【2025年5月入管庁資料より解説】特定技能制度の最新ポイント:受入れ企業・登録支援機関が押さえるべき義務と届出

【2025年5月入管庁資料より解説】特定技能制度の最新ポイント:受入れ企業・登録支援機関が押さえるべき義務と届出 | 行政書士しかま事務所

【2025年5月入管庁資料より解説】特定技能制度の最新ポイント:受入れ企業・登録支援機関が押さえるべき義務と届出

はじめに

こんにちは、行政書士しかま事務所の鹿間です。平素より当事務所のブログをご閲覧いただき、誠にありがとうございます。

特定技能制度は平成31年4月の創設以来、日本の深刻な人手不足対策として重要な役割を担い、今や外国人材活用の中核制度となっています。令和7年2月末時点の速報値では、特定技能1号在留外国人は29万3,008人、特定技能2号は1,351人に達しており、今後さらなる増加が見込まれています。

こうした中、特定技能制度の運用は常にアップデートされており、受入れ企業や登録支援機関は最新情報を把握し続ける必要があります。また、令和7年4月からは届出頻度の変更など、制度運用にも大きな変化が生じています。

本稿では、出入国在留管理庁が令和7年5月に更新した資料「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」を基に、特に企業と支援機関が留意すべき点を、行政書士の専門的視点から解説いたします。

特定技能制度の基本と現状

制度の概要

特定技能制度は、「生産性の向上や国内人材確保のための取組を講じてもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野」に限定し、「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人」を受け入れる制度です。在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類が設けられています。

区分特定技能1号特定技能2号
技能水準相当程度の知識・経験を要する技能熟練した技能
日本語能力日常生活に必要な水準試験等での評価は不要
在留期間通算5年まで更新回数に上限なし
家族帯同基本的に不可可能
対象分野16分野11分野

最新の在留外国人数

令和7年2月末時点での速報値によると、特定技能1号在留外国人は293,008人、特定技能2号は1,351人となっています。また、令和6年12月末の分野別・国籍別状況は以下の通りです

【分野別の在留外国人数】

  • 飲食料品製造業:74,538人(26.2%)
  • 工業製品製造業:45,279人(15.9%)
  • 介護:44,367人(15.6%)
  • 建設:38,578人(13.6%)
  • 農業:29,331人(10.3%)
  • 外食業:27,864人(9.8%)
  • その他分野:24,509人(8.6%)

【国籍・地域別の在留外国人数】

  • ベトナム:133,478人(46.9%)
  • インドネシア:53,538人(18.8%)
  • フィリピン:28,234人(9.9%)
  • ミャンマー:27,348人(9.6%)
  • 中国:17,761人(6.2%)
  • その他:24,107人(8.6%)

特定技能制度は着実に定着してきており、多くの分野で外国人材が活躍していることがわかります。特に飲食料品製造業、工業製品製造業、介護、建設、農業などの分野での受入れが進んでいます。

受入れ機関(企業)の基準と義務

特定技能外国人を受け入れようとする企業(受入れ機関)は、以下の基準・義務を満たす必要があります。

受入れ機関の基準

  • 雇用契約が適正である:報酬額が日本人と同等以上であること、適切な労働条件・労働安全衛生の確保等
  • 機関自体が適切である:5年以内に出入国・労働法令違反がないこと、暴力団関係者でないこと等
  • 外国人を支援する体制がある:支援責任者・担当者の選任、支援に必要な十分な能力を有していること
  • 支援計画が適切である:支援計画の内容が特定技能基準省令に適合していること

受入れ機関の主な義務

  1. 特定技能雇用契約の適正な履行(労働関係法令の遵守)
  2. 特定技能外国人に対する適切な支援の実施(後述の支援計画の履行)
  3. 出入国在留管理庁への各種届出(変更届や定期届出など)
  4. 分野別協議会への参加(建設分野については特例あり)
  5. 受入れ状況等に関する文書の作成・管理
  6. 地域における共生施策に関する連携(協力確認書の提出等)

行政書士ワンポイント解説

受入れ機関には、雇用契約だけでなく、「支援体制の整備」「支援計画の作成と履行」「各種届出」「地域共生施策への協力」など、多岐にわたる義務があります。特に支援体制の構築と共生施策への協力は、行政機関による実態調査等でも重点的に確認される項目です。支援体制が十分でない場合は、後述する登録支援機関への委託も検討しましょう。

