【内部通報】退職した外国人社員に「入管へ通報された」!企業に何が起こるか、どう対応すべきか

【内部通報】退職した外国人社員に「入管へ通報された」!企業に何が起こるか、どう対応すべきか

【内部通報】退職した外国人社員に「入管へ通報された」!
企業に何が起こるか、どう対応すべきか

読了時間:約12分 | 行政書士しかま事務所 | 2025年6月更新

この記事を読めば、万が一の事態にも冷静に対応できる

  • 退職した外国人社員からの「入管への通報」で、企業に何が起きるかが分かる
  • 入管からの連絡・調査が入った際の「やってはいけないNG対応」が明確になる
  • 企業がまずやるべき初動対応と社内調査の進め方をマスターできる
  • 専門家(行政書士)に相談する最適なタイミングとその役割を理解できる
  • 最悪の事態(罰則、採用停止)を回避するための具体的な対策が身に付く

「元社員が入管に通報したらしい…」こんな時、どうすれば?

「突然のことでパニック!まず誰に、何を相談すればいい?」

「通報内容が事実かどうかわからない。どう調査すれば?」

「入管から電話が来たら、正直に全部話してしまっていいの?」

「こちらに非がある場合、どう対応すればダメージを最小限にできる?」

「弁護士?行政書士?こんな時、頼るべき専門家はどっち?」

目次

1. はじめに:その一本の電話が、会社の未来を左右する

行政書士しかま事務所の代表、鹿間と申します。当事務所では、外国人雇用に関するビザ申請から労務管理まで、企業の国際化を幅広くサポートしております。

「退職した元社員が入国管理局に通報したらしい」―この一報が、外国人雇用を行う企業にとって最も恐れるシナリオの一つであることは間違いありません。多くの経営者や人事担当者の方は、このような状況に直面すると、まずパニックに陥ります。そして、「どうすればいいのか分からない」「誰に相談すればいいのか分からない」という混乱状態に陥ってしまうのです。

重要なポイント

この状況を「ただの嫌がらせ」と軽視したり、感情的に対応したりすることは、絶対に避けなければなりません。不適切な対応は、不法就労助長罪での摘発や、今後の事業継続に関わる深刻な事態に発展する可能性があります。

  • 不法就労助長罪:5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
  • 今後の外国人採用への影響
  • 企業の社会的信用の失墜

本記事は、そのような危機的状況に陥った企業が、冷静さを取り戻し、最善の対応を取るための「緊急対応マニュアル」として作成いたしました。実際の入管の調査手順、企業が負うリスク、そして具体的な対応策まで、実務経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

2. なぜ通報は起きるのか?元社員の動機と主な通報内容

まず、なぜ退職した外国人社員が入国管理局に通報を行うのかを理解することが重要です。その動機を正しく把握することで、適切な対応策を講じることができます。

主な通報動機

正当な権利主張

  • • 給与未払い・残業代未払い
  • • 違法な長時間労働
  • • 労働条件の不当な変更
  • • ハラスメント問題

不満・報復

  • • 解雇への不満
  • • 昇進・昇格への不満
  • • 人間関係のトラブル
  • • 感情的な対立

認識の相違・誤解

  • • 在留資格の理解不足
  • • 業務内容の認識違い
  • • 契約条件の誤解
  • • 法令知識の不足

よくある通報内容

実際に通報される主な内容

在留資格に関する違反

ビザで許可された範囲外の業務(例:技術・人文知識・国際業務ビザで単純労働に従事)をさせられていた

労働条件の違反

契約書記載の給与が支払われない、残業代の未払い、労働時間の偽装

雇用実態の問題

実際には勤務実態がない「名義貸し」の状態、出向先での違法な業務従事

申請書類の虚偽

採用時に提出した職歴書や学歴証明書に虚偽があった、企業側が虚偽の雇用契約書を作成

3. 【フェーズ別解説】通報後、あなたの会社に起こりうること

入国管理局は、たとえ匿名であっても、また退職者からの通報であっても、全ての通報を軽視することはありません。通報内容によっては、段階的に調査が進められます。

1 フェーズ1:事実確認の連絡

タイミング

通報から数日〜数週間後

具体的な内容

  • 入国審査官からの電話または書面での問い合わせ
  • 「○○さんという外国人の方を雇用されていましたか?」といった事実確認
  • 雇用期間、業務内容、退職理由等の基本的な質問
  • この段階では詳細は求められないことが多い

