【自主監査のススメ】専門家がチェックする「外国人雇用コンプライアンス」10の必須項目
【自主監査のススメ】専門家がチェックする「外国人雇用コンプライアンス」10の必須項目
この記事を読むとわかること
- 専門家が監査で見る「外国人雇用コンプライアンス」10のチェック項目
- 入管法と労働法、両面からのリーガルチェックのポイント
- 自社の外国人雇用体制に潜む「見えないリスク」を発見する方法
- 「不法就労助長罪」などの重大な罰則を回避するための具体的な対策
- コンプライアンス違反が見つかった場合の正しい対処法
外国人雇用、"知らなかった"では済まされないリスク
「採用時に在留カードは確認したけど、それだけで十分…?」
「外国人社員の仕事内容、ビザの範囲内か自信がない…」
「退職時の入管への届出、うっかり忘れてたかも…」
「日本人と同じように扱っているから、法的には問題ないはず…?」
「コンプライアンス違反で、会社がどんな罰を受けることになるの?」
目次
- 1. はじめに:なぜ今、外国人雇用の「自主監査」が必要なのか?
- 2. 【自主監査チェックリスト】専門家がチェックする10の必須項目
- 2.1. 項目1:採用時の「在留資格・在留カード」の確認は万全か?
- 2.2. 項目2:在留資格で許可された「活動範囲」と実際の「業務内容」は一致しているか?
- 2.3. 項目3:「雇用契約書」は労働法・入管法の両方を満たしているか?
- 2.4. 項目4:「外国人雇用状況の届出」はハローワークへ提出済みか?
- 2.5. 項目5:「社会保険・労働保険」への加入は適切か?
- 2.6. 項目6:「在留期間」の管理体制は構築されているか?
- 2.7. 項目7:「労働時間」の管理は適正に行われているか?
- 2.8. 項目8:入管への「各種届出義務」を履行しているか?
- 2.9. 項目9:「退職・離職時」の手続きは漏れなく行っているか?
- 2.10. 項目10:関連書類の「保管・管理」は適切か?
- 3. 自主監査で問題が見つかったら?取るべき対応
- 4. まとめ:継続的な自主監査で、健全な外国人雇用体制を
- 5. 行政書士しかま事務所の「外国人雇用コンプライアンス監査」サポート
1. はじめに:なぜ今、外国人雇用の「自主監査」が必要なのか?
こんにちは。行政書士しかま事務所の鹿間です。当事務所では、外国人の在留資格(ビザ)申請や企業の外国人雇用コンプライアンス支援を専門として、多くの企業様にサービスを提供させていただいております。
近年、人手不足の深刻化を背景として、外国人労働者の雇用が急速に拡大しています。しかし、その一方で、入管法や労働基準法のコンプライアンス違反による企業の摘発事例も後を絶たない状況が続いています。
2025年6月から不法就労助長罪が大幅に厳罰化
特に注目すべきは、2025年6月1日から施行される不法就労助長罪の厳罰化です。
【従来】3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
【改正後】5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
このような法制度の強化は、「知らなかった」「悪気はなかった」では済まされないことを明確に示しています。問題が発覚してからでは手遅れになる可能性があるため、問題がないかを定期的に確認する「自主監査」が極めて重要となります。
本記事では、専門家である行政書士が実際にチェックするポイントに基づいた「10の自主監査項目」を提供し、企業のコンプライアンス体制強化をサポートいたします。これらの項目を定期的にチェックすることで、潜在的なリスクを未然に防ぎ、健全な外国人雇用体制を構築していただけることを目指しています。
2. 【自主監査チェックリスト】専門家がチェックする10の必須項目
以下の10項目について、それぞれ「何を確認するか(What)」「なぜ重要か(Why)」「違反・不備のリスク(Risk)」の3点を明確に解説いたします。
項目1:採用時の「在留資格・在留カード」の確認は万全か?
What(何を確認するか)
- • 在留カードの原本確認
- • 在留資格の種類
- • 在留期間の残存期間
- • 就労制限の有無
- • 資格外活動許可の有無と内容
- • カードの真正性(偽造防止対策)
Why(なぜ重要か)
不法就労を防止する第一歩であり、企業に法的に課せられた確認義務です。適切な確認を怠ると、知らないうちに不法就労者を雇用してしまう可能性があります。
Risk(リスク)
不法就労助長罪(5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金)
• 企業の社会的信用失墜
• 今後の外国人雇用への悪影響
項目2:在留資格で許可された「活動範囲」と実際の「業務内容」は一致しているか?
