【技人国ビザの落とし穴】よくある“誤解”5選|その仕事、実は申請できません!

【2025年最新】技人国ビザの落とし穴 | 専門家が警告する"致命的な誤解"5選 | 申請前に必ず確認すべき注意点

【技人国ビザの落とし穴】
専門家が警告する"致命的な誤解"5選
〜その仕事、実は申請できません!〜

読了時間:約12分

この記事を読むとわかること

  • 技人国ビザ申請でよくある誤解とその正しい理解
  • 単純労働と見なされる業務、学歴と無関係な業務のリスク
  • 「国際業務」の正しい範囲と、「翻訳・通訳」業務の注意点
  • 内定後すぐに働けるという誤解と、正しい手続きの重要性
  • 企業規模や業種に関する誤解と、審査で本当に見られるポイント

こんなお悩みありませんか?

  • 「英語を使う接客なら『国際業務』でビザが取れるのでは?」
  • 「大学で学んだことと多少違っても、会社が欲しがれば大丈夫?」
  • 「内定が出たから、今のビザの期限が切れても働いていいの?」
  • 「小さな会社や新しい事業だと、技人国ビザは不利になる?」
  • 「翻訳業務って書いておけば、どんな語学関連の仕事でもOK?」

はじめに: 技人国ビザ申請、その"常識"は正しいですか?

こんにちは、行政書士しかま事務所です。当事務所では、外国人の在留資格申請や外国人雇用に関するサポートを数多く手がけてきました。

「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国ビザ)は、日本で働く外国人材にとって最も一般的な就労ビザの一つです。幅広い職種・業種に対応できることから、多くの企業や外国人の方々に活用されています。

しかし、その「幅広さ」ゆえに、制度に対する誤解も少なくありません。そうした誤解が原因で申請が不許可になったり、知らずに入管法違反を犯してしまったりするケースを、私たちは数多く見てきました。

本記事では、特によくある「5つの誤解」を取り上げ、それぞれの正しい知識と対策を解説します。技人国ビザを活用して外国人材を採用したい企業の方、また日本で技人国ビザで働きたい外国人の方にとって、申請の成功率を高め、コンプライアンスを確保するための一助となれば幸いです。

誤解1:「英語を使う仕事なら、全部『国際業務』でしょ?」の罠

正しい理解のポイント

単に外国語を使うだけでは「国際業務」として認められません。その語学力を活かして行う「業務内容」が専門的・技術的分野に該当するかが重要です。

「国際業務」の正しい定義

「国際業務」とは、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務を指します。具体的には、外国語の能力を活かして行う翻訳・通訳、国際取引、海外マーケティング、外国との折衝・交渉などが該当します。

しかし、重要なのは単に「外国語を使う」ということではなく、その業務自体が専門的・技術的分野に該当するかという点です。

よくある勘違いの例

  • 飲食店でのホールスタッフが、外国人観光客対応のために英語を使う
  • 小売店の販売員が、外国人客に対して英語で接客・案内をする
  • ホテルのフロントスタッフが、チェックイン・チェックアウト業務で英語を使用する

→これらは単に「語学を使う」だけであり、業務自体は専門的・技術的とは言えないため、通常「国際業務」としては認められません。

「国際業務」として認められる可能性がある例

  • 外国語を使用した貿易事務(輸出入書類の作成、海外取引先との交渉など)
  • 外国企業との商談・交渉業務(専門的な商品知識を要するもの)
  • 外国市場向けのマーケティング戦略立案(現地の文化・商習慣の理解が必要)
  • 専門分野における高度な通訳・翻訳業務(技術文書、法律文書など)
  • 海外向けWebコンテンツの企画・制作(単なる翻訳ではなく、現地文化に合わせた創造的業務)

職務内容の「専門性」の立証がカギ

技人国ビザの申請では、職務内容説明書で業務の専門性・技術性を具体的に説明することが重要です。単に「英語を使う」と記載するのではなく、その語学力を活かしてどのような専門的業務を行うのか、なぜその業務に外国語能力が必要なのかを詳細に説明する必要があります。

