技人国ビザ:学歴・専攻と職務内容の「関連性」とは?
行政書士しかま事務所
技人国ビザ:学歴・専攻と職務内容の「関連性」とは?
実務から徹底解説

目次
1. はじめに
こんにちは、行政書士しかま事務所です。当事務所では、外国人の在留資格に関する各種申請サポートを行っており、特に「技術・人文知識・国際業務」ビザ(通称:技人国ビザ)の申請実務に携わっております。
「採用したい外国人がいるが、その人の学歴と予定している業務が関連しているのか自信がない...」
「専門学校で学んだ内容が仕事に活かせると思うが、入管はそう判断してくれるだろうか?」
「関連性を示す書類は何を準備すればいいのか分からない...」
このような疑問や不安をお持ちの方は少なくありません。技人国ビザ申請において、「学歴・専攻と職務内容の関連性」は、許可・不許可を左右する最重要審査項目の一つです。しかし、この「関連性」の判断は実務上非常に難しく、多くの申請者や企業が直面する大きな課題となっています。
本記事では、行政書士として数多くの技人国ビザ申請を手がけてきた実務経験に基づき、この「関連性」の考え方、入管の審査ポイント、効果的な立証方法、そして注意すべき落とし穴を徹底解説いたします。
実務ポイント
技人国ビザの審査において「関連性」は、提出書類の内容や説明の仕方によって判断が分かれるケースが多々あります。ただ単に「関連している」と思うだけでなく、それを客観的かつ説得力を持って示すことが重要です。
2. なぜ「学歴・専攻と職務内容の関連性」がこれほど厳しく審査されるのか?

技人国ビザ(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)が定める就労可能な在留資格の一つです。この在留資格は、日本において専門的・技術的な分野で活躍する外国人材を受け入れるという制度趣旨があります。
入管法別表第一の二には、この在留資格に該当する活動として、
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」
と規定されています。つまり、専門的な技術や知識、または外国の文化に根差した特有の感性を活かした業務に従事することが前提なのです。
この「関連性」がこれほど厳しく審査される理由は主に以下の3点です
- 制度の趣旨維持:専門的・技術的分野での外国人受入れという制度趣旨を守るため
- 単純労働との区別:単純労働目的の入国・就労を防ぐため(技人国ビザは単純労働を対象としていない)
- 偽装申請の防止:実際には専門性と無関係な業務に従事させる目的での偽装申請を防ぐため
注意点
入国管理局(以下「入管」)の審査官は、提出された書類から「この外国人は本当に専門的な知識・技術を活かす業務に従事するのか」を判断します。学んだ内容と業務内容の間に合理的な関連性が示されないと、制度の濫用や偽装の疑いがあるとみなされるリスクがあります。
近年、入管は「関連性」の審査をより厳格化する傾向にあります。特に、専門学校を卒業した留学生の就職ビザ申請については、非常に厳しい目で審査されることが実務上確認されています。
3. 「関連性」判断の基準:学歴別の詳細な実務ポイント
「関連性」の判断基準は申請者の学歴によって大きく異なります。ここでは、学歴別に具体的な判断基準と実務ポイントを解説します。
3.1 大学卒業(学士・修士・博士)の場合
大学を卒業した外国人の場合、専攻分野と職務内容の関連性については、比較的柔軟に判断される傾向があります。これは、大学教育が「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」(学校教育法第83条)を目的としているという性格に基づいています。
実務ポイント:大学卒の関連性判断
- 学部・学科名だけでなく、具体的な履修科目内容が重要
- 卒業論文や研究テーマと業務の関連性も有効な立証材料
- 専攻の知識やスキルが仕事のどの部分で具体的に活かされるかを明確に
- 文系学部の場合、幅広い分野の業務との関連性が認められやすい
ケーススタディ:大学卒の関連性判断例
関連性が認められやすい例
- 経済学部卒業 → 金融機関での経済分析業務
- 商学部マーケティング専攻 → 企画・マーケティング部門
- 理工学部情報工学科 → ITエンジニア
- 外国語学部英語学科 → 国際営業・貿易実務
- 社会学部メディア専攻 → 広報・PR業務
関連性の説明が難しい例