What(何を確認するか)
- • 雇用契約書の職務内容
- • 実際の業務内容との整合性
- • 技人国ビザで単純労働をさせていないか
- • 特定技能での業務範囲遵守
- • 資格外活動許可の範囲内か
Why(なぜ重要か)
在留資格制度の根幹をなす部分です。各在留資格には明確な活動範囲が定められており、範囲外の活動は法令違反となります。
Risk(リスク)
資格外活動による在留資格取消し
• ビザ更新不許可
• 不法就労助長罪
• 強制退去処分
項目3:「雇用契約書」は労働法・入管法の両方を満たしているか?
What(何を確認するか)
- • 労働条件の明示(労基法第15条)
- • 日本人との均等待遇(特に報酬)
- • 母国語での説明努力
- • ビザ審査基準への適合性
- • 職務内容の具体性・明確性
Why(なぜ重要か)
労働紛争防止と、ビザ審査での重要書類となります。不適切な契約書は、労働問題とビザ問題の両方を引き起こす可能性があります。
Risk(リスク)
• 労働基準監督署からの指導
• 労働紛争・未払い賃金請求
ビザ不許可・更新拒否
• 外国人材の離職
項目4:「外国人雇用状況の届出」はハローワークへ提出済みか?
What(何を確認するか)
- • 雇入れ時の届出実施状況
- • 離職時の届出実施状況
- • 届出期限の遵守(翌月末日まで)
- • 記載内容の正確性
- • 雇用保険被保険者とならない外国人の届出
Why(なぜ重要か)
雇用対策法第28条により、全ての事業主に義務付けられています。国の外国人雇用政策の基礎データとなる重要な届出です。
Risk(リスク)
30万円以下の罰金(雇用対策法第38条)
• ハローワークからの指導
• 今後の雇用管理指導強化
項目5:「社会保険・労働保険」への加入は適切か?
What(何を確認するか)
- • 健康保険・厚生年金の加入手続き
- • 雇用保険の加入手続き
- • 労災保険の適用確認
- • 加入条件の適切な判断
- • 社会保障協定の確認
Why(なぜ重要か)
労働者の権利保護と企業の法的義務です。また、ビザ更新時の審査でも重要な確認事項となります。
Risk(リスク)
• 年金事務所等からの行政指導
• 保険料の追徴金・延滞金
ビザ更新時のマイナス評価
• 労働紛争のリスク増大
項目6:「在留期間」の管理体制は構築されているか?
What(何を確認するか)
- • 全外国人社員の在留期限一覧化
- • 更新時期のリマインドシステム
- • 更新申請スケジュールの管理
- • 必要書類の事前準備体制
- • 緊急時対応手順の整備
Why(なぜ重要か)
うっかりオーバーステイ(不法残留)を発生させないため。一度不法残留となると、企業・外国人双方に深刻な影響が生じます。
Risk(リスク)
• 外国人社員が不法残留状態に
企業も不法就労助長罪に問われる
• 強制退去処分
• 今後の入国拒否
項目7:「労働時間」の管理は適正に行われているか?
What(何を確認するか)
- • タイムカード等による客観的把握
- • 36協定の締結・届出・遵守
- • 残業代の適正な計算・支払い
- • 休日・休暇の適切な付与
- • 労働時間の記録保存
Why(なぜ重要か)
労働基準法の基本的な遵守事項です。外国人だからといって例外はありません。適正な労働環境の提供が求められます。
Risk(リスク)
• 未払い残業代請求
• 労働基準監督署からの指導
ビザ更新時のマイナス評価
• 労働紛争・訴訟リスク
項目8:入管への「各種届出義務」を履行しているか?
