【特定技能 外食】2025年改正速報!旅館・ホテルでの就労が可能に?変更点を分かりやすく解説
はじめに:特定技能制度の改正について
2025年3月11日、政府は閣議決定により、特定技能制度に関する既存の分野別運用方針の改正を行いました。この改正では介護分野、工業製品製造業分野、そして外食業分野の3分野において大きな変更がありました。
特に注目すべきは、外食業分野での改正で、これまで認められていなかった「風営法の許可を受けた旅館・ホテルにおける特定技能外国人の飲食提供業務」が新たに解禁されることになりました。これにより、特定技能「外食業」の在留資格を持つ外国人が、旅館やホテル内のレストランや食事処で働くことが可能になります。
本記事では、この改正の詳細や背景、外国人材と事業者それぞれにとってのメリット、そして実際の手続きについて詳しく解説します。
背景:なぜ旅館・ホテルでの就労解禁が必要だったのか
この改正の背景には、以下のような課題がありました。
旅館・ホテル業界における人手不足の深刻化
- 新型コロナウイルス禍後のインバウンド(訪日客)急増による需要拡大
- 慢性的な人手不足により、営業停止や宴会中止などの事態が発生
- 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)などからの規制緩和要望
従来、旅館やホテルでは「宿泊分野」の特定技能外国人を受け入れることができましたが、風営法の許可を受けた施設では「外食業分野」の特定技能外国人の就労が認められていませんでした。多くの旅館・ホテルは芸者の舞踊などで客をもてなすため、風営法の許可を得ている事業所が多く、この規制により特定技能外国人がレストランや宴会場での調理や接客業務に従事できない状況でした。
そのため、観光需要の高まりやサービスの多角化に対応するため、この規制を緩和し、外国人材の活躍の場を拡大する措置が必要とされました。
特定技能「外食業」改正の概要
2025年3月11日の閣議決定により、特定技能制度の運用方針が改正され、外食業分野において以下の変更が行われました。
現行は認められていない風営法の許可を受けた旅館・ホテルにおける特定技能外国人の飲食提供全般に係る就労を認める。
これにより、特定技能「外食業」の在留資格を持つ外国人が、風営法の許可を受けた旅館・ホテル内の飲食施設(レストラン、食事処、宴会場など)で働くことが可能になりました。
項目 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
対象施設 | 風営法の許可を受けていない一般の飲食店 | 一般の飲食店 +風営法の許可を受けた旅館・ホテル内の飲食施設 |
就労可能業務 | 接客、調理、店舗管理 (風営法許可施設では不可) | 接客、調理、店舗管理 (旅館・ホテル内の飲食施設でも可能に) |
禁止業務 | 風営法に規定される「接待」 | 風営法に規定される「接待」 (引き続き禁止) |
この改正は、特定技能1号と2号の両方を対象としており、インバウンド需要の増加に伴う人手不足解消を目的としています。
旅館・ホテルで可能となる業務内容
改正により、特定技能「外食業」の在留資格を持つ外国人が旅館・ホテル内で従事できる業務は以下の通りです。
1. 接客業務
- 旅館・ホテル内のレストランでの注文受付
- 料理や飲み物の配膳・提供
- テーブルの片付け、清掃
- 会計業務
- 宴会場での配膳・片付け
2. 調理業務
- 旅館・ホテル内のレストランでの料理の調理
- 食材の仕込み、下準備
- 料理の盛り付け
- 厨房内の清掃・衛生管理
3. 店舗管理業務
- レストランの予約管理
- 在庫管理・発注業務
- スタッフのシフト管理
- 顧客データの管理
注意点:就労が認められない業務
風営法で「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義される「接待」業務については、引き続き特定技能外国人に従事させることはできません。具体的には、お酌やカラオケでの歌の伴奏、舞踊などの「接待」業務は禁止されています。
風営法との関係性と規制
特定技能制度と風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の関係について理解することは重要です。
風営法とは
風営法は、風俗営業や性風俗関連特殊営業などの規制を行い、業務の適正化を図るための法律です。旅館やホテルが芸者の舞踊などで客をもてなす場合、風営法の許可を得る必要があります。
これまでの規制
これまで特定技能外国人の「安全な労働環境」を確保するため、風営法の許可を受けた飲食店では特定技能外国人の就労を一律に認めていませんでした。このため、風営法の許可を受けた旅館・ホテル内のレストランや食事処でも、特定技能「外食業」の外国人を雇用することができませんでした。
改正後の規制
今回の改正により、旅館・ホテルの飲食施設に限り、風営法の許可を受けていても特定技能「外食業」の外国人の就労が可能になりました。ただし、以下の点に注意が必要です。
項目 | 詳細 |
---|---|
就労が可能な施設 | 風営法の許可を受けた旅館・ホテル内の飲食施設(レストラン、食事処、宴会場など) |
引き続き就労が禁止される施設 | 旅館・ホテル以外の風俗営業施設(バー、キャバレー、ナイトクラブなど) |
特定技能外国人が行ってはならない業務 | 「接待」業務(お酌、カラオケでの伴奏、舞踊など) |
改正のスケジュールと実施時期
特定技能制度の運用方針改正に関するスケジュールは以下の通りです。
日付 | 内容 |
---|---|
2025年3月11日 | 閣議決定による特定技能制度の運用方針改正 |
2025年4月以降 | 各分野の上乗せ告示等の公布・施行 (詳細な実施時期は調整中) |
具体的な実施時期については、法務省出入国在留管理庁の公式サイトで公表される予定です。実際に運用が開始されるのは、外食業分野の上乗せ告示等が公布・施行された後となります。
