J-SKIP(特別高度人材制度)活用ガイド

J-SKIP制度概要(出典:出入国在留管理庁)
当ウェブサイトをご覧いただき誠にありがとうございます。行政書士しかま事務所の代表を務めております鹿間英樹と申します。
2023年4月、日本政府はグローバルな人材獲得競争の一環として、新しい在留資格制度「J-SKIP(特別高度人材制度)」を導入しました。この制度は、特に高い収入と能力を持つ外国人専門職や経営者の方々にとって、日本への移住や事業展開、質の高い生活を実現するための画期的な選択肢となっています。
世界中で活躍する投資家や経営者、高収入の専門職の方々が、この制度を活用して日本での新たな可能性を追求されています。2025年5月時点の最新情報に基づき、皆様が特に注目すべきJ-SKIPのカテゴリー、その要件、そして享受できる優遇措置について専門的観点から解説いたします。
J-SKIP(特別高度人材制度)とは?
J-SKIP(特別高度人材制度)は、2023年4月に日本政府が導入した、世界の優秀な人材を日本に呼び込むための在留資格制度です。従来の「高度人材ポイント制」が学歴、職歴、年収などの複数項目を点数化して70点以上を要求していたのに対し、J-SKIPは特定の高い基準(年収、学歴、職歴など)を明確に定め、この基準を満たす人材に対して「高度専門職」の在留資格と拡充された優遇措置を迅速に付与するものです。
J-SKIPのメリット
- 明確な基準による迅速な審査:複雑なポイント計算ではなく、年収と学歴・職歴という明快な基準
- 日本での長期的活動基盤の早期確立:初期から5年の在留期間、最短1年での永住許可申請
- 家族とのライフスタイル向上:配偶者の就労、親や家事使用人の帯同など
- 事業展開と投資活動の自由度:複合的な在留活動の許容
カテゴリー | 年収要件 | 学歴・職歴要件 |
---|---|---|
高度学術研究活動 (大学教授や研究者等) | 年収2,000万円以上 | ・修士号以上取得 または ・職歴10年以上 |
高度専門・技術活動 (企業で働く技術者等) | 年収2,000万円以上 | ・修士号以上取得 または ・職歴10年以上 |
高度経営・管理活動 (企業の経営者等) | 年収4,000万円以上 | ・職歴5年以上 |
外国人専門職・経営者向けポイント
J-SKIPは、特に年収が高い方々にとって、複雑なポイント計算をせずとも、明確な要件を満たすことで直接「高度専門職」の地位と優遇措置を獲得できる制度です。投資家、経営者、高収入の専門職の方々は、この制度を戦略的に活用することで、日本での滞在やビジネス展開を効率的に進めることができます。
J-SKIPのカテゴリーと具体的要件
J-SKIP制度では、申請者の活動内容によって3つのカテゴリーに分類されます。高収入の専門職や経営者の方々が特に該当しやすいのは、以下の2つのカテゴリーです。
高度経営・管理活動(高度専門職1号ハ)
このカテゴリーは、企業経営者や投資家など、事業の経営や管理に従事する方々を対象としています。
要件:
- 事業の経営または管理に係る実務経験が5年以上あること
- 年収が4,000万円以上であること
活用例:
- 日本で新会社を設立し、代表取締役として経営する
- 既存の日本企業の役員として高額報酬を得る
- 個人投資家として日本で大規模な投資活動を行う(経営・管理活動に該当する範囲で)
- 外資系企業の日本法人の代表として赴任する
高度専門・技術活動(高度専門職1号ロ)
このカテゴリーは、高度な専門知識や技術を持ち、企業や組織で専門的業務に従事する方々を対象としています。
要件:以下のいずれかを満たすこと
- 修士号以上を取得しており、年収が2,000万円以上であること
- 当該業務に係る実務経験が10年以上あり、年収が2,000万円以上であること
活用例:
- 国際的なコンサルタントとして日本企業にサービスを提供する
- 金融アナリストやファンドマネージャーとして日本の金融機関で働く
- ITエグゼクティブとして日本でのデジタル事業を指揮する
- 医療や法律などの専門分野で高収入のポジションに就く
項目 | 高度経営・管理活動 | 高度専門・技術活動 |
---|---|---|
対象者 | 企業経営者、投資家など | 専門職、技術者など |
年収要件 | 4,000万円以上 | 2,000万円以上 |
学歴・職歴要件 | 経営・管理の実務経験5年以上 | 修士号以上 または 実務経験10年以上 |
主な活動内容 | 会社経営、役員、投資活動 | コンサルティング、金融業務、専門技術業務 |
高収入の専門職や経営者の方々にとって特に重要なのは、J-SKIPでは年収要件が明確に定められており、高収入である場合に学歴や職歴などの他の条件と組み合わせることで、複雑なポイント計算をせずとも高度専門職の地位を獲得できる点です。
J-SKIPで得られる主な優遇措置(メリット)
J-SKIP(特別高度人材制度)が認定された方々は、通常の在留資格と比較して、また従来の高度人材ポイント制よりもさらに拡充された優遇措置を受けることができます。特に高収入の専門職や経営者の方々にとって魅力的な優遇措置は以下の通りです
① 長期かつ安定した在留資格
