難民該当性判断の手引に関する解説

序文

日本は難民の地位に関する条約および議定書に加入し、難民認定制度を整備してから40年以上が経過しています。この間、日本は難民認定制度の適正な運用に取り組み続けてきました。第6次出入国管理政策懇談会の下で設置された「難民認定制度に関する専門部会」から、難民認定制度の透明性を高め、制度への信頼性を向上させるための提言を受け、難民該当性に関する判断の規範的要素を一般化・明確化することを目指して、この文書が作成されました。https://www.moj.go.jp/isa/content/001407458.pdf


難民の定義

日本の入管法第2条第3号の2に基づき、難民とは難民条約第1条および議定書第1条の規定により、難民条約の適用を受ける者を指します。具体的には、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者が該当します。


難民条約1条A(2)に基づく該当条項

難民該当性は、申請者の個別的な事情と国籍国の事情を踏まえて判断されます。以下の要件に基づきます

  1. 申請者が受けるおそれがある特定の行為や取扱いが「迫害」に該当すること。
  2. 申請者が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」を有していること。
  3. 迫害が「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見」を理由に行われること。
  4. 申請者が国籍国の外にいること。
  5. 申請者が「その国籍国の保護を受けることができないもの、またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」であること。

迫害の定義と該当性判断

迫害とは、生命、身体、自由の侵害や抑圧、その他の人権の重大な侵害を意味します。殺害や不当な拘禁、重大な差別的措置、精神的な暴力なども含まれます。また、個別の措置や不利益が積み重なることで全体として迫害を構成する場合もあります。


迫害主体の特定

通常、迫害の主体は国家機関を指しますが、非国家主体(政党関係者、反政府団体、宗教的共同体、犯罪組織など)も含まれます。非国家主体が迫害主体である場合、その国籍国の保護状況も考慮する必要があります。


迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖

この要件は、申請者が主観的に恐怖を感じるだけでなく、それが客観的に理由のあるものである必要があります。申請者の個別的な事情や国籍国の一般的な状況を総合的に評価します。


迫害理由の詳細

迫害理由には、以下が含まれます:

  • 人種
  • 宗教
  • 国籍
  • 特定の社会的集団の構成員であること
  • 政治的意見

終止条項(難民条約1条C)

難民の認定を受けた者について、国籍国の状況が変わり、国際的な保護の必要性や正当性がなくなった場合、難民の地位は終止されます。該当する場合、難民認定は取り消されます。


補完的保護対象者制度

令和5年12月1日から施行された法律により、補完的保護対象者の認定制度が開始されました。補完的保護対象者は難民条約の要件の一部を満たす者で、十分に理由のある恐怖を有する者が含まれます。


難民該当性判断の手引の重要性

難民該当性判断の手引は、日本の難民認定制度の透明性を高め、適切な運用を推進するために作成されました。この手引は、日本における難民認定業務において、実務上の先例や裁判例、国連難民高等弁務官事務所の文書、および諸外国のガイドラインを参考にして作成されており、難民該当性の判断に関するポイントを整理し、具体的に説明しています。

難民該当性判断においては、申請者の個別的な事情と国籍国の状況を総合的に評価し、迫害の存在やその恐怖が十分に理由のあるものであるかどうかを判断することが重要です。この手引は、難民認定制度の適正な運用を図るために不可欠なガイドラインとなっています。