外国語を使うだけでビザが取得できると考えるのは大きな誤解です。入管審査では、業務の実質的な内容が重視されます。業務内容が単純作業や一般的なサービス業務であれば、外国語を使用するという要素だけでは「国際業務」として認められないことを理解しておきましょう。

誤解2:「学歴・専攻と仕事内容が違っても、会社がOKなら問題なし」は危険

正しい理解のポイント

技人国ビザ(特に「技術」「人文知識」)では、大学等での専攻内容と従事する業務内容の「関連性」が原則として必要です。完全に無関係な分野への就職は認められにくいことを理解しましょう。

学歴と業務の関連性の原則

技人国ビザでは、大学等で専攻した科目と、実際に従事する業務との間に関連性が求められるというのが基本原則です。この原則は、外国人が「専門的・技術的分野」で就労するという在留資格の趣旨に基づいています。

2024年3月の運用明確化・柔軟化について

出入国在留管理庁は2024年3月に、大学での学びの多様性を評価し、必ずしも特定の学科・専攻に限定せず、大学で履修した科目や獲得したスキルと業務との関連性を幅広く評価する方針を明確化しました。しかし、これは「何でもOK」になったわけではなく、依然として何らかの関連性は必要とされています。

危険な例

  • 文学部出身者がITエンジニアとして働く(プログラミングの学習歴や資格がない場合)
  • 経済学部出身者が建築設計業務に従事する
  • 農学部出身者が会計事務所で経理業務を担当する

→これらのケースでは、学歴と業務の関連性を示すことが難しく、特別な事情がない限り不許可となる可能性が高いです。

関連性が認められやすいケース

  • 経営学部出身者が企業の経営企画部門や営業職として働く
  • 工学部情報工学科出身者がソフトウェア開発を行う
  • 外国語学部出身者が翻訳・通訳業務や国際営業に従事する
  • デザイン学科出身者がWebデザイナーとして働く

関連性を補強できる可能性がある要素

  • 大学の副専攻や選択科目として関連分野を学んでいた
  • 大学卒業後に専門学校や民間スクールで関連技術を学んだ
  • 関連する業務経験(母国でのキャリアや日本でのアルバイト等)がある
  • 関連分野の資格や検定を取得している

採用理由書での丁寧な説明が必須

学歴と業務の関連性が薄い場合、採用理由書で特に丁寧な説明が必要です。なぜその外国人を採用するのか、どのような特殊なスキルや経験を評価したのか、その外国人が従事する業務がなぜ専門的・技術的であるのかを具体的に説明することが重要です。また、適切な研修計画を用意していることも示すとよいでしょう。

「会社が採用したいから大丈夫」という考えは非常に危険です。入管審査では、会社の採用意思だけでなく、制度の趣旨に沿った「専門的・技術的分野」での就労かどうかが厳格に審査されます。安易な判断は不許可リスクを高めることを理解しておきましょう。

誤解3:「とりあえず翻訳・通訳業務って書けば大丈夫」の落とし穴

正しい理解のポイント

「翻訳・通訳」は「国際業務」の典型例ですが、実質的な業務内容と十分な業務量が伴わなければ認められません。形式的な記載だけでは審査を通過できないことを理解しましょう。

「翻訳・通訳」業務の実態審査

「翻訳・通訳」業務は確かに「国際業務」の代表的な例として法務省令に明記されていますが、実際の入管審査では、申請書類上の記載だけでなく実態を伴った業務かどうかが厳しくチェックされます。

不許可リスクの高いケース

  • 一般事務や営業アシスタントが主な業務で、翻訳・通訳は付随的・偶発的にしか発生しない
  • 翻訳・通訳と言っても、日常会話レベルの簡単な対応(来客応対、電話対応など)が中心
  • 職務内容説明書には「翻訳・通訳」と記載しているが、実際の業務割合が極めて少ない
  • 翻訳・通訳の具体的内容(どのような文書・会話を、どのような場面で、どの程度の頻度で翻訳・通訳するか)が説明できない