J-SKIPで認定されると、初めから5年間の在留期間が付与されます。通常の就労ビザでは初回は1年間であることが多いため、長期的な計画を立てやすくなります。
② 永住許可要件の大幅な緩和
最も注目すべき点として、「高度専門職1号」として1年間日本で活動すれば永住許可申請が可能になります。通常は10年の在留期間が必要とされる永住許可の要件が大幅に緩和され、日本での長期的な生活基盤をきわめて短期間で確立することができます。
③ 配偶者の就労
J-SKIP特別高度人材の配偶者は、学歴や職歴等の要件を満たさなくても、フルタイムでの就労活動が可能です。「教授」「芸術」「宗教」「報道」「技能」等の活動も含めて幅広い就労が認められており、配偶者のキャリア継続を支援します。
④ 親の帯同
一定の要件を満たせば、本人または配偶者の親の帯同が認められます。主な要件は以下の通りです
- 世帯年収が800万円以上であること
- 特別高度人材本人またはその配偶者が妊娠中または7歳未満の子を養育していること
これにより、子育て支援のために親を日本に呼び寄せることが可能となり、家族全体での移住がスムーズになります。
⑤ 家事使用人の帯同
高収入の専門職や経営者の方々にとって特に魅力的なのが、外国人家事使用人の帯同が認められる点です。主な要件は以下の通りです
- 世帯年収が1,000万円以上であること
- 家事使用人が18歳以上で、月額20万円以上の報酬を受けること
- 雇用主が使用する言語で日常会話ができること
高収入者向け特例
世帯年収が3,000万円以上の場合は、家事使用人を2名まで雇用できるという特例が設けられています。この場合、従来の高度人材ポイント制で必要だった「13歳未満の子または病気等の配偶者」などの要件も不要となります。
⑥ 入国・在留手続きの優先処理
空港での優先レーン(プライオリティレーン)利用や各種申請の優先処理など、入国・在留に関わる手続きがスムーズになります。ビジネスで多忙な高収入の専門職や経営者の方々にとって、時間を節約できる重要な利点です。
優遇措置 | 従来の高度人材ポイント制 | J-SKIP(特別高度人材) |
---|---|---|
在留期間 | 5年 | 5年 |
永住許可申請要件 | 3年(80点以上は1年) | 1年 |
配偶者の就労 | 限定的に可能 | 広範囲で可能 |
親の帯同 | 一定条件下で可 | 一定条件下で可 |
家事使用人 | 1名のみ(家庭事情要件あり) | 最大2名(世帯年収3,000万円以上の場合) |
プライオリティレーン | × | ○ |
これらの優遇措置は、グローバルに活躍する高収入の専門職や経営者の方々が日本でのビジネスや生活を円滑に始め、長期的に継続するための重要な支援となります。特に永住許可への道のりが大幅に短縮される点は、日本での長期的な基盤構築を考える方々にとって非常に魅力的です。
申請プロセスと主な必要書類
J-SKIP(特別高度人材制度)の申請プロセスは、申請者の状況によって異なります。ここでは、高収入の専門職や経営者の方々が特に該当しやすいケースに焦点を当てて説明します。
申請の種類
- 新規入国の場合:在留資格認定証明書交付申請
日本国外にいる方が新たに入国する場合、まず在留資格認定証明書(COE)の取得が必要です。これは日本の受入れ機関(雇用企業など)や代理人が申請します。 - 既に日本に滞在している場合:在留資格変更許可申請
既に別の在留資格で日本に滞在している方が、J-SKIPへの変更を希望する場合に行います。
主な必要書類
J-SKIP認定のためには、特に年収や職歴に関する客観的な証明が重要です。高収入の専門職や経営者の方々が特に注意すべき主な必要書類は以下の通りです
年収証明資料
- 雇用契約書(年収額が明記されたもの)
- 報酬証明書(企業の役員として報酬を得る場合)
- 納税証明書(過去の高収入を証明する場合)
- 確定申告書(事業収入がある場合)
- 会社の定款や役員報酬規程(役員報酬を受ける場合)
職歴証明資料
- 詳細な経歴が記載された在職証明書(在職期間と役職、業務内容が明記されたもの)
- 過去の役員就任証明書(経営・管理活動の場合)
- 会社登記事項証明書(自身が経営者である会社の場合)
学歴証明資料
- 修士号・博士号等の学位証明書
- 卒業証明書
事業活動関連資料(高度経営・管理活動の場合)
- 事業計画書(日本での事業展開の詳細と収支計画)
- 会社の登記簿謄本
- 出資金関係書類
- 事務所の賃貸借契約書
- 投資活動証明書類(投資家の場合)
高収入専門職・経営者向けポイント
特に年収証明は極めて重要です。高額な年収が契約上明確であり、かつ将来にわたって安定的に得られることを客観的に証明できる資料の準備が必要です。複数の収入源がある場合は、それらを合算して年収要件を満たすことも可能ですが、それぞれの収入の信頼性と継続性が問われます。
また、配偶者の就労、親の帯同、家事使用人の雇用といった優遇措置を受ける場合は、それぞれ追加の書類が必要となります。特に高収入の専門職や経営者の方々が重視する家事使用人の帯同には以下の書類が必要です
- 家事使用人との雇用契約書
- 家事使用人の旅券(パスポート)
- 世帯年収が1,000万円以上(2人の場合は3,000万円以上)であることの証明
