特定技能外国人失踪時の対応と対策
特定技能外国人の失踪は企業にとって重大な問題です。このような事態に備えて、企業は迅速かつ適切な対応を取ることが求められます。本記事では、特定技能外国人が失踪した際に企業が取るべき基本的な手続きについて、入管法上の対応と労働法の観点から解説します。また、企業にとってのリスク管理や社会的責任、さらには企業イメージの向上がなぜ重要かについても触れていきます。最後に、最新の労働市場における特定技能外国人の増加傾向とその影響についても解説します。
失踪時の届出手続き
届出義務
特定技能外国人が失踪した場合、企業(特定技能所属機関)は、入管への届出義務があります。入管法では、企業が失踪を把握してから14日以内に、「受入れ困難に係る届出」を出入国在留管理庁に提出することが求められています。この届出により、失踪者の在留資格に関する手続きが適切に進められます。
根拠条文
- 出入国管理及び難民認定法 第19条の18 第1項第4号
この条文に基づき、特定技能所属機関は、特定技能外国人が失踪などで受け入れが困難になった場合、14日以内に出入国在留管理庁に届出を行う義務があります。 - 出入国管理及び難民認定法施行規則 第19条の17 第6項第2号
この施行規則では、届出に必要な詳細な手続きや様式に関する規定が定められています。
特定技能外国人失踪時の企業対応責任とは?
では労働法ではどうでしょうか?労働法の観点では、企業は特定技能外国人に対して安全配慮義務を負っており、失踪時の対応は法的に求められる重要な業務です。労働契約上、企業は労働者の安全を確保する責任があり、失踪後も迅速な対応が必要となります。
- 安否確認と労働契約解除の準備
企業はまず、出勤記録や関係者からの情報をもとに、失踪者の安否確認を行います。連絡が取れない場合、失踪の可能性を考慮し、労働契約の解除手続きの準備に入ることが重要です。 - 関連部署との連携と報告体制の整備
社内で関係部署と密に連携し、失踪に関する報告体制を迅速に整える必要があります。また、登録支援機関とも情報共有を行い、状況に応じた適切な対応を準備します。
住居やライフラインの管理手続き
- アパートや住居の管理
企業が特定技能外国人の住居を提供している場合、契約の解除や家賃支払いに関する調整が求められます。住居が本人名義の場合、管理会社との連絡調整を行い、必要なサポートを提供することが推奨されます。 - ライフラインの停止手続き
電気・ガス・水道などのライフライン契約の解除手続きも重要です。失踪者が契約者である場合、企業はライフライン業者と連携し、必要な解約手続きのサポートを行うべきです。
警察への通報の必要性
失踪が確認された場合、警察への通報は法的義務ではありませんが、事件性が疑われる場合には任意での通報が推奨されます。労働者の安全が危ぶまれる場合、警察との早期連携が企業のリスクを軽減し、適切な対策を講じる助けとなります。
失踪対応が企業の未来を左右する!
特定技能外国人の失踪対応は、法的な義務を果たすだけでなく、企業のリスク管理や社会的責任を徹底するために欠かせない要素です。企業が労働者の安全に配慮し、迅速な対応を行うことで、将来的なトラブルや社会的評価の低下を防ぐことができます。
- リスク管理の観点からの重要性
企業が迅速かつ適切な対応を取ることで、労働者の安全を確保すると同時に、企業のリスクも最小限に抑えることが可能です。特定技能外国人の失踪対応を誤ると、企業の信頼が損なわれ、ビジネスリスクにもつながる恐れがあります。 - 社会的責任の遂行
特に外国人労働者を雇用する企業には、適切な労働環境の提供と支援体制の整備が求められています。これにより、企業は社会的責任を果たし、業界内外での信頼を築くことができます。 - 企業イメージの向上
特定技能外国人の失踪時に迅速で適切な対応を行う企業は、社会や取引先、労働者からの信頼を得やすくなります。特に、グローバル化が進むビジネス環境において、外国人労働者への配慮が企業イメージの向上に寄与します。
失踪はわずか0.15%?
特定技能外国人の失踪者数について、最新のデータからその実態を詳しく見てみましょう。2024年時点で、特定技能外国人の総数は233,728人ですが、そのうちの失踪者数はわずか348人にとどまっています。これは全体の**0.15%**で、例年とほぼ同じ水準を保っています。
特に失踪者数が顕著に高い分野は農業分野で、特定技能外国人の中でも25.3%がこの分野から失踪していることが確認されています。その他、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業や飲食料品製造業でも、それぞれ19.8%、17.8%と比較的高い割合を示しています。これに対し、建設分野では14.7%、介護分野では7.5%と、他の分野と比べて失踪者数がやや抑えられている状況です。
こうしたデータから、特定技能外国人の失踪が特定の産業に集中していることが見えてきます。
急増する特定技能外国人、企業の対応は?
2024年6月の速報値の統計によると、特定技能外国人の労働者数は昨年の17万人から25万人に増加しました。特に、インドネシアとミャンマーからの労働者が急増しています。インドネシアからの労働者は、昨年**14.6%だったのが今年は17.6%に増加。一方、ミャンマーからの労働者も4.6%から7.6%**へと大幅に増えています。
一方、ベトナムは依然として主要な労働力供給国であるものの、そのシェアは**56.3%から50.4%**に減少しています。これは、ベトナム国内の経済成長や他国市場への分散が影響していると考えられます。企業が採用戦略を立てる際には、国別の動向をしっかりと把握することが不可欠です。インドネシアやミャンマーからの労働力の急増に対応するため、これらの国からの採用に注力することで、適切な人材を確保し、ビジネスの成長を加速させることができます。最新のデータを活用し、特定分野でのリスクや機会を見極め、戦略的に行動することが企業の競争力を高めるカギとなります。
業界別の動向
外国人労働者が活躍する業界の中でも、介護と建設分野の成長が特に目立っています。介護分野では、外国人労働者の割合が12.7%から14.6%に増加し、建設分野でも10.7%から12.7%に拡大しました。これらの業界は、日本国内での深刻な人手不足を補うために、外国人労働者に依存していると言えます。
一方で、製造業では自動化の進展が進んでおり、外国人労働者の割合が51.4%から45%に減少しています。特に低スキルの単純作業は機械に置き換えられつつありますが、熟練した労働力は依然として求められており、技術革新と人材活用のバランスが重要な課題です。
政府の施策と企業の対応
政府は今後も外国人労働者の受け入れを拡大する方針で、特定技能2号の導入により、特定分野で長期的な雇用を可能にしています。この政策により、介護や建設業だけでなく、他の成長分野でも外国人労働者が安定した労働力として期待されています。
企業がこの変化に対応するためには、単に人手を確保するだけでなく、外国人労働者の文化や価値観を尊重し、職場に適応できる支援体制を整えることが重要です。成功している企業は、異なる視点や文化を取り入れることで、ビジネスチャンスを広げ、新しい成長の機会をつかんでいます。
まとめ
特定技能外国人の失踪対応やビザ手続きは、企業にとって欠かせない課題です。法的義務はもちろん、リスク管理までトータルサポートできるパートナーが必要です。行政書士しかま事務所では、採用から失踪時の対応まで、"あなたのかかりつけ行政書士"として、継続的に企業を支えます。顧問としてのサポートも充実しているので、安心してご相談ください。
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