特定技能外国人の解雇規制:企業が知っておくべきポイント

特定技能外国人の解雇規制:企業が知っておくべきポイント | 行政書士しかま事務所

特定技能外国人の解雇規制:企業が知っておくべきポイント

特定技能外国人を雇用する企業の皆様へ

特定技能制度における解雇規制や「非自発的離職」に関する問題は、企業経営に重大な影響を与えることがあります。本記事では、企業が理解しておくべき法的規制と実務上のポイントを解説します。

1. 特定技能外国人の解雇に関する基本的な法規制

特定技能外国人を雇用する企業は、一般の労働法規に加え、入管法や特定技能の運用要領に基づく規制も遵守する必要があります。

1-1. 労働法と入管法の二重規制

特定技能外国人の雇用においては、日本人労働者と同様に労働基準法などの一般的な労働法規が適用されるとともに、在留資格を管理する入管法に基づく規制も受けます。この二重の法的枠組みを理解することが、適切な雇用管理の第一歩です。

ポイント

  • 労働基準法に基づく解雇規制(解雇予告、解雇制限など)
  • 労働契約法第16条に基づく「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効」の原則
  • 特定技能雇用契約の履行確保に関する基準(特定技能基準省令第2条)

1-2. 企業に求められる雇用維持の姿勢

特定技能制度は、日本の深刻な人手不足に対応するために創設された制度です。そのため、既存の労働者を解雇して特定技能外国人に置き換えるような運用は制度の趣旨に反するとみなされます。企業は雇用の安定に努める姿勢が求められています。

対象適用される主な法律・規則
日本人労働者労働基準法、労働契約法など
特定技能外国人労働基準法、労働契約法、入管法、特定技能基準省令など

2. 特定技能制度における「非自発的離職」とは

特定技能制度では「非自発的離職者」の発生が厳しく規制されています。非自発的離職者の定義とその範囲について正確に理解しましょう。

2-1. 「非自発的離職」の定義

特定技能外国人に従事させる業務と同種の業務に従事していた労働者が、本人の意思に反して離職することを「非自発的離職」と呼びます。特定技能基準省令第2条では、具体的に以下のケースが「非自発的離職」に該当するとされています。

非自発的離職に該当するケース

  • 人員整理のための希望退職の募集や退職勧奨を行った場合(天候不順や自然災害の発生、感染症の影響により経営上の努力を尽くしても雇用維持が困難な場合を除く)
  • 労働条件に係る重大な問題(賃金低下、賃金遅配、過度な時間外労働、採用条件との相違等)があったと労働者が判断したもの
  • 就業環境に係る重大な問題(故意の排斥、嫌がらせ等)があった場合
  • 特定技能外国人の責めに帰すべき理由によらない有期労働契約の終了

2-2. 非自発的離職に該当しないケース

特定技能基準省令第2条では、以下の場合は非自発的離職に該当しないとしています。

非自発的離職に該当しないケース

  • 定年その他これに準ずる理由により退職した場合
  • 自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された場合
  • 有期労働契約の期間満了時に、労働者の責めに帰すべき重大な理由その他正当な理由により契約更新や新規締結を拒絶した場合
  • 自発的に離職した場合

「自己の責めに帰すべき重大な理由」とは、会社内での窃盗や傷害などの犯罪行為、職場の風紀を乱す行為、経歴詐称、正当な理由のない無断欠勤、改善されない遅刻・欠勤の常習などが該当します。

3. 1年間の雇い入れ禁止措置とその影響

非自発的離職者を発生させた場合、企業には特定技能外国人を1年間雇い入れできなくなるという重大な制裁が科せられます。

3-1. 禁止期間の適用範囲

特定技能外国人の雇用契約締結の前1年以内または締結後に、同種の業務に従事していた労働者を非自発的に離職させた場合、その後1年間は特定技能外国人を新たに雇用することができなくなります。これは既存の特定技能外国人の在留資格更新にも影響を及ぼす可能性があります。

1年間の雇い入れ禁止が適用されるケース

フルタイムで雇用されている日本人労働者、中長期在留者、特別永住者など、特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を1名でも非自発的に離職させた場合が対象となります。パートタイムやアルバイトは含まれません。

3-2. 企業経営への影響

1年間の雇い入れ禁止措置は、事業計画や人材確保に大きな影響を与えます。特に特定技能外国人への依存度が高い企業では、事業の継続性に関わる問題となりかねません。

  • 人材確保計画の見直しを余儀なくされる
  • 特定技能外国人を前提とした事業拡大計画の延期
  • 特定技能外国人の離職リスクへの対応

4. 企業が取るべき具体的なトラブル防止策

非自発的離職を防ぎ、法的リスクを回避するために企業が取るべき対策を解説します。

4-1. 雇用契約書の適切な作成

雇用契約書は、労使間のトラブルを防止するための重要な書類です。特定技能外国人との契約では、以下の点に注意して作成しましょう。

  • 労働条件を明確に記載する(業務内容、就業場所、労働時間、報酬など)
  • 解雇条件を具体的に記載する
  • 更新条件を有期契約の場合は明示する
  • 母国語または理解できる言語での説明を行う