登録支援機関の役割と義務

登録支援機関とは

登録支援機関とは、受入れ機関から委託を受けて1号特定技能外国人支援計画の全部を実施する者として、出入国在留管理庁長官の登録を受けた機関です。受入れ機関が支援業務を自ら実施することが困難な場合に活用できます。

登録を受けるための基準

  • 適切な支援を実施できる体制を有していること(支援責任者・担当者の選任等)
  • 5年以内に出入国・労働法令違反や行政処分等を受けていないこと
  • 費用について直接・間接に外国人本人に負担させないこと
  • 暴力団関係者でないこと等

登録支援機関の義務

  1. 適切な支援の実施(受入れ機関から委託された支援計画の全部実施)
  2. 出入国在留管理庁への届出(登録事項変更、支援業務休廃止等の随時届出、定期届出)
  3. 特異事案報告:支援計画実施困難時や受入れ機関の基準不適合把握時の報告義務
  4. 支援状況に関する文書の作成・保存

行政書士ワンポイント解説

登録支援機関になるには、体制整備や登録申請手続きが必要です。また、登録後も届出や実施状況の報告等の多くの義務があります。登録支援機関として活動する場合は、単に「登録しておしまい」ではなく、継続的な義務履行が求められる点に注意が必要です。なお、委託する場合でも、受入れ機関は登録支援機関と「連名」で定期届出を行う必要があります。

1号特定技能外国人支援計画の詳細

1号特定技能外国人の受入れには、「1号特定技能外国人支援計画」の作成・提出が義務付けられており、法務省令で定められた10項目の支援をすべて含める必要があります。この支援計画は、出入国在留管理局への在留資格申請の際に提出し、計画に基づいた支援を適切に実施する必要があります。

【1】事前ガイダンス

在留資格認定証明書交付申請前または在留資格変更許可申請前に、労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等について、対面またはテレビ電話等で説明します。

【2】出入国する際の送迎

入国時には空港等と事業所または住居への送迎を、帰国時には空港の保安検査場までの送迎・同行を行います。

【3】住居確保・生活に必要な契約支援

連帯保証人になる・社宅を提供する等の住居確保支援と、銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約等を案内・各手続の補助を行います。

【4】生活オリエンテーション

日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応等の説明を行い、円滑に社会生活を営めるよう支援します。

【5】公的手続等への同行

必要に応じて住居地・社会保障・税などの手続きへの同行や、書類作成の補助を行います。

【6】日本語学習の機会の提供

日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等を行います。

【7】相談・苦情への対応

職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解できる言語で対応し、内容に応じた必要な助言、指導等を行います。

【8】日本人との交流促進

自治会等の地域住民との交流の場や、地域のお祭りなどの行事の案内や、参加の補助等を行います。

【9】転職支援(人員整理等の場合)

受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報の提供を行います。

【10】定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談し、労働基準法違反等があれば行政機関に通報します。

行政書士ワンポイント解説

支援計画は単なる「書類上の計画」ではなく、実際に実施する必要があります。特に、3か月に1回以上の定期面談は必須ですので、確実に実施し、その記録を残すことをお勧めします。また、支援内容のうち「日本人との交流促進」「日本語学習機会の提供」などは、後述する地方公共団体の共生施策と連携することで効果的に実施できる場合があります。

【2025年4月改正反映】届出・報告義務の最新ポイント

令和7年4月から、特定技能に関する定期届出頻度が大きく変更されています。この改正ポイントを中心に、届出義務について解説します。

受入れ機関の届出

区分届出内容期限
随時届出特定技能雇用契約の変更・終了契約変更・終了後14日以内
支援計画の変更変更後14日以内
受入れが困難となった場合判明後14日以内
行方不明者が発生した場合判明後14日以内
基準適合性に関する事項に変更がある場合変更後14日以内
定期届出
※改正あり

特定技能外国人の受入れ状況(受入人数、氏名等情報)

活動状況(活動日数、場所、内容、報酬支払状況等)

支援実施状況(支援内容、実施状況等)

