特定技能運用要領解説③
【2025年最新/特定技能コンプライアンス編】
届出漏れは命取り!企業の法的リスクと行政処分・罰則まとめ
この記事を読むとわかること
- 受入れ企業の随時届出・定期届出の詳細と期限
- 2025年4月からの重要変更点(年1回届出・協力確認書)
- 登録支援機関の届出・報告義務と責任
- 届出義務違反時の行政処分と具体的な罰則
- コンプライアンス体制構築の重要性
届出義務、完璧に管理できていますか?
「特定技能外国人を雇用しているが、どんな届出が必要かよく分からない」 「届出を忘れてしまった場合、どんな処分を受けるのか不安」 「2025年4月から変更になった制度についていけていない」
このような不安をお持ちの企業経営者や人事担当者の方に向けて、行政書士の専門的な視点から、 出入国在留管理庁の最新運用要領(令和7年6月版)に基づき、特定技能制度における届出義務と その違反時のリスクについて詳しく解説いたします。
目次
第1章 特定技能所属機関(受入れ企業)の届出義務
1-1. 届出義務の重要性と罰則リスク
「知らなかった」では済まされない
特定技能外国人を受け入れた企業には、法律に基づく厳格な届出義務が課されています。 届出をせず、又は虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金という罰則が科される可能性があります。
運用要領では「届出をせず、又は虚偽の届出をした者については、罰則の対象となりますので、 添付する資料を含め、十分確認をした上で届出書を提出してください。」と明記されています。
1-2. 随時届出(発生の都度・14日以内)
以下の事由が発生した場合、原則として14日以内に届出を行わなければなりません。
届出の種類 | 届出期限 | 主な内容 |
---|---|---|
特定技能雇用契約の変更 | 変更日から14日以内 | 雇用契約期間、就業場所、業務内容、労働時間、賃金等の変更 |
特定技能雇用契約の終了 | 終了日から14日以内 | 契約終了理由を含む詳細な報告 |
新たな雇用契約の締結 | 締結日から14日以内 | 新規契約の詳細内容 |
支援計画の変更 | 変更日から14日以内 | 1号特定技能外国人支援計画の変更内容 |
登録支援機関との委託契約 | 契約事由発生から14日以内 | 締結・変更・終了のいずれの場合も |
受入れ困難時 | 発生日から14日以内 | 解雇、行方不明、1ヶ月以上の未活動等 |
基準不適合 | 認知日から14日以内 | 自ら又は支援計画が省令基準に不適合となった場合 |
重要:14日以内の期限厳守
いずれの随時届出も「14日以内」という短い期限が設定されています。 事由が発生した日を起算日として、土日祝日を含めて14日以内に提出する必要があります。
1-3. 定期届出(2025年4月から年1回)
年1回の定期届出制度
2025年4月から、従来の四半期ごとの届出から年1回の届出に変更されました。 毎年4月1日から5月31日までの間に、前年度(4月1日~3月31日)の状況を報告します。
定期届出の詳細
適格性書類の提出
定期届出には、企業の適格性を証明する以下の書類を添付する必要があります:
- 登記事項証明書
- 業務執行に関与する役員の住民票の写し
- 労働保険料・社会保険料の納付に係る資料
- 国税・法人住民税の納付に係る資料
適格性書類の提出省略
一定の条件を満たす企業(上場企業、過去3年間指導勧告なし、電子届出実施等)は、 適格性書類の提出を省略できる場合があります。
第2章 登録支援機関の届出・報告義務
2-1. 登録支援機関の主な届出義務
登録支援機関も、受入れ機関と同様に厳格な届出義務を負います。
支援委託関連の届出
- 支援委託契約の締結・変更・終了(14日以内)
- 契約内容の詳細報告
登録情報の変更届出
- 商号・名称・住所の変更(14日以内)
- 役員の変更(14日以内)
- 業務の休廃止(届出必要)
支援実施状況の報告
- 支援状況の定期報告(年1回)
- 支援内容・体制・実績・苦情等の詳細報告
2-2. 【重要】特異事案報告義務
支援実施困難時の報告義務
登録支援機関は、以下の場合には速やかに出入国在留管理庁に報告する義務があります:
- 支援計画の実施が困難となった場合
- 受入れ機関の基準不適合を把握した場合
- 特定技能外国人の労働関係法令違反を発見した場合
第3章 2025年4月からの重要変更点
3-1. 定期届出の年1回化
届出制度の大幅変更
変更前(~2025年3月)
- • 四半期ごと(年4回)
- • 3ヶ月ごとの詳細報告
- • 頻繁な事務負担
変更後(2025年4月~)
- • 年1回(4月~5月提出)
- • 年度単位の包括報告
