特定技能制度(工業製品製造業)の概要と活用方法
行政書士しかま事務所
外国人在留資格・ビザ申請のプロフェッショナル
特定技能制度(工業製品製造業)の概要と活用方法
製造業における外国人材活用の新たな選択肢
本稿では、工業製品製造業における特定技能制度について、制度の概要から受入れ要件、申請手続き、効果的な活用方法まで詳しく解説します。人材不足に悩む製造業の企業様にとって、有益な情報となれば幸いです。
目次
1. 特定技能制度の概要
特定技能制度は、2019年4月に創設された新たな在留資格制度です。人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れるための制度として誕生しました。
制度の背景
日本の少子高齢化による深刻な労働力不足を背景に、製造業をはじめとする多くの産業で人材確保が課題となっています。この状況に対応するため、一定の技能と専門性を持った外国人材を即戦力として雇用できる制度として特定技能が創設されました。
工業製品製造業分野の位置づけ
工業製品製造業分野は、もともと「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」の3つに分かれていましたが、2022年に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」として統合され、さらに2024年に「工業製品製造業分野」へ名称変更され、新たな業種・業務区分が追加されました。
出入国在留管理庁が公表している今後5年間での受け入れ見込数は173,300人で、特定技能の産業分野の中では一番受け入れ見込数が多い分野となっています。
ポイント
2024年5月末時点で、製造分野で働いている特定技能外国人は43,604人に達し、特定技能の対象業種の中でも比較的大きなセクターとなっています。
2. 工業製品製造業分野の対象業務
工業製品製造業分野では、以下の10の業務区分が設定されています。
- 機械金属加工区分:鋳造、機械加工、ダイカスト、金属プレス加工など
- 電気・電子機器組立て区分:機械加工、電子機器組立て、プリント配線板製造など
- 金属表面処理区分:めっき、アルミニウム陽極酸化処理
- 紙器・段ボール箱製造区分:紙器・段ボール箱製造
- コンクリート製品製造区分:コンクリート製品製造
- RPF製造区分:RPF製造
- 陶磁器製品製造区分:陶磁器工業製品製造
- 印刷・製本区分:印刷、製本
- 紡織製品製造区分:紡績運転、織布運転、染色など
- 縫製区分:婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造など
業務区分の拡大
当初は3つの区分でしたが、2024年の変更により全10区分となり、対象業種も大幅に拡大されました。これにより、より多様な製造業での外国人材の活用が可能となっています。
3. 特定技能1号と2号の違い
特定技能には1号と2号の2つの区分があり、それぞれ要件や対象範囲が異なります。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
技能水準 | 相当程度の知識または経験を必要とする業務 | 熟練した技能を必要とする業務 |
在留期間 | 通算5年まで | 更新回数に制限なし |
家族帯同 | 基本的に不可 | 可能(配偶者・子) |
対象業務区分 | 全10区分 | 3区分のみ(機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理) |
必要な試験等 | ・「製造分野特定技能1号評価試験」合格 ・日本語能力試験N4以上または同等レベル | ・「製造分野特定技能2号評価試験」合格およびビジネス・キャリア検定3級取得 ・または「技能検定1級」取得 ・3年以上の実務経験 |
重要ポイント
特定技能2号は、より高度な技能を持つ人材を対象としており、永続的に日本での就労が可能で家族の帯同も認められています。製造業では3つの業務区分のみが2号の対象となっていることに注意が必要です。
4. 企業側の受入要件
特定技能外国人を受け入れるためには、企業側も一定の要件を満たす必要があります。
基本的な要件
- 日本標準産業分類において、指定された分類に該当する業種であること
- 直近1年間に該当業種において製造品出荷額等が発生していること
- 売上を得た製造品が事業所が所有する原材料によって製造され、出荷されていること
- 「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入すること(在留資格申請前)
紡織製品製造・縫製区分の追加要件
「紡織製品製造」「縫製」の区分では、過去の違反事例を踏まえ、以下の追加要件が設けられています
- 国際的な人権基準を遵守し事業を行っていること
- 勤怠管理を電子化していること
- パートナーシップ構築宣言の実施
- 特定技能外国人の給与を月給制とすること
注意点
上記要件を満たさない場合、特定技能外国人の受入れはできません。協議会への加入には審査があり、要件を満たしていることを証明する書類の提出が必要です。
5. 外国人材の資格要件
特定技能の在留資格を取得するためには、外国人材側も一定の要件を満たす必要があります。
特定技能1号の取得要件
特定技能1号の在留資格を取得するには、以下の2つの方法があります
①試験による取得
- 技能評価試験:「製造分野特定技能1号評価試験」に合格