注意:この段階で虚偽の答弁をすることは絶対に避けてください。後の調査で矛盾が発覚すると、より厳しい処分を受ける可能性があります。

2 フェーズ2:書類提出要求

タイミング

初回連絡から1〜2週間後

求められる主な書類

  • 雇用契約書(原本およびコピー)
  • 給与明細書・賃金台帳
  • 出勤簿・タイムカード
  • 在留カードのコピー
  • 過去のビザ申請時の書類控え
  • 業務指示書・職務記述書
  • 社会保険関係書類
  • その他関連書類

重要:提出期限は通常7〜14日程度と短いため、迅速な対応が求められます。書類の不備や提出遅延は、企業の管理体制に対する疑念を招く可能性があります。

3 フェーズ3:実地調査

実施される場合

書類審査で疑義が生じた場合、または重大な違反の疑いがある場合

調査の具体的内容

  • 予告あり調査:事前に日時を調整の上実施
  • 予告なし調査:突然の訪問(違反の隠蔽を防ぐため)
  • 帳簿類の詳細確認、コピー取得
  • 代表者や人事担当者へのヒアリング
  • 現在雇用中の外国人社員へのヒアリング
  • 職場環境の視察、業務実態の確認

この段階での注意点:調査官の質問には正確に答え、書類の隠蔽や証拠隠滅は絶対に行わないでください。これらの行為は、より重い処罰の対象となります。

4. 【緊急時対応マニュアル】企業が今すぐ取るべき5つのステップ

通報の事実を知った瞬間から、企業の対応が始まります。パニック状態から抜け出し、冷静に行動するための具体的な手順をご紹介します。

1 冷静に情報整理、関係者以外には口外しない

具体的な行動

  • いつ、誰から、どのような内容の通報があったのか(または連絡があったのか)を正確に記録
  • 通報者の名前、退職時期、担当していた業務内容を確認
  • 関係書類の所在を確認(紛失していないか、どこにあるか)
  • この時点では、社内で不必要な混乱を招かないよう、知る必要のある最小限の人員のみに情報を共有

重要ポイント:感情的になっての対応は禁物です。まずは事実の整理に集中してください。

2 【最優先】専門家(行政書士・弁護士)に即時連絡・相談

これが最も重要なステップです

自己判断で入管に対応する前に、必ず専門家の助言を求めてください。適切な初期対応が、その後の展開を大きく左右します。

専門家選びのポイント

  • 行政書士:入管業務に精通、ビザ申請や外国人雇用に関する豊富な経験
  • 弁護士:刑事処分のリスクが高い場合、労働問題が絡む場合
  • 社会保険労務士:労働法違反の問題が中心の場合
  • 緊急時対応の実績があるかどうかを確認

3 専門家の指導のもと、徹底した社内事実調査

調査すべき項目

書類関係
  • 雇用契約書の内容と実際の労働条件
  • 給与支払い記録
  • 勤怠記録
  • 在留カードと許可された活動範囲
  • 過去のビザ申請書類
実態調査
  • 実際に従事していた業務内容
  • 勤務場所(出向の有無)
  • 上司や同僚からのヒアリング
  • 退職時の状況
  • 労働条件の変更履歴

注意:ヒアリングは慎重に行い、口裏合わせと受け取られないよう細心の注意を払ってください。

4 対応方針の決定

調査結果に基づく方針決定

通報内容が事実無根の場合
  • 客観的証拠の整理と準備
  • 反証資料の作成
  • 証人の確保
法令違反の事実がある場合
  • 違反事実の正確な把握と整理
  • 是正措置の具体的な検討
  • 再発防止策の立案
  • 関係者への影響の最小化策

