【行政書士法改正】登録支援機関の書類作成はどこまでOK?
【行政書士法改正】登録支援機関の書類作成はどこまでOK?
改正行政書士法による罰則明確化と特定技能ビザ申請のリスク
この記事を読むとわかること
- 登録支援機関が「作成してはいけない」特定技能ビザ申請書類とは?
- 行政書士法改正(令和8年1月施行)でどう変わる?罰則は?
- 入管が示す「登録支援機関の書類作成」に関する公式ルール
- 「無料ならOK?」名目を問わない報酬と業務独占違反のリスク
- 企業・支援機関が行政書士法違反を避けるための絶対条件
特定技能の書類作成、その認識は大丈夫?
「支援計画は作ったけど、ビザ申請書も流れで作っちゃっていいよね?」
「うちは『書類作成サポート』は無料で、月額支援料に全部コミコミだから大丈夫?」
「他の支援機関もやってるみたいだし、少しくらいなら…」
「行政書士法違反って、そんなに厳しい罰則があるの?」
「改正行政書士法で、何がどう変わるのか具体的に知りたい!」
目次
1. はじめに:特定技能ビザと書類作成、「グレーゾーン」では済まされない時代の到来
行政書士しかま事務所の鹿間英樹です。日々、特定技能制度をはじめとする在留資格に関する業務に携わっております。当事務所のウェブサイト(https://gyousei-shikama-office.com/)でも詳しくご紹介しておりますが、特定技能制度の健全な発展には、制度に関わる全ての関係者の適法な業務運営が不可欠です。
特定技能制度において、登録支援機関の皆様は極めて重要な役割を担っておられます。外国人材の生活支援、職場定着支援など、その活動には心から敬意を表します。しかし同時に、登録支援機関の業務範囲には、行政書士法による厳格な制限があることを正確にご理解いただく必要があります。
重要
令和8年1月1日施行予定の改正行政書士法により、無資格者による書類作成業務に対する規制が大幅に強化され、罰則が明確化されます。これまで「グレーゾーン」と呼ばれてきた業務も、明確に違法行為として処罰される可能性が高まります。
本記事では、改正法の詳細と、登録支援機関が法を遵守しながら適切に業務を遂行するための具体的指針を、専門家として責任を持って提供いたします。
2. 行政書士の「業務独占」とは?(行政書士法第3条)
まず、行政書士法の基本的な枠組みを確認しましょう。行政書士法第3条は、行政書士の独占業務を以下のように定めています
行政書士法第3条(業務)
- 官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合を含む。)の作成
- 権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)の作成
- 前二号に掲げる事務について相談に応ずること
この中で特に重要なのが「官公署に提出する書類の作成」です。在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書、在留期間更新許可申請書などは、まさにこの「官公署に提出する書類」に該当します。
注意点
「他人の依頼を受けて」「業として」これらの書類作成を行うことは、行政書士の独占業務であり、行政書士または弁護士以外の者が行うことは法律で禁止されています。
3. 【注意】改正行政書士法(令和8年1月施行)で罰則明確化!
令和8年1月1日に施行される改正行政書士法は、従来の規制を大幅に強化します。主要な改正点を詳しく見ていきましょう。
3-1. 業務制限規定の明確化(第19条第1項)
現行法(第19条第1項) | 改正法(第19条第1項) |
---|---|
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。 | 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。 |
改正の重要な意味
「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言の追加により、以下のような行為も明確に違法となります
- 「コンサルティング料」「サポート料」「会費」などの名目での実質的な書類作成代行
- 月額支援料に書類作成費用を含める「パッケージ料金」
- 「無料」と称しながら他のサービス料金に上乗せする行為
3-2. 新たな罰則規定(第21条の2)
第21条の2(新設)
「第十九条第一項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」
3-3. 両罰規定の整備(第23条の3)
第23条の3(改正)
「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。」
両罰規定の深刻な影響
登録支援機関の職員が行政書士法違反を犯した場合、職員個人だけでなく、登録支援機関(法人・個人事業主)自体も最大100万円の罰金刑を科される可能性があります。これは法人の社会的信用や事業継続に深刻な影響を与えます。
4. 登録支援機関はどこまでOK?入管の公式見解
それでは、登録支援機関が行える業務と行えない業務を、入管当局の公式見解に基づいて整理しましょう。
4-1. 登録支援機関が作成できる書類
- 1号特定技能外国人支援計画書(及びその変更届)
- 各種届出書(支援実施状況、受入れ困難、契約終了など、入管庁所定の定型フォーム)
- 生活オリエンテーション資料などの支援用資料
- 定型的な事実記載が中心の入管関係書類
