特定技能運用要領解説②
【2025年最新/特定技能実践編】企業の最重要義務!「1号特定技能外国人支援計画」10項目の詳細と登録支援機関の賢い選び方
出入国在留管理庁「運用要領(令和7年6月版)」に基づく完全ガイド
この記事を読むとわかること
- 1号特定技能外国人支援計画の法的根拠と作成義務
- 法定10項目の義務的支援の具体的な実施方法
- 自社支援と登録支援機関委託の判断基準
- 信頼できる登録支援機関の選び方と契約時の注意点
支援計画の作成は企業の法定義務!違反すれば受入れ不許可に
特定技能外国人の受入れを検討している企業の皆様、こんな悩みを抱えていませんか?「支援計画って具体的に何をすればいいの?」「自社で支援するか、登録支援機関に委託するか迷っている」「委託するなら、どの機関を選べばいいかわからない」。
本記事では、連載第2回として、特定技能制度における企業の最も重要な義務である「1号特定技能外国人支援計画」について、出入国在留管理庁の最新運用要領(令和7年6月版)に基づき、法定10項目の支援内容から登録支援機関の活用法まで、実務に直結する情報を行政書士の専門的視点から詳しく解説いたします。
第1章 「1号特定技能外国人支援計画」とは?なぜ必要か?
法的根拠と作成義務
「1号特定技能外国人支援計画」は、出入国管理及び難民認定法第2条の5第6項及び特定技能基準省令第3条に基づき、特定技能所属機関(受入れ企業)が1号特定技能外国人を雇用する場合に必ず作成しなければならない法定書類です。
重要な作成・交付義務
- ・日本語および外国人が十分理解できる言語で作成
- ・外国人本人への写しの交付が必須
- ・支援計画が不適切な場合、在留資格申請が不許可となるリスク
支援計画の目的
支援計画は、1号特定技能外国人が日本での活動を安定的かつ円滑に行えるよう、職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援を体系的に実施するためのものです。単なる書類作成ではなく、外国人の生活全般をサポートする具体的な行動計画として位置づけられています。
支援の3つの側面
第2章 【完全解説】支援計画に盛り込むべき「10項目の義務的支援」
特定技能基準省令第3条により、支援計画には以下の10項目の支援内容を必ず記載する必要があります。各項目について、具体的な実施方法と注意点を詳しく解説いたします。
事前ガイダンス
実施時期:在留資格認定証明書交付申請前または在留資格変更許可申請前
雇用契約の内容、活動内容、入国・在留に当たっての留意点等について、対面またはテレビ電話等により情報提供を行います。
重要:外国人が十分理解できる言語での説明が必須です。
出入国時の送迎
対象:入国時の出迎え、帰国時の見送り(空港・港での対応)
空港や港において、外国人の出迎えや見送りを行います。初回入国時は特に重要な支援項目です。
住居確保・生活契約支援
住居の確保(保証人となることを含む)、銀行口座開設、携帯電話契約等の各種生活契約の締結支援を行います。
ポイント:保証人の提供は企業にとって重要な責務の一つです。
生活オリエンテーション
実施時期:入国後(在留資格変更許可後)遅滞なく
日本での生活一般、行政手続き・届出、相談窓口、医療機関、防災・防犯・緊急対応、法的保護に関する情報提供を行います。
行政手続等への同行
外国人が行政機関での手続きを行う際に、必要に応じて同行し、支援を行います。
注意:「必要に応じて」とありますが、外国人からの要請には迅速に対応する必要があります。
日本語学習機会の提供
日本での生活に必要な日本語学習の機会を提供します。日本語教室の情報提供や学習教材の提供等が含まれます。
相談・苦情対応
外国人からの相談や苦情の申し出を受け付け、適切な助言・指導・必要な措置を速やかに実施します。
重要:「速やかに」の対応が求められ、放置や遅延は法令違反となります。
日本人との交流促進
外国人と日本人との交流行事の開催や地域のお祭り等への参加機会の提供を行います。
転職支援(非自発的離職時)
特定技能雇用契約の解除が受入れ機関の責めに帰すべき事由による場合、職業安定機関等による新たな雇用先探しの支援を行います。
対象:企業都合による解雇や倒産等の場合に義務が発生します。
定期面談・通報
頻度:3か月に1回以上
外国人本人および監督者と定期面談を実施し、労働関係法令違反等があれば労働基準監督署等への通報を行います。
記録義務:面談内容の記録・保管が必要です。
実施方法の共通ルール
- ・全て対面またはテレビ電話等で実施
- ・外国人が十分理解できる言語を使用
- ・支援の記録・帳簿の作成・保管が必要
- ・支援内容に変更があれば14日以内に入管へ届出
第3章 支援体制の構築:自社で行うか?登録支援機関に委託するか?