5 入管への誠実な対応

対応の基本原則

  • 誠実性:虚偽の報告や書類の隠蔽は絶対に行わない
  • 正確性:事実に基づいた正確な情報提供
  • 迅速性:要求された書類や説明は期限内に確実に提出
  • 戦略性:専門家と連携し、企業の利益を最大限守る

絶対に避けるべき行為

  • 証拠隠滅や書類の改ざん
  • 関係者への口止め
  • 入管職員への虚偽報告
  • 専門家を通さない直接交渉

5. 入管調査で問われること、そして企業が負う「本当のリスク」

入国管理局の調査では、申請時の内容と実際の雇用実態に乖離がないかが厳しくチェックされます。そして、違反が発覚した場合のリスクは、多くの経営者が想像する以上に深刻です。

調査で問われる核心ポイント

入管が最も重視する調査項目

申請内容との整合性
  • ビザ申請時の職務内容と実際の業務
  • 契約条件(給与、勤務時間等)の遵守
  • 勤務場所の一致
  • 会社の事業内容との適合性
法令遵守状況
  • 労働基準法の遵守
  • 最低賃金の支払い
  • 社会保険の加入状況
  • 届出義務の履行

企業が負う重大リスク

これらのリスクを軽視してはいけません

刑事罰のリスク

不法就労助長罪(入管法第73条の2)

  • 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
  • 代表者個人が刑事責任を負う
  • 実刑判決の可能性もある
  • 前科となり、社会的信用が失墜
行政上のペナルティ
  • 欠格事由への該当:今後5年間、外国人の雇用が不可能
  • 認定機関の取消し:技能実習や特定技能の受入れ停止
  • 優良企業認定の取消し:各種優遇措置の停止
  • 公的契約への影響:入札参加資格の制限
事業上のダメージ
  • 企業の社会的信用失墜:メディア報道、風評被害
  • 取引への影響:取引先からの契約解除、新規取引の困難
  • 採用への影響:日本人・外国人問わず優秀な人材の確保困難
  • 金融機関との関係悪化:融資条件の悪化、新規借入の困難
外国人本人への影響
  • 在留資格の取消し
  • 退去強制手続きの開始
  • 上陸拒否期間の設定(1〜10年間の入国禁止)
  • 家族の在留にも影響

実際の処分事例から学ぶ

近年の処分傾向

近年、入国管理局は外国人雇用に関する違反に対して、より厳格な姿勢で臨んでいます。特に、以下のようなケースでは重い処分が科される傾向にあります

  • 技術・人文知識・国際業務ビザで雇用しながら、実際は単純労働に従事させていた事案
  • 出向先で許可された業務範囲を超えた作業に従事させていた事案
  • 契約条件を一方的に変更し、最低賃金を下回る給与で働かせていた事案
  • 虚偽の書類を作成してビザ申請を行った事案

6. 「予防」こそ最大の防御策:日頃からのコンプライアンス体制

「通報」という事態を招かないためには、日頃からの適切な労務管理とコンプライアンス体制の構築が不可欠です。予防こそが最大の防御策であることを忘れてはいけません。

基本的なコンプライアンス事項

適正な労務管理

  • 雇用契約書の適正な作成と説明
  • 給与・残業代の適正な支払い
  • 労働時間の適正な管理
  • 社会保険の加入手続き
  • 安全衛生管理の徹底

在留資格管理

  • 許可された活動範囲の正確な把握
  • 業務内容と在留資格の適合性確認
  • 在留期間の管理と更新手続き
  • 変更許可申請の適切な実施
  • 届出義務の確実な履行

円満退職のための取り組み

退職者との良好な関係維持

退職手続きの適正化
  • 退職理由の丁寧なヒアリング
  • 未払い賃金等の確実な清算
  • 離職票等の書類の迅速な発行
  • 退職後の転職活動への配慮
コミュニケーションの改善
  • 定期的な面談・フィードバック
  • 文化的背景への理解と配慮
  • 言語サポートの提供
  • キャリア形成への支援

