その「業務委託契約」、外国人にとっては不法就労リスク?適法な契約とビザ取得の分岐点

その「業務委託契約」、外国人にとっては不法就労リスク?適法な契約とビザ取得の分岐点 | 行政書士しかま事務所

その「業務委託契約」、外国人にとっては不法就労リスク?
適法な契約とビザ取得の分岐点

読了時間:約12分 | 2025年5月30日更新

この記事を読むとわかること

  • 外国人の「業務委託契約」がなぜビザの問題と深く関わるのか
  • 「雇用契約」と「業務委託契約」の法的・実務的な違いと入管の視点
  • どんな業務委託契約が「不法就労」のリスクを伴うか
  • 業務委託で働くために必要な在留資格(ビザ)の考え方
  • 企業が外国人に業務委託する際のコンプライアンス上の注意点

こんな契約、大丈夫?

  • 「フリーランスとして働きたいけど、今の技人国ビザで大丈夫?」
  • 「会社から『業務委託に切り替えて』と言われたけど、ビザは?」
  • 「海外の会社からの業務委託なら、日本のビザは関係ない?」
  • 「個人事業主として業務委託を受けるには、どんなビザが必要?」
  • 「報酬の支払い方で、不法就労かどうかが変わるって本当?」

1. はじめに:「業務委託」という働き方と外国人のビザ問題

こんにちは。行政書士しかま事務所の鹿間英樹です。私たちは外国人の在留資格申請、特に技術・人文知識・国際業務ビザや特定技能、経営・管理ビザの専門サポートを行っており、多くの外国人の方とそのご家族、そして外国人を雇用される企業の皆様のお手伝いをさせていただいております。

近年、働き方の多様化に伴い、フリーランスやギグワークなど「業務委託契約」に基づく働き方が急速に広がっています。しかし、外国人の方にとって、この「業務委託契約」という働き方は、在留資格(ビザ)との関係で大きな落とし穴になり得ることをご存知でしょうか。

重要な誤解にご注意ください

「業務委託だからビザの制約は緩いのでは?」「フリーランスなら自由に働けるはず」といった誤解が、不法就労や在留資格取消しといった深刻な事態を招くリスクがあります。

本記事では、外国人にとっての「業務委託契約」の法的意味、適法な契約とビザ取得の分岐点、そして企業側が気をつけるべきコンプライアンス上の注意点について、行政書士として専門的に解説いたします。

特に2025年6月からは不法就労助長罪の罰則が大幅に強化されるため、企業も外国人個人も、より一層の注意が必要となっています。

2. 「雇用契約」と「業務委託契約」:何がどう違う?入管はどう見る?

契約形態の基本的な違い

雇用契約

  • • 労働者が使用者の指揮命令下で労務を提供
  • • 対価として賃金を受け取る
  • • 労働基準法等の労働法規が適用
  • • 時間給、月給などの支払い形態

業務委託契約

  • • 受託者が独立して業務を完成
  • • 結果に対して報酬を受け取る
  • • 指揮命令関係は原則として存在しない
  • • 請負、委任、準委任などの契約形態

入管の視点:契約の「実態」で判断

出入国在留管理庁は、契約書の名称や形式ではなく、「実際の働き方や関係性」を重視して判断します。

たとえ「業務委託契約」と名付けられていても、実質的に指揮命令関係があり、労働者としての実態がある場合(偽装請負)は、雇用契約として取り扱われます。

また、在留資格(特に就労ビザ)の多くは、安定的な雇用関係を前提として設計されています。そのため、業務委託契約での活動は、雇用契約での活動よりも審査上のハードルが高くなる傾向があることを理解しておく必要があります。

3. 要注意!こんな「業務委託契約」は不法就労・資格外活動違反のリスク大

以下のような業務委託契約は、意図せず「不法就労」や「資格外活動違反」となるリスクが高いため、特に注意が必要です。

ケース1:就労ビザ保有者の副業的業務委託

状況:技術・人文知識・国際業務ビザでITエンジニアとして働く外国人が、週末に個人として翻訳業務を業務委託で請け負う場合

リスク:本来の活動範囲外の業務であれば、資格外活動許可が必要。許可なく行うと資格外活動違反となる可能性があります。

ケース2:退職後の同一業務の業務委託継続

状況:就労ビザで働いていた外国人が会社を退職後、同じ内容の仕事を同じ会社から「業務委託」として継続するが、必要な手続きを行っていない場合

リスク:所属機関の変更や活動内容の変更に伴う届出・変更申請を怠ると、在留資格の要件違反となる可能性があります。

ケース3:留学生の時間制限超過

状況:留学ビザ(資格外活動許可あり)の学生が、フードデリバリーやウェブデザインを業務委託として週28時間を超えて継続的に行う場合

リスク:資格外活動許可の範囲(週28時間以内)を超えると、不法就労となり、在留資格の更新が困難になります。

ケース4:就労不可の在留資格での業務委託

状況:短期滞在ビザや観光目的での入国者が「業務委託なら大丈夫」と考えて報酬を伴う活動を行う場合

リスク:在留資格で認められていない就労活動は、契約形態に関係なく不法就労となります。

共通するリスク

  • 在留資格の更新不許可・変更不許可
  • 在留資格取消しによる強制退去
  • 刑事罰の対象となる可能性
  • 将来の在留資格申請への悪影響

4. 外国人が「業務委託」で働くための在留資格(ビザ)戦略

基本原則:安定した活動基盤の証明が鍵

業務委託契約での活動を適法に行うためには、その活動が継続的・安定的であり、在留資格で認められた範囲内であることを明確に証明する必要があります。

①「技術・人文知識・国際業務」ビザでのフリーランス的活動

可能性と条件

複数の企業と業務委託契約を結んでフリーランスとして活動することは、以下の条件を満たせば可能です

  • • 各契約の業務内容が技人国ビザの専門業務(IT、通訳翻訳、貿易業務等)に該当
  • • 継続的・安定的な収入が見込める契約関係
  • • 大学等での専攻と業務内容の関連性
  • • 適切な報酬水準(日本人と同等以上)

