留学生の就職ビザ取得ガイド:「技人国」ビザ申請の流れと必要書類
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留学生の就職ビザ取得ガイド:「技人国」ビザ申請の流れと必要書類
日本の大学や専門学校等で学んだ留学生が卒業後も日本においてその知識やスキルを活かして就労したいという希望は多くあります。そのためには「留学」から就労可能な在留資格への変更手続きが必要となり、特に留学生が最も一般的に申請する在留資格が「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」)です。
本稿では、行政書士として多くの留学生の就労ビザ申請をサポートしてきた実務経験を踏まえ、「技人国」ビザへの変更申請の流れと必要書類、そして特に重要な審査ポイントについて解説します。また、2025年の入管法施行規則および出入国在留管理庁が公表している審査ガイドラインの最新情報に基づいた内容となっています。
目次
1. 在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の法的位置づけと定義
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第一の二に規定される就労可能な在留資格の一つです。法令上は以下のように定義されています。
入管法別表第一の二「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(別表第一の一の表の教授、芸術、報道の項、二の表の経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行の項に掲げる活動を除く。)」
この定義から、「技人国」ビザで認められる活動は、大きく以下の3つの区分に分類されます
1.1 「技術」に該当する業務の範囲
理学、工学、その他自然科学の分野に属する技術または知識を要する業務です。具体的には、以下のような職種が該当します。
- ITエンジニア(システム開発、プログラミング、ネットワーク管理等)
- 機械・電気・電子工学系の設計・開発技術者
- 建築・土木関連の技術者
- バイオテクノロジー、化学、物理学等の研究・開発職
- データサイエンティスト、AI開発者
1.2 「人文知識」に該当する業務の範囲
法律学、経済学、社会学その他人文科学の分野に属する知識を要する業務です。代表的な職種には以下が含まれます。
- 企画・マーケティング
- 経理・財務
- 法務・知的財産管理
- 経営コンサルタント
- 証券アナリスト
- 人事・労務管理
1.3 「国際業務」に該当する業務の範囲
外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務です。該当する代表的な職種は以下の通りです。
- 翻訳・通訳
- 海外マーケティング・国際営業
- 貿易業務・国際取引
- 外国語による広報・宣伝
- 外国をターゲットとしたデザイナー(服飾、工業、インテリア等)
重要な留意点
「技人国」ビザでは、いわゆる「単純労働」(特別な技術や知識を必要としない作業)は認められません。以下のような業務は原則として対象外です
- 製造ラインでの単純な組立・検品作業
- 清掃・警備
- 店舗スタッフ(接客・販売・調理等)
- 配送・倉庫作業員
- 一般事務(単純な入力・ファイリング等)
1.4 最近の法令解釈の動向
2024年3月に出入国在留管理庁から発表された「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(令和6年2月29日一部改正通達)においては、上記3区分の職種の判断基準がより明確化されています。特に注目すべき点として、専門的・技術的な業務内容における実質的判断の重要性が強調されており、単に職種名や社内での肩書のみではなく、実際に行う業務内容の実質によって判断するという姿勢が明確にされています。
2. 留学生が「技人国」ビザを取得するための法定要件
留学生が「技人国」ビザを取得するためには、入管法上の要件と出入国在留管理庁が定める上陸許可基準に適合する必要があります。以下、主要な要件について詳述します。
2.1 学歴要件(法務省令第六条:上陸許可基準)
「技術・人文知識」分野の業務に従事するためには、原則として以下のいずれかの学歴が必要です
- 日本の大学(4年制)卒業(学士取得)
- 日本の短期大学(2年制)卒業
- 日本の専門学校専門課程修了(専門士又は高度専門士の称号取得)
- 海外の大学卒業(日本の大学と同等以上と認められるもの)
実務上の重要知識
学歴要件については、2024年3月28日の法務省告示において、一部緩和措置が導入されました。具体的には、日本の高等専門学校の専攻科、短期大学の専攻科、および大学編入により学位を取得した場合などにおいても、その修学期間を学歴と捉える旨が明示されました。これにより、例えば国内外の大学を中退した場合でも、修学期間と後述する実務経験を組み合わせることで要件を満たす可能性が広がっています。
2.2 職務内容との関連性【最重要審査ポイント】
採用される企業での職務内容が、大学等での専攻科目や履修内容と密接に関連している必要があります。これは、出入国在留管理庁の審査において最も重視されるポイントの一つです。
2.2.1 大学/短大卒業の場合の関連性判断
大学や短期大学の場合、学校教育法第83条において「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」を目的としていることから、専攻と業務の関連性は比較的柔軟に判断される傾向にあります。
例えば、経済学部卒業者が企画・マーケティング・経理・財務などの業務に就く場合、直接的な専攻と業務の関連性が認められやすい状況です。また、文学部卒業者がその言語能力を活かして国際業務に従事するケースなども、一般的に許容されています。
2.2.2 専門学校卒業の場合の関連性判断
一方、専門学校の場合、学校教育法第124条において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」を目的としていることから、専門的技術の習得に特化した教育機関として位置づけられています。そのため、原則として専攻科目と従事しようとする業務との間に「相当程度の関連性」が必要とされます。
ただし、以下のケースでは関連性の判断がより柔軟に行われることがあります