- 雇用主である特別高度人材が使用する言語で日常会話ができることを証明する資料
申請・利用にあたっての注意点
J-SKIP(特別高度人材制度)の申請や利用にあたって、高収入の専門職や経営者の方々が特に注意すべきポイントがあります。
年収要件に関する注意点
年収要件は、申請時点だけでなく、将来にわたる安定性・継続性も重視されます。
- 契約上の年収額だけでなく、その収入の継続性や確実性が審査されます
- 在留期間更新時には、引き続き特別高度人材の基準(年収要件など)を満たしている必要があります
- 役員報酬の場合、会社の業績や財務状況も確認されることがあります
「高度専門職1号」の在留資格をもって在留している間は常に特別高度人材の基準への該当を維持することまでは要しません。しかし、在留期間更新許可申請の際に特別高度人材の基準を満たしていない場合は、在留期間の更新の許可を受けることはできません。年収の維持や業務内容の変更には注意が必要です。
資産移動と税制上の留意点
日本への移住や投資にあたっては、資産移動や税制面での検討も重要です。
- 日本への資金移動に関する国際送金規制を理解しておく必要があります
- 日本の税制(所得税、住民税、相続税など)について事前に理解しておくことが重要です
- 永住権取得を視野に入れる場合、特に日本の相続税制度に注意が必要です
- 国際的な二重課税や租税条約の適用について専門家に相談することをお勧めします
※税務に関するアドバイスは税理士の業務範囲となりますので、具体的な税務戦略については税理士にご相談ください。
在留資格の活動範囲について
活動内容の変更や複合的な活動を行う場合の注意点
- 「高度専門職1号」では、原則として指定された活動範囲内での活動が求められます
- 活動内容に大きな変更がある場合(例:雇用から起業へ)は、在留資格変更許可申請が必要になる場合があります
- 複合的な在留活動は許容されますが、主たる活動はJ-SKIPの要件に合致する必要があります
まとめ:J-SKIPは戦略的な日本移住の選択肢
J-SKIP(特別高度人材制度)は、高い年収と専門性を持つ外国人専門職や経営者の方々にとって、日本への移住や事業展開を実現するための優れた選択肢です。本制度の主なメリットを改めて確認しましょう
- 明確な基準と迅速な認定:複雑なポイント計算ではなく、年収と学歴・職歴という明確な基準によって認定
- 長期的な滞在基盤の早期確立:5年の在留期間と最短1年での永住許可申請
- 家族とのライフスタイル向上:配偶者の就労、親の帯同、家事使用人の雇用など、充実した家族生活をサポート
- 事業と投資の自由度:複合的な活動が許容され、日本でのビジネス展開をスムーズに
一方で、J-SKIPの要件は高いハードルとなっており、年収4,000万円(経営・管理活動)または2,000万円(専門・技術活動)という基準を満たす必要があります。また、この基準を客観的に証明するための書類準備や、将来にわたる要件の維持など、専門的な知識と緻密な準備が求められます。
グローバル化が進む現代において、各国は優秀な人材や投資を呼び込むための移民政策を競争的に展開しています。J-SKIPはそうした国際的な文脈の中で、日本が特に高度な能力と資産を持つ人材を優先的に受け入れるための施策です。高収入の専門職や経営者の方々にとって、J-SKIPは日本という魅力的な国での事業展開や生活の実現に向けた戦略的な選択肢となるでしょう。
行政書士しかま事務所のJ-SKIP申請フルサポート
J-SKIP(特別高度人材制度)の申請は、要件の複雑さと必要書類の多さから、専門家のサポートが非常に有効です。行政書士しかま事務所では、高収入の専門職や経営者のクライアント一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの申請サポートを提供しています。
J-SKIP申請サポートの特徴
- 個別状況に応じた申請戦略の立案:事業計画、資産背景、家族構成など、クライアント固有の状況を考慮
- 要件の厳密な検証と対応:年収・職歴の立証方法を最適化
- 書類の収集・作成と論理的な立証:必要書類の網羅的な準備と説得力ある申請
- 入管への申請代行:面倒な手続きをワンストップで
- 優遇措置活用のアドバイス:配偶者就労、親の帯同、家事使用人の雇用など
- 永住許可申請への橋渡し:将来の永住申請も見据えたサポート
行政書士しかま事務所は、外国人の在留資格・ビザ申請に特化した専門事務所です。クライアント一人ひとりの状況に合わせたきめ細かなサポートを心がけております。
※本記事は2025年5月20日時点の情報に基づき作成しております。法令改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁のウェブサイト等でご確認ください。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的なご相談は当事務所までお問い合わせください。特にJ-SKIP制度の申請要件や優遇措置の適用については、個別の状況により異なる場合がありますので、専門家にご相談の上で判断されることをお勧めいたします。
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