- • 事務負担の軽減
3-2. 地域共生施策との連携と「協力確認書」
新たな義務:協力確認書の提出
2025年4月から、受入れ企業は事業所及び住居の所在地の市区町村に 「協力確認書」を提出することが義務付けられました。
提出時期:在留資格認定証明書交付申請又は在留資格変更許可申請前
対象:事業所所在地と住居所在地の両方の市区町村
頻度:初回及び内容変更時
協力確認書の目的
この制度は、特定技能外国人の地域への円滑な受入れと共生を図ることを目的としています。
- 地方公共団体との連携強化
- 地域住民との共生促進
- 行政サービスの適切な提供
協力要請への対応義務
市区町村からの協力要請に正当な理由なく応じない場合、 改善命令等の行政処分の対象となる可能性があります。
第4章 届出義務違反・基準不適合が招く行政処分と罰則
4-1. 行政処分の段階的措置
行政処分の流れ
問題が判明した場合の最初の措置
帳簿提出・説明の命令、拒否・虚偽報告は罰則対象
期限を設けた改善措置の命令、公示される
重大な違反時の業務停止・登録取消し
4-2. 具体的な罰則
届出義務違反・虚偽届出
30万円以下の罰金
届出をしない、期限に遅れる、虚偽の内容を届け出た場合に適用
改善命令違反・検査妨害
6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
改善命令に従わない、報告徴収を拒む、虚偽の回答をした場合に適用
登録支援機関の登録取消し
業務停止・登録取消し
- • 重大な支援義務違反
- • 継続的な報告義務違反
- • 欠格事由への該当
- • 虚偽申請・書類提出
4-3. 改善命令の公示による社会的制裁
企業名の公表リスク
運用要領では「改善命令は公示される」と明記されており、 企業名や違反内容が公表される可能性があります。
これは金銭的な罰則以上に、企業の社会的信用に重大な影響を与える可能性があります。
まとめ:コンプライアンスこそが制度活用の礎
特定技能制度の厳格な現実
本連載を通じて解説してきた通り、特定技能制度は多くの義務と厳しい罰則の上に成り立っています。 「知らなかった」「うっかり忘れていた」では済まされない、極めて厳格な制度です。
届出義務の重要性
随時・定期の各種届出を期限内に正確に行うことが絶対に必要
罰則の深刻性
30万円の罰金から拘禁刑、さらに企業名公表のリスクまで
制度変更への対応
2025年4月からの大幅変更に適切に対応することが必要
適法な運用とコンプライアンス体制の構築
特定技能制度を活用して企業の人手不足を解消し、外国人の方々に安心して働いていただくためには、 以下の3つの柱をしっかりと構築することが不可欠です:
- 適切な届出管理体制:期限と内容を確実に管理する仕組みの構築
- 法改正への迅速な対応:制度変更を常に把握し、適切に対応する体制
- 専門家との連携:複雑な制度を正確に理解・運用するためのサポート体制
これらの体制構築は、企業と外国人双方を守り、制度を継続的に活用するための基盤となります。
専門家サポートの重要性
複雑な届出管理、頻繁な法改正への対応、そして厳格な罰則リスクを考慮すると、 特定技能制度の適切な運用には専門家(行政書士)のサポートが不可欠です。
- 正確な届出書類の作成・提出代行
- 法改正情報の適時提供と対応サポート
- コンプライアンス体制構築のアドバイス
- 行政処分リスクの予防・対応
行政書士しかま事務所
特定技能・外国人雇用の専門サポート
当事務所の特徴
- 特定技能制度に特化した専門事務所
- 最新法令・運用要領に完全対応
- 申請から受入れ後まで一貫サポート
- 登録支援機関との連携体制完備
主要サービス
- ・特定技能外国人の受入れ申請代行
- ・1号特定技能外国人支援計画の作成
- ・登録支援機関の選定サポート
- ・受入れ後の届出代行・コンプライアンス支援
特定技能外国人の受入れでお困りの企業様、まずはお気軽にご相談ください。
免責事項・情報の時点
情報の時点:本記事は、令和7年6月版「特定技能外国人受入れに関する運用要領」 (出入国在留管理庁)に基づいて作成されており、2025年6月時点の最新情報です。
免責事項:本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としており、 個別具体的な案件については、必ず最新の法令や運用要領を確認し、 専門家にご相談ください。法令等の改正により内容が変更される場合があります。
出典:出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」 (令和7年6月版)
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