【要注意】在留資格の「更新不許可」「取消」事例と、ビザを守るための対策
日本での滞在を継続するために、在留資格(ビザ)の更新や管理は非常に重要です。しかし、更新不許可や取消しになるケースも少なくありません。この記事では、在留資格の更新が不許可になる理由や取消される事例、そしてそれらを防ぐための対策について解説します。
目次
在留資格の「更新不許可」とは
在留資格には有効期限があり、日本での滞在を継続するためには、期限が来る前に更新手続きを行う必要があります。しかし、この更新申請が審査の結果「不許可」となる場合があります。更新が不許可になると、原則として在留期間満了日から出国しなければなりません。
更新不許可となった場合の滞在可能期間
在留期間が残っている場合は、その期間内に出国する必要があります。また、特例として在留期間満了から2ヶ月間は特例的に滞在が認められる場合もありますが、不許可決定時点でこの特例期間も終了します。ただし、不許可通知を受けた後、在留期間満了日までに再申請することも可能です。
更新不許可になる主な理由と具体的事例
1. 提出書類の不備や虚偽申請
申請書類に記載不備がある場合や、虚偽の情報を記載した場合には不許可となるリスクが高まります。
【事例】技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人が、実際の学歴とは異なる学歴を記載した内容虚偽の在留資格変更許可申請書を提出して許可を受けた。後に虚偽が発覚し、更新が不許可となった。
2. 在留状況が良くない(素行不良)
日本滞在中に法令違反や社会的に問題となる行為があった場合は、在留状況が良くないと判断され、更新が不許可になることがあります。
【事例】在留資格「技能(1年)」の上陸許可を受けて入国し、以後3回の在留期間更新許可を受けて在留していたところ、公然わいせつ罪により罰金10万円に処せられた。その後の在留期間更新申請が不許可となった。
3. 在留資格に対応する活動を行っていない
付与された在留資格に基づく活動を行っていない、または活動実態が乏しい場合は更新が認められないことがあります。
【事例】在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって在留する者が、勤務先を自己都合退職し、当該在留資格に応じた活動を行うことなく3か月以上本邦に在留していた。更新申請が不許可となった。
4. 留学生の出席率・成績不良
留学生の場合、出席率や成績が基準を満たしていないと更新が認められないことがあります。
出席率 | 更新可否 | 備考 |
---|---|---|
80%以上 | 〇 問題なく更新可能 | 通常の審査 |
70%以上80%未満 | △ 条件付き可能 | 出席率が低い理由の説明が必要 |
60%以上70%未満 | △ 厳しい条件付き | 合理的な理由がある場合のみ特別に認められる場合あり |
60%未満 | × 原則不許可 | 特別な事情がない限り認められない |
【事例】日本語教育機関に在籍する留学生(出席率は60%未満)が、アルバイトを優先して授業への出席が著しく低く、学業不振となっていた。在留期間更新許可申請がなされたが、在留状況に問題があるとして更新が認められなかった。
5. 資格外活動(アルバイト)の違反
留学生や特定の在留資格保有者がアルバイトなどで許可された時間(週28時間以内)を超えて働いた場合、入管法違反となります。
【事例】留学生が複数の飲食店でアルバイトをし、週40時間以上働いていたことが発覚。資格外活動違反として在留資格の更新が不許可となった。
6. 納税義務の不履行
住民税や国民健康保険料などの公的義務を怠っている場合、特に高額の未納や長期間の未納は更新審査において消極的に評価されます。
【事例】数年にわたり住民税を滞納し、催促状が複数回送付されていたにもかかわらず納付せず、在留期間更新申請時に納税証明書を提出できなかった外国人の更新が不許可となった。
7. 業務内容が在留資格の活動範囲外
就労系の在留資格を持つ方が、許可された活動範囲を超えた仕事を行っている場合、更新が認められないことがあります。
【事例】「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で入国したにもかかわらず、実際には単純労働に近い作業のみを行っていた。在留期間更新申請時に活動内容と資格の不一致が指摘され不許可となった。
在留資格の「取消し」とは
在留資格の取消しは、有効期間中にもかかわらず法務大臣によって在留資格が取り消される制度です。入管法第22条の4に基づいて行われ、取消しとなった場合は原則として30日以内に出国しなければなりません。
更新不許可と取消しの違い
更新不許可は、在留期間が満了して更新申請をした際に許可が下りないこと。一方、取消しは在留期間が残っていても強制的に在留資格が無効になることです。取消しのほうがより厳しい処分と言えます。
在留資格が取消される主な理由と具体例
1. 偽りその他不正手段による在留資格の取得
虚偽の書類提出や事実と異なる申告により在留資格を取得した場合は、発覚時に取消しとなります。
【事例】在留資格「経営・管理」を取得するため、実際には存在しない事業計画や虚偽の資金証明を提出し許可を得たが、後に実態調査で発覚した。
2. 在留資格に基づく活動を行わずに在留
本来行うべき活動(就労、学業など)を正当な理由なく一定期間行っていない場合。
【事例】在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって在留する者が、勤務先を自己都合退職し、新たな就職活動もせず、3か月以上他の活動(アルバイトなど)を行っていた。
3. 配偶者としての活動を行わない場合
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格保持者が、離婚・死別後6ヶ月以上経過しても他の在留資格への変更手続きを行わない場合。
【事例】在留資格「日本人の配偶者等」をもって在留している者が、日本人配偶者と離婚した後も引き続き、6か月以上本邦に在留していた。