最新の情報は法務省出入国在留管理庁の公式サイト「特定技能制度に係る既存の分野別運用方針の改正について」でご確認いただけます。
外国人材と受入れ企業それぞれのメリット
外国人材にとってのメリット
- 就労機会の拡大:これまで働くことができなかった旅館・ホテルでも働けるようになり、就労機会が広がります。
- 多様なスキルの習得:日本の伝統的な旅館や高級ホテルでの勤務経験を通じて、専門的な料理やおもてなしのスキルを身につけることができます。
- キャリアパスの拡大:特定技能1号から2号へのキャリアアップも視野に入れながら、長期的なキャリア形成が可能になります。
- 日本文化の理解促進:日本の伝統的な宿泊施設での勤務を通じて、日本文化への理解が深まります。
受入れ企業(旅館・ホテル)にとってのメリット
- 人手不足の解消:深刻な人手不足に悩む旅館・ホテル業界において、外国人材の活用によりスタッフ不足を解消できます。
- インバウンド対応の強化:外国人観光客の増加に対応するため、多言語対応可能なスタッフを確保できます。
- サービスの多様化:外国人材の視点を取り入れることで、サービスの幅を広げることができます。
- 営業機会の拡大:人手不足により制限していた営業(宴会や夜間営業など)を再開・拡大できます。
この改正は、日本の観光業界全体の活性化にもつながる重要なものといえます。特に日本の伝統的なおもてなしを体験できる旅館において、適切な人材配置が可能になることは、インバウンド観光の質の向上にも貢献するでしょう。
特定技能外国人を雇用するための手続き
旅館・ホテルが特定技能「外食業」の外国人を雇用するためには、以下の手続きが必要です。
1. 特定技能所属機関としての登録
特定技能外国人を雇用するためには、まず特定技能所属機関としての要件を満たす必要があります。具体的には以下の書類準備が必要です。
- 登記簿謄本
- 決算書などの財務状況を証明する書類
- 特定技能雇用契約書
- 旅館業法の許可証
- 風営法の許可証
- 食品産業特定技能協議会の加入
2. 特定技能雇用契約の締結
外国人と特定技能雇用契約を締結する必要があります。契約書には以下の内容を含める必要があります。
- 業務内容(外食業分野における接客、調理、店舗管理業務であることを明記)
- 就労場所(旅館・ホテル内のレストラン、食事処などを具体的に記載)
- 報酬額(日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であること)
- 労働時間、休日など労働条件
- 宿泊施設に関する情報
3. 1号特定技能外国人支援計画の作成
特定技能1号の外国人を雇用する場合は、支援計画の作成が必要です。支援計画には以下の内容を含めます。
- オリエンテーションの実施
- 生活環境への適応支援
- 日本語学習の支援
- 相談・苦情対応の体制
- 外部支援機関に支援を委託する場合はその内容
4. 在留資格変更許可申請または特定技能ビザ取得の支援
すでに日本に滞在している外国人(留学生や技能実習生など)の場合は在留資格変更許可申請、海外から来日する外国人の場合は特定技能ビザ取得の支援が必要です。
必要な試験と証明書
特定技能「外食業」の在留資格を取得するためには、以下の試験に合格している必要があります。
- 技能試験:外食業特定技能1号技能測定試験
- 日本語試験:国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)N4以上
- ※技能実習2号を修了した場合は試験が免除される場合があります
特定技能外国人の雇用手続きは複雑であり、専門的な知識が必要です。手続きに不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。
まとめ:今後の対応について
特定技能「外食業」の制度改正により、旅館・ホテルでの就労が可能になったことは、外国人材と受入れ企業の双方にとって大きなチャンスとなります。深刻な人手不足に悩む宿泊施設にとっては朗報であり、特定技能外国人にとっても就労機会が拡大することになります。
制度改正のポイント
- 風営法の許可を受けた旅館・ホテルでの就労が解禁された
- レストラン、食事処、宴会場などでの接客、調理、店舗管理業務が可能になった
- 「接待」業務(お酌など)については引き続き禁止
- 特定技能1号と2号の両方が対象
- 具体的な実施時期は上乗せ告示の公布・施行後
今後、旅館・ホテル業界で特定技能外国人の雇用を検討される場合は、以下の点に注意しましょう。
- 法務省の公式サイトで最新情報を確認する
- 風営法と特定技能制度の関係を理解し、適切な業務内容を設定する
- 特定技能雇用契約や支援計画を適切に作成する
- 外国人材の受入れ体制を整備する
特定技能制度は比較的新しい制度であり、改正も頻繁に行われています。最新の情報を把握し、適切に対応することが重要です。
行政書士しかま事務所のサポート
特定技能外国人の雇用に関する手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。当事務所では、以下のサポートを提供しています。
- 特定技能所属機関としての登録サポート
- 特定技能雇用契約の作成支援
- 1号特定技能外国人支援計画の作成
- 在留資格変更許可申請のサポート
- 特定技能ビザ取得の支援
- 外国人雇用に関する各種相談
お気軽にご相談ください。初回相談は無料です。
※本記事の内容は2025年5月2日時点の情報に基づいています。最新の情報については、法務省出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。
参考文献:特定技能制度に係る既存の分野別運用方針の改正について(令和7年3月11日閣議決定)
お気軽にお問い合わせください。090-3426-1600営業時間 9:00 - 18:00 [ 土日・祝日除く ]
メールでのお問い合わせはこちら オンライン相談も承っております