に考慮し、本人が次のステップに向けて準備できるよう、可能な限りのサポートを提供することが、企業の信頼性向上と将来的な外国人採用にもプラスに働きます。
6. 円満退職のためのコミュニケーションと必要書類
外国人社員の円満な退職を実現するためには、言語や文化の違いを考慮した丁寧なコミュニケーションと、必要書類の確実な準備が欠かせません。
退職面談の実施
効果的な退職面談のポイント
確認すべき内容
- 退職理由の詳細確認
- 今後の意向(転職・帰国・進学等)
- 退職日の調整
- 引継ぎスケジュール
- 必要書類の説明
コミュニケーション配慮
- 分かりやすい日本語での説明
- 必要に応じて通訳の手配
- 重要事項の書面での確認
- 質問時間の十分な確保
- 文化的背景への理解と配慮
外国人社員へ渡すべき書類一覧
書類名 | 発行義務 | 用途・重要性 |
---|---|---|
離職票 | 雇用保険被保険者の場合は必須 | 失業給付申請、転職先での雇用保険手続き |
源泉徴収票 | 必須 | 年末調整、確定申告、転職先での税務処理 |
退職証明書 | 本人希望時 | 転職活動、在留資格変更申請時の証明 |
年金手帳 | 会社預かりの場合 | 国民年金への切替手続き |
健康保険資格喪失証明書 | 本人希望時 | 国民健康保険加入手続き |
その他の配慮事項
人間関係への配慮
- 同僚への挨拶の機会提供
- 送別会の開催検討
- 今後の連絡先交換への配慮
- 企業文化に応じた適切な見送り
実務的な配慮
- 貸与品(社員証、制服等)の回収
- 個人データの適切な削除
- アクセス権限の停止
- 最終給与の支払方法確認
「立つ鳥跡を濁さず」の精神で
外国人社員の円満な退職は、企業の国際的な評判向上に直結します。元社員が母国や新しい職場で良い評価を語ってくれることは、企業の信頼性向上と将来の優秀な外国人人材確保にも大きく貢献します。一時的な手間を惜しまず、丁寧な対応を心がけましょう。
7. 企業が注意すべき法的リスクとトラブル防止策
外国人社員の退職に関する法的リスクを理解し、適切な予防策を講じることは、企業運営の安定性確保に不可欠です。
主な法的リスク
1. 入管への届出義務違反
リスク30万円以下の罰金、今後の外国人受入れ申請への悪影響
予防策退職手続きチェックリストの作成、担当者の明確化、リマインダーシステムの構築
2. 労働法違反による紛争
リスク不当解雇や労働条件違反による労働紛争、損害賠償請求
予防策就業規則の整備、解雇理由の文書化、労働基準法の厳格な遵守
3. 社会保険・労働保険の手続き漏れ
リスク保険料の追徴、行政指導、従業員からの不信
予防策社会保険労務士との連携、手続きマニュアルの整備、定期的な監査
4. 個人情報管理の不備
リスク個人情報保護法違反、マイナンバーの不適切な管理
予防策退職時の個人情報削除手順の明確化、セキュリティ管理の徹底
効果的なトラブル防止策
システマティックな予防アプローチ
事前準備
- 外国人雇用に特化した就業規則の整備
- 雇用契約書での条件明確化
- 退職手続きマニュアルの作成
- 担当者の研修実施
運用管理
- 定期的な法改正情報の確認
- チェックリストの活用
- 専門家との連携体制構築
- 従業員への継続的な説明
日常的なコミュニケーションの重要性
多くのトラブルは、日頃のコミュニケーション不足から生じます。以下の点を心がけることで、円満な退職につながります
定期面談
定期的な1on1での状況確認
言語サポート
必要に応じた通訳・翻訳支援
文化理解
文化的背景への配慮と理解
専門家活用のメリット
外国人雇用に関する法的要件は複雑で、頻繁に変更されます。以下の専門家との連携を検討することで、リスクを大幅に軽減できます
- 行政書士:在留資格手続き、入管への届出関連
- 社会保険労務士:労働法、社会保険手続き関連
- 弁護士:労働紛争、契約関連のリーガルチェック
- 税理士:税務処理、源泉徴収関連
8. まとめ:適切な手続きで、企業も社員も安心の退職を
外国人社員の退職は、確かに日本人社員の退職よりも複雑な手続きと細やかな配慮が求められます。しかし、これらを適切に行うことで、企業は法的リスクを回避し、元社員もスムーズに次のステップへ進むことができます。
成功の鍵となるポイント
法的義務の確実な履行
- 入管への14日以内届出
- ハローワークへの雇用状況届出
- 必要書類の迅速な発行
- 社会保険手続きの完了
人間的な配慮
- 丁寧なコミュニケーション
- 文化的背景への理解
- 転職・帰国支援
- 良好な関係の維持
円満な退職は、企業のレピュテーション向上に大きく貢献します。元外国人社員が母国や新しい職場で企業について好意的に語ってくれることは、企業の国際的な信頼性向上と、将来的な優秀な外国人人材の確保にもつながります。
また、適切な退職手続きを経験した企業は、外国人雇用に関するノウハウを蓄積し、組織全体の国際化対応力を向上させることができます。これは、今後ますます重要になるグローバル人材活用戦略において、大きな競争優位となるでしょう。
Win-Winの退職を目指して
外国人社員の退職は、必ずしもネガティブな出来事ではありません。適切な手続きと心からの配慮によって、企業と社員の双方にとって有意義な経験とすることができます。そのための第一歩は、正確な法的知識の習得と、継続的な改善への取り組みです。
なお、外国人雇用に関する法令は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を確認し、不明な点があれば専門家に相談することをお勧めいたします。
行政書士しかま事務所の退職サポートコンサルティング
こんなお悩みを解決します
- 外国人社員の退職手続きが分からない
- 入管への届出を確実に行いたい
- 法的リスクを最小限にしたい
- 円満退職のためのアドバイスが欲しい
当事務所のサポート内容
- 入管への各種届出代行・指導
- 退職手続きマニュアル作成
- 企業コンプライアンス体制整備
- 社会保険労務士との連携サポート
外国人社員の円満退職と企業の適法な手続き、専門家がサポートします。
お気軽にご相談ください本記事について 本記事は2025年5月24日時点の法令・制度に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な事案に関する法的助言ではありません。
実際の手続きや判断については、必ず関係機関や専門家にご相談ください。また、法令の改正により内容が変更される場合がありますので、最新の情報をご確認ください。
お気軽にお問い合わせください。090-3426-1600営業時間 9:00 - 18:00 [ 土日・祝日除く ]
メールでのお問い合わせはこちら オンライン相談も承っております