4. 届出義務の不履行
住所変更や所属機関の変更などの届出を行わない、または虚偽の届出をした場合。
【事例】住居地を変更したにもかかわらず、14日以内の届出を怠り、3ヶ月以上経過しても届出を行わなかった。正当な理由なく90日以内に届出を行わなかったため在留資格が取り消された。
5. 偽装結婚
婚姻関係が形式的なもので、実態が伴わない偽装結婚と判断された場合。
【事例】「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ外国人が、実際には日本人配偶者と別居し、共同生活の実態がなく、婚姻関係が形骸化していることが調査で判明した。
6. 刑事罰を受けた場合
日本の法律違反により刑事罰を受けた場合、在留資格が取り消されることがあります。
【事例】在留資格「経営・管理」の上陸許可を受けて入国し、以後4回の在留期間更新許可を受けて在留していたところ、入管法違反(不法就労助長罪)により罰金30万円に処せられた。その結果、在留資格が取り消された。
在留資格を守るための予防策
1. 公的義務の確実な履行
納税義務や社会保険料納付などの公的義務を確実に履行しましょう。特に下記の点に注意が必要です。
- 住民税の納付(特に自営業者や会社による天引きがない場合は自分で納付)
- 国民健康保険料の納付
- 年金保険料の納付
- 税金の申告義務(収入がある場合)
予防策のポイント
納付書を紛失した場合や支払い方法がわからない場合は、市区町村の窓口に相談してください。分割納付など支払いが困難な場合の相談にも応じています。
2. 届出義務の厳格な遵守
下記の変更があった場合は、14日以内に必ず届出を行いましょう。
- 住所変更(市区町村役場と入国管理局に届出)
- 氏名、国籍・地域の変更(入国管理局に届出)
- 所属機関(企業・学校等)の変更(入国管理局に届出)
- 配偶者に関する届出(離婚・死別の場合)
予防策のポイント
在留カードは常に携帯し、届出は期限内に行うことが重要です。オンライン手続きも可能になっていますので、積極的に活用しましょう。
3. 在留資格に沿った活動の継続
自分の在留資格で認められている活動を着実に行い続けることが重要です。
- 就労系在留資格の場合:資格に対応する職務に就き、無職期間が長期化しないよう注意
- 留学の場合:授業への出席率維持(最低でも70%以上、できれば80%以上を目指す)
- 配偶者系在留資格の場合:実態を伴う婚姻関係の維持
予防策のポイント
転職や退職をする場合は、「就労資格証明書」の取得を検討しましょう。これにより、現在の在留資格で認められている活動範囲を明確にできます。
4. 資格外活動許可の範囲内での就労
特に留学生や家族滞在の方は、アルバイトなどの資格外活動を行う際に時間制限(原則週28時間以内)を厳守しましょう。
予防策のポイント
複数のアルバイト先で働く場合は、合計時間が週28時間を超えないように自己管理が必要です。休暇期間中でも1日8時間以内の就労に制限されていることを忘れないでください。
5. 法令遵守と良好な素行の維持
日本の法律や規則を守り、社会的に問題となる行為を避けましょう。交通違反(駐車違反を含む)も記録に残るため注意が必要です。
6. 書類の正確な準備と提出
在留期間更新や在留資格変更の申請時には、正確かつ誠実な情報提供を心がけましょう。虚偽の情報は発覚した場合に厳しく罰せられます。
予防策のポイント
不明点がある場合は、虚偽申告のリスクを避けるため、自己判断せずに入国管理局や専門家に相談することをお勧めします。
更新不許可・取消しの危機に直面した場合の対応
1. 更新不許可の通知を受けた場合
更新不許可の通知を受けた場合、まずは冷静に対応することが重要です。
- 不許可となった具体的な理由を確認する
- 在留期間が残っている場合は、その期間内に改善策を講じて再申請することを検討
- 問題点を改善するための具体的な行動(未納税金の支払い、適切な活動への復帰など)を早急に実施
- 専門家(行政書士など)に相談し、適切な対応策を検討する
2. 在留資格取消の意見聴取通知を受けた場合
在留資格を取り消される前に、入国審査官から意見聴取の通知があります。この段階での適切な対応が重要です。
- 指定された日時・場所に必ず出頭し、自分の状況を誠実に説明する
- 取消しの原因となる状況を改善したことを示す証拠書類を準備する
- 今後の改善計画を具体的に提示する
- 専門家に同行を依頼し、適切なサポートを受ける
重要な注意点
意見聴取の通知を無視すると、手続きが進められ在留資格が取り消される可能性が高まります。必ず対応しましょう。
3. 再申請の準備
更新不許可や取消しのリスクがある場合、再申請に向けた準備を行いましょう。
- 不許可や取消しの原因となった問題点を明確に把握し、改善する
- 必要な証拠書類(改善したことを示す書類)を収集する
- 場合によっては、一度出国して在留資格認定証明書交付申請からやり直すことも検討
- 理由書を作成し、問題が解決されたことを説明する
まとめ:専門家への早期相談の重要性
在留資格の更新不許可や取消しのリスクを抱えている場合、早期に専門家に相談することが非常に重要です。問題が深刻化する前に適切な対応をとることで、不許可や取消しのリスクを大幅に軽減できる可能性があります。
行政書士しかま事務所のサポート
当事務所では、在留資格に関する様々な問題に対応しています。特に以下のようなケースでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
- 在留期間更新や在留資格変更の申請準備
- 更新不許可や取消しのリスクがある場合の対応
- 届出義務や納税義務など、在留資格を維持するための適切な対応
- 意見聴取への対応や理由書の作成支援
私たちは外国人の方々が日本で安心して生活できるよう、専門的な知識と経験を活かしてサポートいたします。問題が深刻化する前に、まずはご相談ください。
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