2024年10月改正で在留資格更新・変更がこう変わる!新たな社会保険対応と審査基準を解説

2024年10月に施行された出入国在留管理庁のガイドライン改正では、在留資格の変更や在留期間の更新に関して新たな規定が加わり、特に社会保険に関する取り扱いが大きく変更されました。今回の改正が具体的にどのような影響を与えるのか、在留資格の事例を交えながら詳しく解説します。

1. 在留資格該当性と上陸許可基準の適合性

まず、在留資格該当性とは、申請者が行おうとしている活動が、出入国管理及び難民認定法(入管法)別表に掲げられた活動内容に合致しているかどうかを判断する基準です。例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 通訳・翻訳業務
    日本の教育機関や企業との契約に基づいて通訳や翻訳を行う場合、「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」)の在留資格に該当します。この職種は「外国の文化に基盤を有する感受性が必要とされる業務」に該当するため、技人国の枠組みで就労することが認められます。
  • 外国料理のシェフとしての就職
    日本国内のレストランで外国料理のシェフとして働く場合は、「技能」の在留資格が適しています。この資格は外国料理の調理師として高度な技能を持ち、文化的な背景を含む専門的な知識や経験を必要とする職業に与えられます。例えば、イタリアンレストランで働くシェフが、その国の伝統的な料理の技術を持つことを証明できれば、技能資格が認められます。
  • 自ら起業し事業を経営する場合
    日本で事業を立ち上げ経営を行う場合、「経営・管理」の在留資格が必要です。例えば、日本国内で飲食店を開くためには、一定額の資本金や事務所の設置など、経営基盤の安定性が証明される必要があります。

さらに、特定の在留資格については「上陸許可基準」を満たすことが求められます。例えば、『技術・人文知識・国際業務(技人国)』の資格では、単に活動内容が該当するだけでなく、大学卒業などの学歴や一定の実務経験を持つことが必要です。これは、形式的な資格該当性だけでなく、申請者が専門的な知識や実績を備えていることを証明するための基準となっています。

上陸許可基準

次に、『技術・人文知識・国際業務(技人国)』の上陸許可基準について具体的に解説します。

上陸許可基準とは?

「上陸許可基準」とは、外国人が日本に入国し在留資格を取得する際に満たさなければならない条件を指します。これは単に在留資格該当性を確認するだけではなく、申請者が十分な専門知識や経験を持ち、日本の法令や社会的基準に適合しているかを審査する重要な要件です。


国際業務における学歴要件と実務経験要件

『技術・人文知識・国際業務(技人国)』のうち、「国際業務」に該当する場合は、以下の学歴および実務経験要件を満たす必要があります。

学歴要件

国際業務に従事する場合、通訳や翻訳、語学指導など専門性の高い職務が多く、これらに関連する分野での学歴が求められます。具体的には、 大学等を卒業している ことが基本条件となります。

実務経験要件

「学歴要件を満たさない場合には、一定の実務経験が必要となります。」

  • 国際業務では、業務内容に関連する分野で 3年以上の実務経験 が求められます。たとえば、海外営業や翻訳業務での勤務経験がこれに該当します。
  • 実務経験を証明するためには、勤務先からの証明書や過去の業務内容を具体的に記載した資料を提出する必要があります。

上陸許可基準を満たすための準備

申請にあたっては、学歴または実務経験を証明する書類の準備が不可欠です。

  • 学歴要件の場合:卒業証明書や成績証明書が必要です。
  • 実務経験の場合:雇用証明書や職務内容を記載した詳細な資料が求められます。

また、受け入れ先企業が雇用契約書や業務内容を明示した説明書を用意することも、上陸許可基準を満たすために重要です。これにより、申請者と受け入れ先の双方が適切に準備を進めることができます。

※ギジンコクの明確化基準はこちらから

【2024年改正】「技術・人文知識・国際業務」の申請明確化基準について

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2. 狭義の相当性とは

在留資格の更新において重要なのは、「狭義の相当性」です。これは、申請者が日本での在留を継続することが社会的に妥当であるかどうかを、総合的に判断する要件です。以下の要素が考慮されます。