- 文学部歴史学科 → プログラマー(IT関連科目履修なし)
- 芸術学部音楽学科 → 経理・財務(関連科目履修なし)
- 理学部物理学科 → 翻訳業務(語学力の証明なし)
- 経済学部 → 機械設計技術者(専門知識なし)
※難しい例でも、大学で関連科目を相当数履修していた、あるいは卒業後に関連分野の実務経験がある場合などは、適切な説明と資料により関連性を認めてもらえる可能性があります。
3.2 日本の専門学校卒業(「専門士」「高度専門士」の称号)の場合
専門学校卒業者の場合、大学卒業者に比べて専攻と職務内容の関連性がより厳格に審査される傾向があります。これは、専門学校が「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」(学校教育法第124条)を目的としており、より特定の専門分野に特化した教育を行う機関だからです。
注意点:専門学校卒の厳格審査
専門学校卒業者は、専攻した内容と直接的かつ具体的に関連する業務でなければ、原則として「技人国」ビザが許可されません。「修得した技術・知識」と「実際に携わる業務」の間に明確かつ直接的な関連性が必要です。
また、専門学校卒業者が技人国ビザを申請する場合、以下の追加要件も満たす必要があります
- 専門士または高度専門士の称号取得が必要(平成6年文部省告示第84号に基づく)
- 修了した専門課程の教育内容と就職先での業務内容に相当程度の関連性がなければならない
実務ポイント:専門学校卒の関連性立証
- カリキュラムの詳細(シラバス)と職務内容を一つ一つ対応付けて説明
- 学んだ専門技術・知識・ソフトウェア等が実際の業務でどう使われるかを具体的に
- 卒業制作や実習内容と業務の関連性を示す
- 専門学校での学びが業務上不可欠である理由を明確に
ケーススタディ:専門学校卒の関連性判断例
関連性が認められやすい例
- IT専門学校(Java開発コース)→ Javaプログラマー
- デザイン専門学校(グラフィックデザイン科)→ ウェブデザイナー
- ビジネス専門学校(国際ビジネス科)→ 貿易事務
- 観光専門学校(ホテル科)→ インバウンド対応ホテルの宿泊予約管理
関連性が認められにくい例
- IT専門学校(プログラミングコース)→ 営業職
- 調理師専門学校 → レストランホールスタッフ
- 経理専門学校 → 一般事務
- 日本語専門学校 → スーパーの商品管理
※一部の専門学校では「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」として文部科学大臣の認定を受けた学科があります。そのような認定学科を修了した場合は、関連性の判断がより柔軟になる可能性があります。
3.3 学歴ではなく実務経験で申請する場合
「技人国」ビザは、必要な学歴(大学卒業または専門学校卒業)がない場合でも、十分な実務経験があれば申請可能です。ただし、その場合も「関連性」は重要な審査ポイントとなります。
実務経験要件
- 「技術・人文知識」分野: 10年以上の実務経験
- 「国際業務」分野: 3年以上の実務経験
※大学卒業者が翻訳・通訳・語学指導に従事する場合は実務経験不要
実務ポイント:実務経験による関連性立証
- 過去の職務経歴を詳細かつ正確に証明する書類が必須
- 過去に従事していた業務と、日本で従事する予定の業務の関連性を明確に説明
- 実務で培った専門性のレベルが、日本での予定職務に適合していることを示す
- 職務経歴証明書には、具体的な業務内容、使用していた技術・知識、期間などを詳細に記載
注意点:実務経験の証明
実務経験を証明する書類(在職証明書等)は、単なる在籍期間だけでなく、具体的にどのような専門的業務に従事していたかが明確に記載されていることが重要です。また、書類の真実性を疑われないよう、公的機関による証明や会社の公印など、信頼性を高める工夫も必要です。
4. 「関連性」を効果的に立証するための書類作成術と補足資料
「学歴・専攻と職務内容の関連性」を入管に説得力を持って示すためには、適切な書類作成と補足資料の準備が不可欠です。申請人側と受入れ企業側、それぞれの視点から効果的な立証方法を解説します。
4.1 申請人(外国人本人)側
理由書・申立書(自己作成)
申請人自身が、学んできた専門知識・技術と、これから従事する業務との関連性を自分の言葉で説明するための書類です。
記載すべき内容
- 大学・専門学校で学んだ専門分野の詳細
- 主要な履修科目と習得した知識・技術