10項目の支援を実施するための体制構築について、自社で行う場合と登録支援機関に委託する場合のそれぞれの要件とメリットを比較検討いたします。
自社で支援を行う場合の要件
支援責任者・支援担当者の選任
支援責任者
- ・役員または職員から選任
- ・支援計画の作成・進捗管理
- ・帳簿管理・行政機関との連絡
- ・支援体制全体の統括責任
支援担当者
- ・現場での支援実施を担当
- ・常勤・非常勤は問わない(常勤が望ましい)
- ・支援責任者との兼任可能
- ・複数人での担当も可能
中立性の要件(重要)
支援責任者・支援担当者は、支援対象の外国人を直接監督する立場にあってはならず、中立な立場で支援を行う必要があります。
自社支援の適格要件(いずれか1つを満たすこと)
要件①
過去2年間に中長期在留者の受入れ等の適正実績があり、支援責任者・支援担当者が選任されている
要件②
役員・職員で過去2年間に中長期在留者の生活相談業務経験者から支援責任者・担当者を選任
要件③
上記と同等に支援業務を適正に実施できる能力を出入国在留管理庁長官が認めた者
その他の前提要件
- ・労働基準法・技能実習法等の違反歴がないこと
- ・出入国管理関係法令の遵守
- ・社会保険・租税関係法令の適正な履行
- ・支援の適正な実施が確保される体制の構築
登録支援機関とは?その役割と委託のメリット
登録支援機関の定義
契約により委託を受けて、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施業務を行う者として、出入国在留管理庁長官の登録を受けた法人または個人です。
登録支援機関の登録要件
基本要件
- ・支援の全部を自ら実施(再委託不可)
- ・5年ごとの登録更新(手数料必要)
- ・専門的な支援体制の構築
登録拒否事由の非該当
- ・暴力団関係者でないこと
- ・法令違反歴がないこと
- ・技能実習認定取消歴がないこと
- ・破産等の財政上の問題がないこと
登録支援機関に委託するメリット
1. 要件の簡素化
全部委託の場合、受入れ機関は支援実施基準に適合しているとみなされ、独自の体制構築が不要
2. 専門性の活用
外国人支援の専門的ノウハウと経験を活用できる
3. 負担軽減
企業の人的・時間的負担を大幅に軽減
4. コンプライアンス確保
法令遵守と適正な支援実施の確保
自社支援 vs 登録支援機関委託の比較
項目 | 自社支援 | 登録支援機関委託 |
---|---|---|
体制構築 | 複雑な要件あり | 要件クリア不要 |
専門性 | 自社で習得必要 | 専門機関の活用 |
費用 | 委託費用なし | 委託費用発生 |
人的負担 | 社内リソース必要 | 負担大幅軽減 |
リスク管理 | 自社で対応 | 専門機関が対応 |
第4章 信頼できる登録支援機関の選び方
登録支援機関への委託を検討する場合、適切な機関を選定することが成功の鍵となります。以下のポイントを踏まえて慎重に選定してください。
基本的な確認事項
正規登録の確認
法務省(出入国在留管理庁)の公式登録簿で正規の登録支援機関であることを必ず確認してください。
確認方法:出入国在留管理庁ホームページの「登録支援機関登録簿」で検索
実績・経験の確認
- ・特定技能外国人の支援実績
- ・同業界での支援経験
- ・支援対象外国人の国籍・人数
- ・行政処分や指導の有無
選定のチェックポイント
1. 対応可能言語・業界
言語対応
- ・受入予定外国人の母国語対応
- ・通訳スタッフの常駐状況
- ・24時間対応の可否
業界知識
- ・対象分野での支援経験
- ・業界特有の課題への理解
- ・関連法令への精通度
2. 費用構造の透明性
基本料金
- ・月額委託料の明確性
- ・支援内容との対応関係
追加費用
- ・オプション料金の有無
- ・緊急対応時の追加料金
契約条件
- ・最低契約期間
- ・解約条件・違約金
3. 体制・連携の確認
支援体制
- ・支援スタッフの人数・配置
- ・緊急時対応体制
- ・バックアップ体制の有無
外部連携
- ・行政書士との連携体制
- ・医療機関との連携
- ・地域コミュニティとの関係
契約時の重要な注意点
契約・届出の法的義務
契約締結時
- ・契約内容の明確化(支援範囲・料金・期間等)
- ・契約締結から14日以内に入管へ届出
契約変更・終了時
- ・変更・終了から14日以内に入管へ届出
- ・支援計画の変更手続きも必要
良い登録支援機関の特徴
- 料金体系が明確で追加費用の説明が丁寧
- 実績と専門性を具体的に説明できる
- 緊急時の対応方法が明確
- 定期的な報告・連絡体制が整っている
- 行政書士等の専門家と連携している
- コンプライアンス体制が確立されている
まとめと次回予告
今回のまとめ
「1号特定技能外国人支援計画」は、特定技能外国人を受け入れる企業にとって最も重要な法定義務の一つです。法定10項目の支援を適切に実施するためには、自社の体制と能力を客観的に評価し、必要に応じて登録支援機関への委託を検討することが重要です。
特に重要なのは、支援の質の確保とコンプライアンスの遵守です。単なる書類作成ではなく、外国人の生活を総合的にサポートする実効性のある支援体制を構築することが、制度の趣旨に適った運用につながります。
次回予告【連載第3回】
テーマ:【2025年最新/特定技能コンプライアンス編】受入れ後の「届出義務」と違反時の「罰則」完全ガイド
特定技能外国人の受入れ後に発生する各種届出義務の詳細、届出を怠った場合の行政処分・罰則について、最新の運用実態を踏まえて詳しく解説いたします。
行政書士しかま事務所
特定技能・外国人雇用の専門サポート
当事務所の特徴
- 特定技能制度に特化した専門事務所
- 最新法令・運用要領に完全対応
- 申請から受入れ後まで一貫サポート
- 登録支援機関との連携体制完備
主要サービス
- ・特定技能外国人の受入れ申請代行
- ・1号特定技能外国人支援計画の作成
- ・登録支援機関の選定サポート
- ・受入れ後の届出代行・コンプライアンス支援
特定技能外国人の受入れでお困りの企業様、まずはお気軽にご相談ください。
情報の時点:2025年6月(令和7年6月)出入国在留管理庁運用要領に基づく
免責事項:本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な法的アドバイスではありません。実際の手続きについては必ず出入国在留管理庁または専門家にご相談ください。
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