注意すべき限界

個々の契約が短期的であったり、収入が不安定であったりすると、在留資格の更新時に「継続性・安定性」の立証が困難となり、更新が許可されないリスクが高まります。通常の被雇用者よりも厳格な審査が行われる傾向があります。

②「経営・管理ビザ」による個人事業主としての活動

最適なケース

本格的に独立して事業として業務委託を請け負う場合、経営・管理ビザが最も適切な選択肢となることが多いです

  • • 個人事業主または法人設立による事業運営
  • • 複数のクライアントとの業務委託契約
  • • 事業所の確保(自宅兼事務所も可能な場合あり)
  • • 事業計画と継続性の証明
  • • 適切な資本金または事業資金の確保

③その他の可能性

近年導入されたデジタルノマドビザ(特定活動)など、特定の条件下でのリモートワーク型業務委託に該当する場合もあります。ただし、これらは限定的な場面でのみ適用されます。

専門家への相談の重要性

在留資格の選択は個々のケースによって大きく異なります。ご自身の状況に最適なビザ戦略を立てるためには、入管法に精通した行政書士への相談をお勧めします。

5. 企業側が外国人に業務委託する際の法的注意点と責任

企業が外国人と業務委託契約を結ぶ際には、以下の点について十分な注意とコンプライアンス体制の構築が必要です。

契約内容の精査

  • • 実質的な指揮命令関係の有無
  • • 偽装請負とならない契約設計
  • • 業務の独立性の確保
  • • 成果物に対する報酬設定

在留資格の確認義務

  • • 在留カードの有効性確認
  • • 活動範囲との整合性チェック
  • • 資格外活動許可の有無確認
  • • 定期的な資格状況の再確認

不法就労助長罪の厳罰化(2025年6月施行)

2025年6月より、不法就労助長罪の罰則が大幅に強化されます

【改正前】

3年以下の懲役または300万円以下の罰金

【改正後】

5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科可)

業務委託であっても、相手の外国人が不法就労状態にある場合、企業が「知らなかった」では済まされない可能性があります。

企業が講じるべき具体的対策

事前確認チェックリスト

  • ✓ 在留カードの有効期限と真正性の確認
  • ✓ 在留資格の種類と就労制限の有無
  • ✓ 資格外活動許可書の確認(必要な場合)
  • ✓ 業務内容と在留資格の整合性確認
  • ✓ 他の就労先との重複確認(時間制限がある場合)

契約書作成時の注意点

  • ✓ 業務の独立性を明確に記載
  • ✓ 指揮命令関係がないことの明記
  • ✓ 成果物に対する報酬であることの明確化
  • ✓ 在留資格に関する確認条項の挿入

報酬支払い時の適正処理

  • ✓ 適切な経理処理と記録保管
  • ✓ 源泉徴収等の税務処理
  • ✓ 不自然な現金支払いの回避
  • ✓ 支払い記録の透明性確保

6. まとめ:適法な業務委託とビザで、自由な働き方を実現するために

外国人が業務委託契約で働くこと自体が即座に違法となるわけではありません。しかし、その「契約の実態」と「本人の在留資格」との整合性が極めて重要であることを、本記事を通じて理解していただけたでしょうか。

適法な業務委託のための必須ポイント

外国人の方へ
  • • 現在の在留資格での活動可能範囲の正確な把握
  • • 業務委託契約締結前の法的確認
  • • 継続性・安定性を証明できる契約設計
  • • 必要に応じた在留資格変更申請
企業の方へ
  • • 相手方の在留資格の事前確認
  • • 偽装請負とならない契約設計
  • • 定期的なコンプライアンスチェック
  • • 不法就労助長罪回避のための体制整備

安易な判断の危険性

入管法は複雑で、個々のケースによって判断が分かれることも多くあります。「多分大丈夫だろう」「他の人もやっているから」といった安易な判断は、取り返しのつかない結果を招く可能性があります。契約締結前、活動開始前に、必ず専門家に相談することを強くお勧めします。

適切な法的知識とサポートがあれば、外国人の方も企業も、安心して新しい働き方を実現することができます。自由で柔軟な働き方と法的な適法性を両立させ、日本での充実したキャリアを築いていただければと思います。

行政書士しかま事務所の業務委託・ビザコンサルティング

自由な働き方と適法性の両立を、専門家がサポートします

外国人の方への支援

  • • フリーランス活動の在留資格コンサルティング
  • • 技人国ビザでの業務委託可能性診断
  • • 経営・管理ビザ取得サポート
  • • 業務委託契約書のリーガルチェック
  • • 在留資格変更・更新申請サポート

企業向けサポート

  • • 外国人業務委託契約のリスク診断
  • • コンプライアンス体制構築支援
  • • 不法就労助長罪回避のための社内研修
  • • 在留資格確認手順の策定
  • • 契約書雛形作成・見直し

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免責事項:本記事の情報は2025年5月30日時点の法令・運用に基づいており、一般的な情報提供を目的としています。個別具体的なケースについては、必ず専門家にご相談ください。法令の改正や運用の変更により、記載内容が現状と異なる場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁の公式発表をご確認ください。

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