- 研究テーマ、卒業論文・制作の内容
- それらが新しい職場でどのように活かせるか
- なぜその会社・職種を選んだのか
有効な補足資料
- 履修科目一覧・シラバス: 学んだ科目の詳細内容がわかる資料
- 卒業論文・研究テーマの要旨: 専門性を示す資料
- ポートフォリオ: デザイナー等の場合の作品集
- 資格・検定証明書: 専門性を裏付ける資格
- 推薦状: 指導教員等からの推薦状
実務ポイント:申請人側の書類作成
- 単なる「やりたい」「興味がある」という熱意だけでなく、客観的事実に基づく説明を
- 学んだ内容を具体的かつ詳細に記載(例:「プログラミング」ではなく「Java、Python、SQLを用いたウェブアプリケーション開発」など)
- 専門用語は適切に使用し、専門性をアピール
- 書類は論理的な構成で、読み手(審査官)が理解しやすいように
4.2 受入れ企業(採用企業)側
採用理由書【最重要書類】
なぜその外国人を採用する必要があるのか、その専門性をどう活かすのかを説明する最重要書類です。
記載すべき内容
- 外国人を採用する必要性・背景
- 採用者の学歴・専攻と業務の関連性
- 具体的にどのような専門知識・技術を活かす業務か
- その外国人の専門性が会社にとってなぜ有益か
- なぜ日本人ではなくその外国人なのか
職務内容説明書
具体的な業務内容を詳細に説明し、専門性を要する職務であることを示す書類です。
記載すべき内容
- 職務内容の詳細(具体的かつ明確に)
- 使用する専門知識・技術・ツール
- 担当する業務の責任範囲・レベル
- 業務の中で専門性が要求される部分
- チーム内での役割・位置づけ
その他の有効な補足資料
- 組織図: 採用者の配置予定部署と役割が分かる資料
- 事業計画書: 外国人採用と関連する事業展開の説明
- 社内の同様職種の日本人社員の学歴・経歴: 同等の専門性が求められることの証明
- 業務マニュアル等: 業務の専門性を示す資料
注意点:企業側の書類作成
職務内容は具体的かつ詳細に記載し、単純労働的要素が多い印象を与えないよう注意してください。「一般事務」「営業補助」「接客」などの表現は、単純労働と解釈されるリスクがあります。専門性を要する部分を強調し、学歴との関連性が明確になるよう工夫しましょう。
実務ポイント:説得力のある採用理由書の例
【良い例】中国市場に事業展開するIT企業の場合
「当社はFintech関連のシステム開発を行っており、現在中国市場向けのサービス展開を進めています。申請人は中国の○○大学コンピュータサイエンス学部を卒業し、特にJava言語によるシステム開発と中国の金融システムについて研究しており、卒業論文でも『中国のモバイル決済システムの技術的特徴と課題』をテーマとしていました。当社が開発中の中国向けモバイル決済システムでは、まさに申請人が習得したJavaプログラミングスキルと中国金融システムの知識が直接活かせるものであり、言語面(中国語・日本語・英語が堪能)でも開発チームと中国現地パートナーとの橋渡し役として大きな貢献が期待できます。日本人社員では、同等の専門性と語学力を兼ね備えた人材の確保が困難であるため、申請人の採用は当社の事業拡大に不可欠です。」
5. 実務上よくある「関連性」に関する落とし穴と不許可事例の傾向
「関連性」の立証において、実務上よく見られる落とし穴や不許可につながりやすいケースを解説します。これらを理解し、事前に対策を立てることで、申請の成功率を高めることができます。
よくある不許可理由
- 単純労働の疑い: 職務内容が「誰でもできる」と判断される単純・補助的業務の比率が高い
- 専門性レベルの乖離: 専攻と職務内容が名称上は似ていても、求められる専門性のレベルや具体的なスキルセットが大きく異なる
- 採用意図の疑義: 企業側の「人手不足だから誰でもいい」という採用意図が見え隠れし、専門性活用の説明が希薄
- 技術的ミスマッチ: 専門学校で学んだ技術と、実際の業務で使用するツールや技術が全く異なる
- 書類間の矛盾: 提出書類間(求人票、雇用契約書、採用理由書等)で職務内容の記載に一貫性がない
実務上の落とし穴と対策
①職務内容の曖昧な記載
対策:職務内容は具体的に記載し、専門性を要する部分を明確に示すこと。「一般事務」ではなく「財務データ分析と経営報告書作成」など。
②関連性の「思い込み」
対策:「関連している」と思うだけでなく、客観的な視点で具体的に説明できるか確認すること。
③書類間の不整合