【旧制度】四半期ごと(四半期末から14日以内)

【新制度】年1回(4月1日~翌年3月31日の状況を翌年4月1日~5月31日までに提出)

登録支援機関の届出

区分届出内容期限
随時届出登録事項変更変更後14日以内
支援業務の休止・廃止・再開休止等の日から14日以内
支援計画の実施が困難となった場合等(特異事案報告)判明後14日以内
定期届出
※改正あり

支援業務の実施状況

※受入れ機関と連名で届出が必要

【旧制度】四半期ごと(四半期末から14日以内)

【新制度】年1回(4月1日~翌年3月31日の状況を翌年4月1日~5月31日までに提出)

届出不履行や虚偽届出のリスク

届出の不履行や虚偽の届出には、以下のリスクがあります

  • 指導・助言(入管法第19条の19)
  • 罰則(30万円以下の罰金)
  • 重大・悪質な場合は「欠格事由」に該当し、受入れ機関として活動できなくなる
  • 登録支援機関の場合は登録取消し(入管法第19条の32)

行政書士ワンポイント解説

定期届出の頻度が年1回に変更されましたが、随時届出(雇用契約変更・終了、支援計画変更、特異事案報告等)は引き続き14日以内の届出が必要です。定期届出の頻度が減った分、一度に報告すべき情報量が増えますので、日頃から支援状況や就労状況のきちんとした記録を残しておくことが重要です。また、届出の不履行には罰則もありますので、届出漏れがないよう注意しましょう。

【新展開】地域における共生施策に関する連携

近年、特定技能外国人の増加に伴い、地域における共生施策との連携が重要視されています。特定技能所属機関には、地域における外国人との共生社会の実現に寄与する責務があり、支援計画の作成・実施においても地域の共生施策を踏まえることが求められています。

協力確認書の提出義務

特定技能所属機関は、以下のタイミングで「協力確認書」を活動事業所・住居地の市区町村へ提出する必要があります

  • 初めて特定技能外国人を受け入れる場合:特定技能雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行う前
  • 既に受け入れている場合:施行期日以降、初めての在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行う前

協力確認書とは?

地方公共団体から共生施策に対する協力を求められた場合に、当該要請に応じ、必要な協力をする旨を記した文書です。この協力確認書の提出は、在留申請の際の申告事項となります。

支援計画への反映と地方公共団体からの協力要請への対応

特定技能所属機関は、以下の点に注意が必要です

  1. 支援計画の作成・実施において、地方公共団体が実施する共生施策を確認し、これを踏まえた支援計画を作成すること
  2. 地方公共団体から共生施策に関する協力要請があれば、それが共生社会の実現に必要な施策であり、特定技能外国人の支援に資するものである場合、協力すること
  3. 協力要請に応じない場合、地方出入国在留管理局による指導・助言等の対象となる可能性があること

地方公共団体が実施する共生施策の例

  • 各種行政サービスの案内
  • 交通ルールの説明
  • ゴミ出しのルール説明
  • 医療・公衆衛生情報の提供
  • 防災訓練への参加案内
  • 災害対応説明
  • 地域イベントへの参加案内
  • 日本語教室の案内
  • 文化交流プログラムの提供

行政書士ワンポイント解説

地方公共団体との連携は、単なる「形式的な協力」にとどまらず、外国人材の定着と活躍、そして地域との調和ある共生に大きく寄与します。特に「日本語教室」「防災訓練」「地域行事」などは、支援計画のうち「日本語学習の機会提供」「日本人との交流促進」等と一体的に実施できるので、積極的に地域の取り組みに参加することをお勧めします。また、地域によって実施されている共生施策は異なりますので、事前に市区町村の担当窓口に確認することが重要です。

その他(分野別協議会、二国間取決め、行政処分など)

分野別協議会への加入義務

特定技能外国人を受け入れる機関は、各分野の協議会に参加し、必要な協力を行うことが義務付けられています(建設分野は特例あり)。協議会では、以下のような取り組みが行われます