What(何を確認するか)
- • 契約機関に関する届出(名称・所在地変更等)
- • 特定技能の場合の随時届出・定期届出
- • 2025年4月改正後の新届出制度への対応
- • 協力確認書の地方自治体への提出
- • 届出期限の管理
Why(なぜ重要か)
入管法上の企業の法的義務です。2025年4月の制度改正により、届出制度も大幅に変更されており、適切な対応が必要です。
Risk(リスク)
20万円以下の過料(入管法第71条の3)
• ビザ更新時のマイナス評価
• 今後の外国人採用への悪影響
• 受入れ機関としての信頼失墜
項目9:「退職・離職時」の手続きは漏れなく行っているか?
What(何を確認するか)
- • 退職後14日以内の入管への届出
- • ハローワークへの離職届出
- • 社会保険の脱退手続き
- • 脱退一時金制度の案内
- • 在留カード等の適切な取扱い
Why(なぜ重要か)
退職後の手続きは複数の法令にまたがる企業の義務です。適切な手続きを怠ると、後日、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
Risk(リスク)
20万円以下の過料(届出義務違反)
• 30万円以下の罰金(雇用状況届出義務違反)
• 今後の外国人採用への悪影響
• 元社員の在留資格への悪影響
項目10:関連書類の「保管・管理」は適切か?
What(何を確認するか)
- • 在留カードのコピー
- • 雇用契約書・労働条件通知書
- • 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(法定三帳簿)
- • 各種届出書の控え
- • 保管期間の適切な管理
Why(なぜ重要か)
法令遵守の証拠となる重要な書類です。入管や労働基準監督署の調査時、労働紛争時などに必要となる可能性があります。
Risk(リスク)
• 法定帳簿等保存義務違反
• 調査時の証拠不足
トラブル時の立証困難
• 行政指導の対象
3. 自主監査で問題が見つかったら?取るべき対応
重要:隠蔽は絶対に避けてください
問題が発見された場合、隠蔽や放置は状況をより深刻化させます。以下の対応を速やかに実施することが重要です。
immediate(緊急対応)
- 届出漏れ:速やかに該当する届出を実施する
- 未払い賃金:計算の上、速やかに支払いを行う
- 社会保険未加入:遡及加入手続きを実施する
- 資格外活動:業務内容の見直し・変更許可申請
Long-term(根本対策)
- 原因分析:なぜ問題が発生したのかを徹底分析
- 体制見直し:管理体制・業務フローの改善
- 社内教育:担当者への教育・研修実施
- 定期点検:定期的な自主監査の仕組み構築
専門家への相談を推奨します
法的に適切な是正方法や入管への説明方法については、専門家(行政書士、社会保険労務士など)にアドバイスを求めることを強く推奨します。
- • 適切な是正手順の策定
- • 行政機関への説明資料作成
- • 今後の予防策の立案
- • 継続的なコンプライアンス体制の構築
4. まとめ:継続的な自主監査で、健全な外国人雇用体制を
外国人雇用コンプライアンスは、一度体制を整えれば終わりではありません。法改正や社員の状況変化に対応して、定期的に見直す「自主監査」が不可欠です。
健全なコンプライアンス体制がもたらすメリット
企業にとって
- • 法的リスクからの保護
- • 企業の社会的信用維持
- • 安定した外国人材の確保
- • 業務効率の向上
外国人社員にとって
- • 安心して働ける環境
- • 能力を最大限発揮できる職場
- • 安定した在留資格の維持
- • キャリア形成の機会
今回ご紹介した10項目のチェックリストを定期的に実施し、必要に応じて専門家のサポートを活用することで、企業の持続的な成長に繋がる健全な外国人雇用体制を構築していただければと思います。
5. 行政書士しかま事務所の「外国人雇用コンプライアンス監査」サポート
貴社の外国人雇用は、本当に安全ですか?
問題が表面化する前に、専門家によるコンプライアンス監査をご検討ください。
コンプライアンス監査
10項目チェックリストに基づいた専門的な監査を実施し、潜在的なリスクを洗い出します。
規程・マニュアル作成
社内規程やマニュアル作成をサポートし、継続的なコンプライアンス体制を構築します。
顧問サポート
継続的な法務・ビザ管理サポートにより、安心して外国人雇用を継続できます。
初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
免責事項:本記事の内容は2025年6月22日時点の法令・制度に基づいて作成されており、情報提供を目的としています。個別具体的な案件については、必ず専門家にご相談ください。法改正等により内容が変更される可能性があります。
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