  • 素行の良好性
    申請者が法令を遵守し、社会的に適切な行動をしているかが判断基準です。例えば、過去に犯罪歴や重大な法令違反がある場合、素行が不良とみなされる可能性があり、在留資格の更新が不許可となるリスクが高まります。
  • 独立した生計の維持
    申請者が安定した生活を営むための資産や収入を持っていることが求められます。例えば、料理人として働く外国人が収入を得て自立して生活している場合、その生活の安定性が更新におけるプラス要素として評価されます。
  • 雇用・労働条件の適正性
    在留資格が就労を伴うものである場合、その雇用条件が日本の労働基準法に適合している必要があります。不正な労働条件や搾取的な環境で働いている場合、その雇用は適正とはみなされず、更新において不利に働くことがあります。
  • 納税義務の履行
    納税義務を履行しているかも重要な判断要素です。特に、国民健康保険料などの支払いが遅れていたり、未納である場合、悪質と判断されると在留資格の更新において不利な要因となる可能性があります。
  • 入管法で定める届出義務の履行
    在留カードの更新、住所変更の届出など、入管法で定められた届出義務を適切に履行しているかも重要です。例えば、転職後に新しい雇用先を届け出ていない場合、義務の不履行として評価される可能性があります。

3. 社会保険関連の改正点

今回の改正では、特に社会保険制度の変更が在留資格更新に影響を及ぼすことになりました。

健康保険証の廃止と代替手段
2024年12月2日以降、健康保険証の発行が廃止されることから、在留資格の変更や在留期間の更新の際に、社会保険加入状況の確認方法が変わります。具体的には、以下のいずれかの方法で資格情報を提示する必要があります。

  • マイナポータルの「資格情報」画面の提示:スマートフォン等でマイナポータルにアクセスし、資格情報を画面で提示する。
  • 「資格情報のお知らせ」または「資格確認書」の提示:健康保険組合等から送付される書面を提示する。

なお、これらの提示ができない場合でも、それが直ちに在留資格の変更や更新の不許可理由になることはありません。しかし、国民健康保険料の高額な未納や長期間の未納がある場合は、悪質と判断される可能性があり、更新に不利な影響を及ぼすことが強調されました。この改正は、外国人の社会保険加入状況を透明にし、日本の社会保障制度への適切な参加を促すものと考えられます。

4. マクリーン事件から見る相当性の判断基準

1978年のマクリーン事件(最判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁)は、外国人の在留資格更新における相当性判断の重要な判例です。この事件で、アメリカ国籍のマクリーン氏が政治活動を理由に在留更新を拒否され、その決定に異議を申し立てました。最高裁判所は、法務大臣が在留資格更新を許可するか否かを判断するにあたって、申請者の在留中の活動や社会的適応、さらには日本社会に与える影響など広範な要素を総合的に勘案する必要があると判示しました。

この判例は、在留資格更新の審査において、外国人の行動が日本社会に適合するかどうか、そしてその在留が日本の社会秩序や利益に適しているかを、単なる書面審査だけでなく、広い視点から総合的に判断すべきであることを示しています。このように、狭義の相当性は、外国人の社会適応度や素行など、様々な側面から審査されることが確立されています。

まとめ

今回の2024年10月の改正により、在留資格の変更・更新において求められる要件が具体化されました。特に、社会保険加入の確認方法の変更や、納税義務の履行状況が在留資格の更新に与える影響が新たに強調されています。また、マクリーン事件から見る相当性の判断基準も重要であり、外国人が日本社会に適合し、法律を守り、社会に貢献することが在留継続に不可欠であることが改めて確認されました。

これから日本で在留を希望する外国人にとって、社会的責任を果たし、必要な手続きを正しく履行することがますます重要になります。この改正を正しく理解し、しっかりと準備することで、在留資格の変更や更新がスムーズに行えるようになるでしょう。は明確化され、特に社会保険加入や納税の義務が在留資格の更新において重要な役割を果たしていることが再認識されました。申請者はこれらの要件を理解し、適切に対応することが求められます。

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