自主監査の実施

定期的な「外国人雇用コンプライアンス自主監査」

監査すべき項目
書類関係
  • 雇用契約書の内容
  • 給与台帳の記録
  • 勤怠記録
  • 在留カードの有効性
実態確認
  • 実際の業務内容
  • 勤務場所の確認
  • 労働条件の遵守
  • 出向の適法性
手続き関係
  • 各種届出の履行
  • 変更手続きの適正性
  • 更新手続きの時期
  • 記録の保管状況

専門家による定期チェックの重要性

自社のみでのチェックには限界があります。行政書士等の専門家による定期的な外部監査を受けることで、見落としがちなリスクを発見し、適切な対策を講じることができます。

  • 年1〜2回の定期監査の実施
  • 法改正に対応した制度の見直し
  • 社内研修の実施
  • 緊急時対応マニュアルの策定

7. まとめ:誠実かつ迅速な対応が、企業を守る唯一の道

退職した外国人社員による入国管理局への通報は、企業にとって最も深刻な危機管理事案の一つです。この記事を通じて、その重大性と適切な対応策についてご理解いただけたでしょうか。

成功する危機対応の5つの原則

1

冷静な初動対応

パニックにならず、事実関係を正確に把握し、関係者以外への情報漏洩を防ぐ

2

専門家との早期連携

自己判断での対応は避け、経験豊富な行政書士・弁護士に即座に相談

3

徹底した事実調査

通報内容の真偽を客観的証拠に基づいて正確に調査し、隠蔽は絶対に行わない

4

誠実な入管対応

虚偽報告や証拠隠滅は行わず、事実に基づいた正確で戦略的な対応を行う

5

継続的な改善

問題の根本原因を分析し、再発防止策を講じ、コンプライアンス体制を強化

企業を守るための最終提言

入管からの通報や調査は、決して「運が悪い」偶発的な出来事ではありません。多くの場合、日頃の労務管理やコンプライアンス体制に何らかの問題があることの表れです。

しかし、たとえ違反事実があったとしても、適切な対応を取ることで、企業が受けるダメージを最小限に抑え、信頼を回復することは可能です。そのためには、隠蔽や虚偽報告ではなく、誠実かつ迅速な対応が不可欠です。

最も重要なことは、「一人で抱え込まない」ことです。このような危機的状況においては、経験豊富な専門家のサポートが、企業の未来を左右します。

"危機は、適切に対応すれば、企業がより強固なコンプライアンス体制を構築する絶好の機会でもあります。"

行政書士しかま事務所の「緊急対応・危機管理」サポート

行政書士しかま事務所は、入管からの突然の調査や内部通報といった危機的状況において、企業の代理人・アドバイザーとして迅速かつ的確に対応できる専門家です。豊富な実務経験と深い法律知識に基づき、貴社の法的リスクを最小化し、未来を守るための最善策を共に考えます。

具体的なサポート内容

緊急相談対応

  • • 24時間以内の初回相談対応
  • • 今後の対応フローの明確化
  • • リスク評価と戦略立案

代理人業務

  • • 入管との折衝・交渉
  • • 書面での回答書作成
  • • 実地調査への立会い

社内調査支援

  • • 事実関係の詳細調査
  • • 証拠書類の整理・分析
  • • 法的論点の整理

書類作成業務

  • • 入管提出書類の作成
  • • 改善計画書の策定
  • • 再発防止策の文書化

平時からの予防サポート

  • 定期的なコンプライアンス監査・体制構築支援
  • 外国人雇用に関する社内研修の実施
  • 緊急時対応マニュアルの策定
  • 法改正に対応した制度見直し

万が一の事態、一人で悩まないでください。
入管対応の専門家が、貴社の法的リスクを最小化し、
未来を守るための最善策を共に考えます。

※ 緊急のご相談も承ります。お気軽にお問い合わせください。

※本記事について:本記事の内容は2025年6月22日時点の法令および一般的な実務運用に基づいて作成されています。個別の事案については、具体的な事実関係により対応が異なる場合があります。実際に通報や調査を受けた場合は、必ず専門家にご相談ください。本記事の内容により生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いません。法令や運用は変更される場合がありますので、最新の情報については各関係機関にご確認ください。

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