2025年特定技能改正に伴う外国人雇用コンプライアンス強化について
入管法改正に伴う外国人雇用コンプライアンス強化について
2025年4月1日施行の重要変更点と企業の対応策
1. 入管法改正の概要
2025年(令和7年)4月1日から、特定技能制度における各種届出の届出項目や届出頻度の変更を内容とする「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令」および「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の一部を改正する省令」が施行されます。この改正により、特定技能制度の運用が一部変更され、外国人雇用における企業のコンプライアンス強化が求められます。
改正のポイント
- 特定技能制度における地域の共生施策に関する連携強化
- 随時届出・定期届出の変更と届出頻度の変更
- 在留申請における提出書類と省略ルールの変更
- コンプライアンス基準の厳格化と不正行為の類型追加
2. 特定技能制度の主な変更点
2.1 随時届出の変更点
2025年4月1日以降に提出する届出から新しいルールに基づく届出が必要となります。主な変更点は以下の通りです
区分 | 変更点・注意点 |
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受入れ困難に係る届出 (参考様式第3-4号) |
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基準不適合に係る届出 (参考様式第3-5号) |
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支援実施困難に係る届出 (参考様式第3-7号) |
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支援における特異事案報告 (参考様式第4-3号) |
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2.2 定期届出の変更点
定期届出に関するルールが大きく変更されます。特に重要な点として、2025年1月から3月までを対象期間とした四半期に1回の届出は2025年4月15日までに提出する必要がありますが、新しいルールの定期届出(年1回)の最初の提出は2026年4月以降となります。
定期届出の主な変更点
- 届出の提出頻度が四半期ごとから1年に1回に変更(対象年の4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援実施状況を翌年4月1日から5月31日までに提出)
- 「受入れ・活動状況に係る届出書」と「支援実施状況に係る届出書」を一体化
- 届出事項や提出書類の変更:特定技能外国人の労働日数、労働時間数、給与の支給総額、昇給率等
- 添付書類として特定技能所属機関の登記事項証明書、決算関係書類、役員の住民票写し、公的義務の履行証明書等が必要
定期的な面談については、引き続き3か月に1回以上行う必要があります。
2.3 在留諸申請における提出書類と省略ルールの変更点
在留諸申請における提出書類及び提出書類の省略に関するルールが以下のように変更されます
1. 初めて特定技能外国人を受け入れる場合
- 外国人本人に関する書類(技能水準の立証資料等)
- 受入れ機関としての適格性に関する書類が必要
- 書類省略の条件:オンライン申請+電子届出+一定の事業規模のある機関
2. 既に特定技能外国人を受け入れている機関
- 外国人本人に関する書類のみが提出書類
- ただし、審査の際に受入れ機関の適格性を確認する必要がある場合は、機関の適格性に関する書類の提出を求められる場合がある
特に重要な変更点
従前の書類省略のルールと異なり、オンライン申請と電子届出を行うことが書類省略の必須要件となります。
一定の事業規模のある機関とは
- 日本の証券取引所に上場している企業
- 保険業を営む相互会社
- 高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)
- 一定の条件を満たす企業等
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人
- 特定技能所属機関として3年間の継続した受入れ実績を有し、過去3年間に債務超過となっていない法人
3. 地域の共生施策に関する連携強化
2025年(令和7年)4月1日から、特定技能制度において地域の共生施策に関する連携を図ることを目的とした改正も施行されます。これにより、特定技能所属機関は地方公共団体の共生社会実現のための施策に協力する責務があることが明確化されました。
3.1 協力確認書の提出
特定技能所属機関は、以下のいずれかの時点で、市区町村に対し「協力確認書」を提出する必要があります