(学科試験65%以上、実技試験60%以上) - 日本語能力:以下のいずれかに合格
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2以上
②技能実習からの移行
- 工業製品製造業分野に該当する職種において技能実習2号を良好に修了している場合、試験は免除
- 技能実習2号修了時に、特定技能への移行手続きが可能
- 技能実習で習得した技能と特定技能で従事する業務に関連性が必要
特定技能2号の取得要件
特定技能2号の取得には、以下の2つのルートがあります
①特定技能2号評価試験ルート
- 「製造分野特定技能2号評価試験」に合格
- 「ビジネス・キャリア検定3級」の取得
- 日本国内に拠点を持つ企業の製造業現場における3年以上の実務経験
②技能検定ルート
- 「技能検定1級」の取得
- 日本国内に拠点を持つ企業の製造業現場における3年以上の実務経験
ポイント
特定技能2号の申請には実務経験証明書の提出が必要です。試験申込みの際には「受験資格確認番号」を取得する必要があり、手続きに時間を要するため余裕を持って準備することをお勧めします。
6. 申請手続きの流れ
特定技能外国人を受け入れるための手続きの流れを解説します。
協議会への加入申請
経済産業省が設置する「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入申請を行います。特定技能ポータルサイトから申請可能です。
外国人材との雇用契約締結
特定技能外国人と所定の基準を満たした雇用契約を締結します。賃金は日本人と同等以上である必要があります。
支援計画の作成
特定技能1号の外国人材に対する「支援計画」を作成します。生活オリエンテーション、住居確保、相談・苦情対応等の支援内容を記載します。
在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請
新規に入国する場合は在留資格認定証明書の交付申請を、すでに日本に在留している外国人(技能実習生等)の場合は在留資格変更許可申請を行います。
許可後の手続き
許可を得た後、新規入国者の場合はビザの取得・入国、在留資格変更の場合は就労開始となります。入国後または資格変更後14日以内に居住地の市区町村で住民登録が必要です。
受入れ後の対応
特定技能外国人の活動状況や支援の実施状況について、定期的に出入国在留管理庁に報告する必要があります。また、協議会への報告義務も発生します。
書類作成のポイント
申請に必要な書類は多岐にわたり、記載内容や添付書類に不備があると審査に時間がかかったり、不許可となることがあります。専門家のサポートを受けることで、スムーズな申請手続きが可能となります。
7. 特定技能制度活用のメリット
工業製品製造業分野で特定技能制度を活用するメリットについて解説します。
人材不足の解消
技能を持つ外国人材を即戦力として採用できるため、深刻な人材不足の解消につながります。
多様な人材の確保
異なる視点や考え方を持つ人材を受け入れることで、職場の活性化や新たな発想が生まれる可能性があります。
技能実習からのキャリアパス
技能実習生のキャリアパスとして特定技能を活用することで、すでに技能を習得した人材を継続して雇用できます。
長期的な人材育成
最長5年(1号)〜無期限(2号)の雇用が可能となり、長期的な視点での人材育成が可能になります。
効果的な活用のために
特定技能制度を効果的に活用するためには、以下の点に注意が必要です
- 十分な受入れ準備(住居確保、生活支援体制の整備等)
- 日本人従業員との円滑なコミュニケーション環境の構築
- 職場での異文化理解の促進
- 長期的なキャリア形成支援
- 関連法令の遵守と適切な労務管理
8. 行政書士しかま事務所のサポート内容
行政書士しかま事務所では、特定技能制度に関する以下のサポートを提供しています。
申請前の相談・要件確認
- 受入れ企業の要件確認
- 外国人材の資格要件確認
- 最適な申請方法のアドバイス
書類準備・申請サポート
- 協議会への加入手続き支援
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 支援計画の作成
受入れ後のサポート
- 在留期間更新申請
- 協議会への報告対応
- 特定技能2号への移行支援
- 外国人材の生活支援
専門家にご相談ください
特定技能制度は要件や手続きが複雑です。行政書士しかま事務所では、申請のプロとして、スムーズな外国人材の受入れをサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
特定技能制度(工業製品製造業分野)は、製造業における人材不足を解消するための有効な手段です。しかし、制度の要件や手続きは複雑であり、専門知識を持った専門家のサポートを受けることで、スムーズな受け入れが可能となります。
行政書士しかま事務所では、申請書類の作成から受入れ後のフォローアップまで、一貫したサポートを提供しています。外国人材の活用をお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
最後に
特定技能制度は今後も変更や拡充が予想されます。最新の情報を把握し、適切な対応を行うことが重要です。当事務所では、常に最新の情報を収集し、クライアント様に最適なアドバイスを提供いたします。
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