「翻訳・通訳」業務として認められやすい例

  • 技術文書、契約書、公式ウェブサイトなど専門性の高い文書の翻訳を定期的に担当
  • 海外取引先との商談・技術会議での通訳を主要業務として行う
  • 外国語によるマーケティング資料の作成やクリエイティブな翻訳業務
  • 専門用語や業界特有の知識を要する高度な通訳業務

申請のポイント:具体性と実質を示す

翻訳・通訳業務で申請する場合は、職務内容説明書で以下の点を具体的に記載することが重要です

  1. 翻訳・通訳する具体的な内容(どのような文書・会話か)
  2. 業務全体における翻訳・通訳業務の割合(できれば50%以上が望ましい)
  3. その翻訳・通訳業務に専門性があることの説明
  4. 外国人が担当する必要性(なぜ日本人では対応できないのか)
  5. 可能であれば過去の翻訳実績や、今後予定されている具体的プロジェクト

「とりあえず翻訳・通訳と書いておけば通る」という考えは非常に危険です。入管審査官は提出書類を詳細に確認し、必要に応じて実態調査を行うこともあります。実態を伴わない形式的な申請は、不許可だけでなく、今後の申請にも悪影響を及ぼす可能性があることを理解しておきましょう。

誤解4:「内定が出た!=すぐに働ける!」の大きな勘違い

正しい理解のポイント

内定が出ても、適切な在留資格の許可を「事前に」得るまでは就労できません。許可前の就労は外国人本人も雇用主も罰則の対象となります。

在留資格と就労許可の大原則

外国人が日本で就労するには、その活動内容に応じた適切な在留資格の許可が事前に必要です。この原則は、内定が出た場合でも変わりません。

よくある危険な勘違い

  • 「内定が出たから、在留資格の申請中でも働き始められる」
  • 「会社が必要としているから、申請はあとでも大丈夫」
  • 「留学ビザで卒業したら、次のビザが出るまでの間も働ける」
  • 「短期間なら、正式な手続きをしなくても問題ない」

→これらはすべて誤解であり、このような考えに基づく行動は不法就労および不法就労助長罪に該当する可能性があります。

主なケース別の正しい手続き

1. 留学生が卒業後に就職する場合

  1. 内定・採用決定
  2. 「留学」から「技術・人文知識・国際業務」等への在留資格変更許可申請
  3. 許可を受けてから就労開始

注意:「留学」の在留期間が残っていても、卒業後は原則として就労できません(資格外活動許可があっても不可)。

2. 海外から外国人を採用する場合

  1. 内定・採用決定
  2. 在日雇用企業等による在留資格認定証明書(COE)交付申請
  3. COE交付後、外国人本人が在外日本公館で査証(ビザ)申請
  4. 査証発給を受けて来日、上陸審査で在留カード交付
  5. これらの手続き完了後に就労開始

3. 日本国内で転職する場合

ケースによって必要な手続きが異なります

  • 同じ在留資格の範囲内での転職(例:技人国のまま別企業へ)→所属機関に関する届出が必要
  • 職務内容が大きく変わる転職→在留資格変更許可申請が必要な場合も
  • 複数の会社で働く場合→資格外活動許可または就労資格証明書が必要な場合も

不法就労のリスク

適切な在留資格を持たずに就労すると

  • 外国人本人:不法就労として、罰金、懲役、強制退去、再入国制限等の対象
  • 雇用企業:不法就労助長罪として、罰金、懲役等の対象

「知らなかった」「手続き中だった」という言い訳は通用しません。

内定が出た場合でも、必ず適切な在留資格の許可を得てから就労を開始するという原則を守りましょう。特に、時間的余裕をもって申請手続きを進めることが重要です。急ぎの場合でも、適法な手続きを経ることが企業にとっても外国人本人にとっても最善の選択です。