- 初めて特定技能外国人を受け入れる場合:特定技能雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行う前
- 既に特定技能外国人を受け入れている場合:施行期日以降、初めて当該外国人に係る在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行う前
協力確認書は、特定技能外国人が活動する事業所の所在地および住居地が属する市区町村にそれぞれ提出する必要があります(同一市区町村の場合は1通で可)。基本的に一度提出すれば、同一事業所の他の特定技能外国人については再提出不要ですが、外国人が別の市区町村に転出する場合や、事業所所在地・住居地・担当者連絡先等に変更がある場合は再提出が必要です。
3.2 地方公共団体からの協力要請への対応
地方公共団体が実施する共生施策として想定されるのは、各種行政サービス、交通・ゴミ出しのルール、医療・公衆衛生や防災訓練・災害対応、地域イベント、日本語教室等に関する施策です。特定技能所属機関は、地方公共団体から共生施策に係る協力を求められた場合、それが共生社会の実現に必要であり、特定技能外国人の支援に資するものであれば、協力する必要があります。
想定される協力要請の例
- 条例等の法的根拠があるもの
- アンケート調査、ヒアリング等への協力
- 各種情報(行政サービス、ルール、防災訓練等)の周知
- 地域イベント、日本語教室等の開催案内の周知
想定されない協力要請の例
- 法的根拠なく地域イベントへの参加を強制するもの
- 地方公共団体への拠出金を求めるもの
- 地方公共団体以外の機関等に対する協力要請
- 共生施策や支援と明らかに関係のないもの
- 過大な負担が生じるもの
4. 企業が対応すべき実務ポイント
2025年4月1日からの改正に備え、特定技能外国人を雇用する企業は以下のポイントに注意して対応する必要があります。
企業対応チェックリスト
- 2025年4月1日以降の新様式を準備し、届出・申請に使用する
- 随時届出の対象拡大(就労未開始1ヶ月、活動不能1ヶ月等)に対応する体制を整備
- 年1回の定期届出体制への準備(四半期ごと→年度ごと)
- オンライン申請・電子届出システムの利用者登録を済ませる
- 定期届出で必要となる適格性関連書類(決算書、登記事項証明書、社会保険料・税納付証明等)の管理体制を強化
- 市区町村への「協力確認書」の提出準備と自治体の共生施策の確認
- 1号特定技能外国人支援計画の作成・実施に地方公共団体の共生施策を反映
- 3ヶ月に1回以上の定期面談の継続実施と記録保管
- 基準不適合となる事例(税金滞納、社会保険料滞納、給与未払い等)の防止体制の強化
- 登録支援機関との連携体制の確認と責任分担の明確化
4.1 コンプライアンス違反リスクと対応
今回の改正により、特定技能所属機関に関する不正行為の類型が追加され、コンプライアンス違反のリスクが高まっています。特に以下の点に注意が必要です
新たな不正行為類型 | 企業の対応策 |
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1号特定技能外国人支援に関し、法令違反や基準不適合等の事実を隠蔽する行為 |
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外国人の意思表示等を妨げる行為または必要な記録等を作成しない行為 |
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支援全部委託を受けた支援の実施について、別の機関に再委託する行為 |
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5. まとめ:外国人雇用コンプライアンス強化への対応
2025年4月1日から施行される入管法改正は、特定技能制度を中心に外国人雇用のコンプライアンスを一層強化するものです。企業には以下の対応が求められます
- 届出体制の見直し:随時届出の対象範囲拡大と定期届出の年1回化に対応した社内体制の整備
- オンライン対応:オンライン申請・電子届出の利用登録と活用(書類省略のために必須)
- 地域連携の強化:地方公共団体への協力確認書の提出と共生施策への積極的な協力
- コンプライアンス体制の強化:税金・社会保険料の納付、労働法令の遵守、外国人への適切な対応等
- 支援計画の見直し:地方公共団体の施策を踏まえた支援計画の作成・実施
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※本記事は2025年4月1日施行の入管法改正に関する情報を基に作成しています。最新情報は法務省出入国在留管理庁の公式ウェブサイト等でご確認ください。
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