4-2. 適切な人事記録の管理

万が一のトラブルに備え、適切な人事記録を日常的に管理しておくことが重要です。

保管しておくべき記録

  • 勤怠記録(出勤簿、タイムカード)
  • 指導・警告の記録
  • 面談記録
  • 労働者からの意見・要望書
  • 労働条件通知書のコピー
  • 退職届(自発的離職の証明として)

4-3. 日常的なコミュニケーションと問題の早期発見

特定技能外国人との定期的なコミュニケーションを通じて、不満や問題を早期に発見し解決することが重要です。言語の壁を考慮した丁寧な対応を心がけましょう。

  • 定期的な面談を実施する(できれば通訳を介して)
  • 労働条件や職場環境に関する意見を聞く機会を設ける
  • 文化的な違いを理解し、配慮する
  • 相談窓口を設置し、ハラスメントなどの問題に早期対応する

4-4. 就業規則の整備と周知

就業規則は労働条件や職場のルールを定める重要な規範です。特定技能外国人にも理解しやすい内容にし、適切に周知しましょう。

  • 解雇事由を具体的に記載する
  • 懲戒処分の基準を明確にする
  • 特定技能外国人にも理解できる言語で概要を説明する
  • 定期的に内容の確認と理解度チェックを行う

5. 非自発的離職発生時の対応方法

万が一、非自発的離職が発生した場合の適切な対応方法について解説します。

5-1. 届出義務と手続き

非自発的離職者を発生させた場合、出入国在留管理局への届出が必要です。この届出を怠ると罰金(30万円以下)のリスクがあります。

必要な届出

  • 「特定技能所属機関等に関する届出書」
  • 「受入れ困難に係る届出書」
  • 「特定技能雇用契約に係る届出書」
  • ※非自発的離職発生日から14日以内に提出が必要

5-2. 転職支援義務

非自発的離職が発生した場合、企業には特定技能外国人の転職支援義務が生じます。具体的には以下のような支援が必要です。

  • ハローワークへの相談同行
  • 新たな雇用先の紹介
  • 履歴書・職務経歴書の作成支援
  • 面接の準備・同行
  • 在留資格変更手続きのサポート

これらの支援を行った場合は「支援実施状況に係る届出」を行う必要があります。

5-3. 理由書による疎明

行政書士しかま事務所では、非自発的離職(普通解雇)事例において、理由書を通じて特定技能運用要領上の「解雇ではない」ことを疎明し、許可が出た実績があります。適切な書類作成と説明が重要です。

疎明のポイント

解雇に至った経緯や理由を客観的な証拠とともに明確に説明することが重要です。特に以下のような点に注意して理由書を作成することをお勧めします。

  • 非自発的離職に該当しない事由であることの詳細な説明
  • 関連する証拠書類(勤怠記録、指導記録など)の添付
  • 労使間の合意があったことを示す書類

6. 行政書士しかま事務所の支援実績と対応

行政書士しかま事務所は、特定技能に特化した専門事務所として、非自発的離職や解雇に関する問題に豊富な対応実績があります。

6-1. 実績と専門知識

行政書士しかま事務所では、非自発的離職(普通解雇)事例において、理由書にて特定技能運用要領上の解雇ではないことを疎明し、許可が出た実績があります。特定技能制度に精通した専門家として、適切なアドバイスと対応策を提供しています。

6-2. 提供サービス

  • 特定技能外国人の雇用・解雇に関する法的アドバイス
  • 非自発的離職に関する相談対応
  • 理由書等の書類作成支援
  • 出入国在留管理局への届出手続き代行
  • 転職支援計画の策定サポート
  • 特定技能雇用契約・就業規則の点検・修正アドバイス

6-3. 相談・依頼方法

特定技能外国人の雇用や解雇に関してお困りの際は、お気軽に行政書士しかま事務所にご相談ください。初回相談では現状の問題点や対応策についてアドバイスいたします。

まとめ

特定技能外国人の解雇に関する規制は、一般的な労働法規に加え、入管法や特定技能運用要領による特有の制約があります。特に「非自発的離職者」を発生させた場合の1年間の雇い入れ禁止措置は、企業経営に大きな影響を与える可能性があります。

企業としては、適切な雇用契約や就業規則の整備、日常的なコミュニケーション、人事記録の管理などを通じてトラブルを未然に防ぐことが重要です。また、万が一問題が発生した場合も、適切な対応と届出を行うことで影響を最小限に抑えることができます。

特定技能制度は複雑な法的枠組みを持つため、専門家のサポートを活用することをお勧めします。行政書士しかま事務所では、特定技能に特化した専門知識と実績を基に、企業の皆様の課題解決をサポートいたします。

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