対策:雇用契約書、採用理由書、職務内容説明書など、全ての書類で記載内容に一貫性を持たせること。
④専門性の過大・過小評価
対策:学歴で習得した知識・技術と、実際に従事する業務で必要な専門性のレベルが適合しているか確認すること。
実際の不許可事例分析
事例①:経営学専攻 → 営業職
商学部経営学専攻の大卒者が、商社の営業職として申請。一見関連性がありそうだが、「営業職」の記載が具体性に欠け、「接客・電話対応・事務作業」などの単純業務が多いように見える記載だったため不許可に。
教訓
「営業」でも「市場分析」「経営戦略に基づく提案」など専門性を示す説明が重要。
事例②:IT専門学校 → システム開発
IT専門学校を卒業した学生がシステム開発会社に就職。一見、関連性は明確だが、学校ではC言語を主に学び、会社ではJavaを使用。技術の違いを説明せずに申請したため、「専門性の転用」について疑義が生じ不許可に。
教訓
プログラミング言語が違っても、基礎知識や考え方は共通する点を具体的に説明すべき。
事例③:デザイン専門学校 → 一般事務
デザイン専門学校卒業者がデザイン事務所の「一般事務」として申請。書類上は「デザイン事務所」という関連性を強調したが、実際の業務内容は「来客対応・電話応対・書類作成」などの一般事務で、専門性との関連が薄く不許可に。
教訓
同じ業界でも、職種によっては専門性との関連性が認められないことがある。
実務ポイント:事前チェックリスト
申請前に以下のチェックリストで関連性の立証が十分かを確認しましょう
- 学んだ専門知識・技術と職務内容の関連性を具体的かつ論理的に説明できるか
- 職務内容に専門性を要する業務が十分含まれているか
- すべての提出書類で職務内容の記載に一貫性があるか
- 採用理由書で外国人を採用する必然性が説得力を持って説明されているか
- 証明書類(学歴証明、職歴証明等)に不備がないか
6. まとめ
技人国ビザ申請における「学歴・専攻と職務内容の関連性」の立証は、入管審査の核心であり、最も緻密な準備と説明が求められる部分です。
この関連性は、単に「似ている」というだけでは足りず、具体的かつ論理的な説明と、それを裏付ける適切な書類が必要です。特に、専門学校卒業者の場合は、大学卒業者に比べてより厳格に審査される傾向があることを忘れないでください。
申請人と受入れ企業が緊密に連携し、客観的な資料と論理的かつ具体的な説明をもって、この関連性を明確に示すことが許可への道です。
「関連性があるだろう」という自己判断は危険です。特に判断が難しいケースや重要な申請では、専門家の客観的な評価とアドバイスを求めることをお勧めします。
「関連性」立証のポイント(申請人側)
- 学習内容と職務を具体的に対応付ける
- 履修科目・研究テーマ等の詳細を示す
- 専門性を証明する補足資料を準備
- 理由書で自分の言葉で関連性を説明
- 書類間の一貫性を確保
「関連性」立証のポイント(企業側)
- 職務内容を具体的かつ専門的に記述
- 採用理由書で必然性と専門性を説得的に説明
- 単純労働的要素が主体でないことを明確に
- 採用者の専門性が企業にとって有益である理由を示す
- 日本人ではなくその外国人が必要な理由を説明
7. 行政書士しかま事務所に相談するメリット
「学歴・専攻と職務内容の関連性」の判断は、技人国ビザ申請において最も難しく、かつ重要な部分です。特に以下のようなケースでは、専門家への相談をお勧めします
こんな方は専門家へのご相談を
- 専攻と業務内容の関連性が明確でない・説明が難しい場合
- 専門学校卒業で「専門士」「高度専門士」の称号について不明点がある場合
- 学歴ではなく実務経験での申請を検討している場合
- 過去に同様の申請で不許可になった経験がある場合
- 採用企業が小規模・新設企業である場合
- 職務内容に幅広い業務が含まれる場合
専門家に相談するメリット
- 客観的な関連性の判断: 専門家の視点から申請内容の適切性を評価
- 効果的な立証戦略: 個別ケースに合わせた最適な書類作成・説明方法の提案
- 最新の審査傾向の把握: 実務経験に基づく最新の入管審査傾向の情報提供
- 不備・矛盾点の事前発見: 書類間の不整合や不足書類の指摘
- 説得力のある書類作成: 理由書・採用理由書等の効果的な作成支援
- 申請全体のコーディネート: 準備から申請までの一貫したサポート
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