誤解5:「会社の規模が小さい/新しいからビザは無理」という先入観

正しい理解のポイント

会社の規模や設立年数だけで許可・不許可が決まるわけではありません。重要なのは、事業の安定性と外国人を雇用する必要性、そして適切な報酬です。

会社規模よりも重視される要素

確かに、従業員数が多い大企業や長い歴史を持つ企業の方が、一般的に申請のハードルは低いと言えます。しかし、入管審査で本当に重視されるのは以下の要素です

事業の安定性・継続性

会社が安定して事業を継続できる見通しがあるか

業務上の必要性

外国人を雇用する合理的な理由があるか

専門的業務の実在

実際に専門的・技術的な業務が存在するか

適切な報酬

業務内容に見合った適切な報酬が支払われるか

審査が厳しくなる可能性がある小規模企業の特徴

  • 設立間もない(1年未満)または事業実績が乏しい
  • 財務状況が不安定(赤字が続いている、債務超過など)
  • 役員のみで従業員がいない、または従業員が極端に少ない
  • オフィス実態が不明確(バーチャルオフィスのみなど)
  • 過去に不許可歴や法令違反歴がある

これらに該当する場合は、より詳細な説明や追加資料が必要になる可能性が高いです。

小規模企業やスタートアップが申請を成功させるポイント

  • 詳細な事業計画書の提出(今後の事業展開と外国人採用の必要性を明確に)
  • 具体的な採用理由書の作成(なぜ日本人ではなく外国人が必要なのかを詳細に)
  • 取引実績の提示(主要取引先との契約書、発注書など)
  • 財務基盤の証明(資金調達実績、安定した売上見込みなど)
  • オフィス実態の証明(賃貸契約書、オフィス写真など)
  • 外国人のキャリアパスの提示(研修計画、将来の役割など)

成功事例:スタートアップでの許可取得

設立2年目のIT系スタートアップ企業が、海外市場展開のために外国人エンジニアを採用するケースでは、以下のような点を丁寧に説明することで許可を得られました

  • 具体的な海外展開計画と、そのための外国人材の必要性
  • 安定した資金調達の実績(ベンチャーキャピタルからの出資など)
  • 成長性を示す事業指標(ユーザー数増加、売上成長率など)
  • 採用予定の外国人が持つ専門スキルと、それを活かせる具体的業務

「会社が小さいからビザは取れない」という先入観は捨て、実際に重視される要素を丁寧に準備することが大切です。特に小規模企業やスタートアップの場合は、申請書類の質と説得力が重要になります。専門家のサポートを受けながら、自社の強みや必要性を効果的にアピールすることで、許可を得る可能性は十分にあります。

まとめ:正しい知識で技人国ビザ申請を成功へ

本記事では、技人国ビザ申請における5つの代表的な誤解とその正しい理解について解説しました。

押さえておくべき重要ポイント

  • 単に外国語を使う業務だけでは「国際業務」として認められない
  • 学歴・専攻と仕事内容の関連性は原則として必要
  • 「翻訳・通訳」は形式的な記載だけでは不十分、実質が伴うことが重要
  • 内定が出ても、適切な在留資格の許可を得るまでは就労不可
  • 会社規模よりも事業の安定性と外国人雇用の必要性が重視される

技人国ビザは、確かに幅広い職種・業種に対応できる在留資格ですが、それは「何でも認められる」ということではありません。入管法の趣旨に沿った「専門的・技術的分野」での就労であることが前提となります。

また、個別のケースではさまざまな事情や背景があり、一概に判断できない複雑な事例も少なくありません。自己判断に不安がある場合は、信頼できる専門家(行政書士)に相談することをお勧めします。

正しい知識を持ち、適切な準備と申請を行うことで、技人国ビザの取得確率は大きく高まります。企業も外国人本人も、コンプライアンスを守りながら、有意義な雇用関係を築いていただければ幸いです。

行政書士しかま事務所の技人国ビザ申請サポート

行政書士しかま事務所では、技人国ビザの申請に関する豊富な知識と実績を持ち、企業様や外国人の方々の状況に応じた最適なアドバイスと申請サポートを提供しています。

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本記事の情報は2025年5月22日時点のものです。法令改正や運用変更により、内容が変わる場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁のウェブサイト等でご確認ください。また、個別のケースによって判断が異なる場合がありますので、具体的な申請に関しては専門家にご相談ください。

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