4-2. 行政書士・弁護士でなければ作成できない書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 在留資格変更許可申請書
- 在留期間更新許可申請書
- 理由書、事業計画書、経緯説明書など、申請書に添付する法的判断や専門的知識を要する説明・立証書類
- 申請人の個別具体的な状況に基づく書類作成全般
入管の公式見解
入国在留審査要領や特定技能制度に関するQ&Aにおいて、「官公署に提出する書類の作成は行政書士の独占業務」「登録支援機関は申請書類そのものの作成・提出代理は行政書士等へ委託すること」が明確に示されています。
5. 違反事例とリスク:登録支援機関が「やってはいけない」書類作成
改正法施行後の重大なリスクを、具体的な違反類型とともに解説します。
類型1:申請書類一式の作成を有償で請け負う
具体例:「特定技能ビザ申請サポート料金50万円」として、在留資格認定証明書交付申請書から添付書類まで一式を作成
→ 明確な行政書士法第19条違反(最大懲役1年または罰金100万円)
類型2:「無料」と称した実質的対価取得
具体例:「書類作成は無料、月額支援料15万円(通常10万円)」として、高額な支援料で実質的に書類作成費用を回収
→ 改正法第19条「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」に抵触
類型3:無資格職員による書類作成指導
具体例:行政書士資格のない職員が、企業担当者に対して申請書の具体的な記載方法を指導・代筆
→ 両罰規定により登録支援機関自体も処罰対象(罰金100万円)
連鎖的リスクの発生
行政書士法違反が発覚した場合、以下の深刻な問題が連鎖的に発生する可能性があります
- 刑事罰(懲役・罰金)
- 登録支援機関の登録取消しリスク
- 受入れ企業への行政指導
- 特定技能外国人の在留資格への悪影響
- 社会的信用の失墜
6. 企業・登録支援機関のためのコンプライアンス対策と行政書士連携
6-1. 受入れ企業側の対策
- 契約書での業務範囲明確化:登録支援機関との委託契約で、支援業務と申請書類作成業務を明確に区別
- 行政書士への別途依頼:申請書類作成は登録支援機関とは別に、行政書士に直接依頼
- 支援機関の業務範囲確認:委託先の登録支援機関がどこまでサポートできるかを正確に把握
6-2. 登録支援機関側の対策
- 業務範囲の再確認と厳守:行政書士法に関する正確な知識習得と、自社提供サービス範囲の明確化
- 行政書士との連携体制構築
- 提携行政書士の確保と紹介システムの整備
- 依頼者が選んだ行政書士との協力体制構築
- 適切な業務分担の明文化
- 報酬体系の透明化:支援業務の対価と行政書士費用を明確に区別した料金設定・説明
- 職員教育の徹底
- 行政書士法違反に関する定期的な研修実施
- 無資格者による書類作成禁止の徹底
- 改正法対応のコンプライアンス体制整備
令和8年1月施行への準備
改正法施行まで残り僅かです。現在の業務プロセスを見直し、違反リスクのある業務を特定・排除し、適法な運営体制を早急に構築することが重要です。
7. まとめ:法改正を機に、適法な特定技能運用体制の確立を
特定技能制度の健全な発展は、関係者全員が法令を正しく理解し、遵守することによって実現されます。令和8年1月1日施行の改正行政書士法は、無資格者による書類作成業務に対する規制を大幅に強化し、従来「グレーゾーン」とされてきた行為も明確に違法として処罰の対象とします。
この法改正は決して登録支援機関の活動を制限するものではありません。むしろ、それぞれの専門性を活かした適切な役割分担により、より質の高いサービス提供と外国人材の適正な受入れを実現するための基盤整備と考えるべきです。
適法な連携による Win-Win の実現
登録支援機関は支援業務の専門家として、行政書士は法務書類作成の専門家として、それぞれの専門性を活かした連携により、企業と外国人材の双方にとって最適なサービスを提供することが可能です。
法改正を機に、自社の業務体制を見直し、コンプライアンスを徹底することが、長期的な信頼獲得と事業継続の基盤となります。適法な制度運用は、特定技能制度そのものの信頼性向上にも寄与し、結果として外国人材の受入れ環境改善につながるのです。
行政書士しかま事務所のコンプライアンス・サポート
当事務所では、特定技能制度における受入れ企業および登録支援機関の皆様に対し、以下の専門的サポートを提供しております
コンプライアンス診断
現在の業務フローの法的問題点を詳細に分析し、改善提案を行います。
適法業務フロー構築
改正法に対応した業務プロセスの設計・文書化をサポートします。
行政書士連携モデル
効率的で適法な専門家連携システムの構築をご提案します。
申請書類作成代行
適法で確実な在留資格申請書類の作成・申請代行を承ります。
こんなご相談にお応えします
- 「自社の業務範囲はこれで問題ないか?」
- 「改正行政書士法にどう対応すればいいか?」
- 「行政書士とどう連携すればスムーズか?」
- 「現在の契約書に法的問題はないか?」
※本記事の情報は令和7年5月時点のものです。法令の解釈や運用については、最新の情報を必ずご確認ください。具体的な事案については、専門家にご相談することをお勧めします。本記事の内容により生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いません。
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