  • 分野固有の情報の共有
  • 人手不足状況の把握・分析
  • 試験制度の構築・実施
  • 特定技能外国人の受入れや就労環境改善に関する取り組み

二国間取決め(MOC)の役割

特定技能制度では、悪質なブローカー等の介在を防止するため、送出国政府との間で二国間取決め(MOC: Memorandum of Cooperation)を締結しています。MOCに基づき、以下のような措置が講じられます

  • 保証金の徴収等の悪質な行為に関する情報の共有
  • 悪質な仲介事業者の排除
  • 外国人材の円滑かつ適正な送出し・受入れの確保

行政処分(指導・助言、改善命令、欠格事由該当、登録取消し)

特定技能制度において法令違反や不正行為が発覚した場合、以下のような行政処分が行われます

  1. 指導・助言:法令違反があれば、まず指導・助言が行われます(入管法第19条の19)。
  2. 改善命令:重大・悪質な法令違反や同種違反を繰り返す場合は改善命令が出されます(入管法第19条の21)。
  3. 欠格事由該当:改善命令に応じない場合や違反が重大な場合、受入れ機関として活動できなくなります。
  4. 登録取消し:登録支援機関の場合、登録取消しの対象となります(入管法第19条の32)。

特に以下のような違反は重大視されます

  • 外国人からの保証金の徴収や違約金の定め
  • 報酬額が日本人と同等以上でない場合
  • 虚偽の届出や届出の不履行
  • 支援計画の不履行

行政書士ワンポイント解説

特定技能制度において、コンプライアンスは極めて重要です。一度行政処分を受けると、その後5年間は欠格事由に該当し、外国人の受入れができなくなります。最新の法令や運用要領を把握し、法令遵守の徹底を図ることが必要です。また、不明点があれば、早めに専門家(行政書士等)に相談することをお勧めします。

まとめ

特定技能制度は、日本の深刻な人手不足対策として重要な役割を担っており、令和7年2月末時点で特定技能1号在留外国人は29万人超に達しています。今後もさらなる増加が見込まれる中、制度の理解と適切な運用が求められています。

本稿では、受入れ企業と登録支援機関の基準・義務、特に以下の点を解説しました

  1. 特定技能雇用契約が満たすべき基準(報酬額が日本人と同等以上 等)
  2. 1号特定技能外国人支援計画の10項目の支援内容
  3. 届出義務(特に令和7年4月からの定期届出頻度の変更)
  4. 地域における共生施策に関する連携(協力確認書の提出等)
  5. 分野別協議会、二国間取決め、行政処分等

特定技能制度は、企業の人手不足対策として有効ですが、受入れ企業と登録支援機関には多くの法的義務と責任が伴います。特に2025年4月からの届出頻度変更や、地域共生施策との連携(協力確認書)など、最新の運用ルールを正確に把握し、遵守することが重要です。

計画的かつ誠実な支援の実施が、外国人の定着と活躍、そして企業の持続的な発展につながります。制度の活用に際しては、最新の情報を収集しつつ、必要に応じて専門家のサポートを受けることをお勧めします。

行政書士しかま事務所のサポート

行政書士しかま事務所では、特定技能制度に関する最新の法令・運用情報を常にアップデートし、企業のコンプライアンス遵守をサポートしています。

主なサポート内容

  • 受入れ機関の適合性診断:特定技能外国人の受入れに必要な体制や基準を満たしているか診断します
  • 特定技能雇用契約書・支援計画書の作成・チェック:法令基準に適合した各種書類の作成をサポートします
  • 在留資格申請手続き:認定・変更・更新等の申請をフルサポートします
  • 各種届出サポート:随時届出・定期届出のサポートを行います
  • 登録支援機関の登録・運営相談:登録申請から運営に関する相談まで対応します
  • 協力確認書に関するアドバイス:地方公共団体との連携に関するサポートを行います
  • 研修・セミナー:特定技能制度に関する社内研修・セミナーを実施します

お問い合わせ

特定技能制度は複雑で、最新の法令・運用を把握することが重要です。「制度がよく分からない」「最新の改正点について詳しく知りたい」「届出の方法が分からない」など、お気軽にご相談ください。

※本記事は令和7年5月発行の出入国在留管理庁資料及び関連法令に基づいて作成しています。

※法改正や運用は変更される可能性があります。個別具体的な事案については必ず最新情報を確認の上、専門家にご相談ください。

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