- 外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定学科修了者:文部科学大臣が認定した特定のプログラムを修了した場合、関連性判断が緩和されます。
- 履修科目全体での判断:直接的な専攻科目と認められなくても、履修した科目全体を見て、従事しようとする業務に必要な知識を習得したと認められる場合は、総合的に判断されます。
- 実務経験による補完:専門学校卒業後、専攻と関連性が認められた業務に3年程度従事した経験がある場合、その後の職種変更時に新しい業務との関連性についても柔軟に判断されることがあります。
実例:IT専門学校卒業者のケース
IT専門学校を卒業した留学生がシステム開発会社に就職するケースでは、プログラミングやシステム設計等を専攻した場合、その知識・技術を直接活かせる業務内容であれば関連性は高いと判断されます。しかし、同じIT専門学校卒業者が、例えばIT知識とは関係が薄い営業職や一般事務職として採用される場合は、関連性が低いと判断される可能性が高くなります。
2.3 実務経験要件(法務省令第六条:上陸許可基準)
学歴要件を満たさない場合でも、「10年以上の実務経験」があれば「技術・人文知識」分野の業務に従事することが可能です。
- この実務経験には、大学等で関連科目を専攻した期間も含めることができます。
- 実務経験は必ずしも「技人国」に該当する業務経験だけではなく、関連する業務に従事した期間も認められます。
- 複数の職場での実務経験を合算することも可能です。
一方、「国際業務」分野の業務(翻訳・通訳、語学指導など)に従事する場合は、当該業務に関連する業務について「3年以上の実務経験」が必要です。ただし、大学卒業者が翻訳、通訳、語学指導に従事する場合は、この実務経験要件は課されません。
2.4 採用企業(受入れ機関)側の要件
採用する企業側にも、以下の要件が課されています
- 事業の安定性・継続性:財政状況、事業実績、事業計画等から判断されます。
- 事業内容の適法性:法令を遵守した事業運営がなされていることが必要です。
- 外国人雇用の必要性:当該外国人を雇用する合理的理由と業務上の必要性が求められます。
- 雇用管理体制:適切な労働条件の確保、社会保険の加入、所得税等の源泉徴収などの体制が整っていることが必要です。
2.5 報酬要件(法務省令第六条:上陸許可基準)
日本人が同等の業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが必要です。この「同等額以上」の判断は、同業種・同職種・同地域における平均賃金等を参考に審査されます。
2025年現在の実務上の目安としては、初任給で月額20万円程度以上が一つの基準となっていますが、地域や業種によって異なります。特に地方都市では、その地域の賃金水準に応じた判断がなされる傾向にあります。
3. 申請プロセス:「在留資格変更許可申請」の具体的手続き
3.1 申請のタイミングと法的期限
在留資格変更許可申請は、現在の在留資格の期間内に行う必要があります。留学生の場合、以下のタイミングが一般的です
- 卒業前の申請:学校を卒業する約3ヶ月前から申請可能です。例えば、2026年3月卒業予定の場合、2025年12月頃から申請を開始できます。
- 卒業後の申請:卒業後も「留学」の在留期間が残っている場合は、その期間内に申請することができます。
- 特定活動(就職活動)からの変更:就職活動のための「特定活動」ビザを取得している場合、内定を得た時点で「技人国」ビザへの変更申請が可能です。
法的注意点
在留期限を超過してからの申請は、入管法第22条の4に基づく「在留資格取消事由」に該当する可能性があります。また、卒業後に「留学」のまま就労活動を行うことは「資格外活動」として入管法第73条の2に基づく罰則の対象となりますので、適切なタイミングでの申請手続きが重要です。
3.2 申請窓口
申請は、申請人(留学生)の住居地を管轄する地方出入国在留管理局または出張所で行います。2025年現在、全国に8つの地方出入国在留管理局と約61の出張所があります。
申請の提出方法は以下の3つがあります
- 申請人本人による提出:申請人(留学生)自身が直接申請する方法
- 申請取次による提出:行政書士などの申請取次者に依頼する方法
- オンライン申請:2023年から拡充された在留申請オンラインシステムを利用する方法
特に「申請取次」は行政書士法第1条の3に基づいた業務であり、行政書士に依頼することで申請人本人が入管に出向く必要がなくなるメリットがあります。
3.3 標準処理期間と審査プロセス
在留資格変更許可申請の標準処理期間は、通常2週間~3ヶ月程度です。ただし、時期(特に3月卒業シーズン)や個別事案の複雑さにより大きく変動することがあります。
審査プロセスは以下の通りです
- 形式審査:提出書類の不備や記載漏れがないかの確認
- 実質審査:申請内容の適法性・妥当性の審査
- 追加資料要求:必要に応じて追加の説明資料を求められることがあります
- 結果通知:審査結果の通知
審査の過程で入管調査官から申請人や受入企業に対して電話等による事実確認が行われることがあります。この際、申請書類の内容と説明に齟齬があると不許可につながる可能性が高まりますので注意が必要です。
3.4 許可後の手続き
申請が許可された場合、申請人の住所に「在留資格変更許可通知書」がハガキで送付されます。この通知を受けた後、以下の手続きが必要です
- 許可通知書、パスポート、現在の在留カードを持って入国管理局に出向く
- 新しい在留カード(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が記載されたもの)を受け取る
- 市区町村役場で住民登録内容の変更手続き(在留資格が変わったため)
- 健康保険・年金等の手続き(会社に就職する場合は社会保険に加入)
3.5 不許可時の対応
不許可となった場合、「不許可通知書」が交付されます。不許可理由は具体的に記載されないのが一般的ですが、以下の対応が考えられます
- 不許可理由開示請求:行政手続法第8条に基づき、不許可理由の開示を請求することができます
- 再申請:不許可理由を踏まえて不足書類を補完するなどして再申請する
- 異議申出:行政不服審査法に基づく異議申出を行う(実務上はあまり認められないケースが多い)
- 帰国:在留期限までに出国する
不許可となった場合は、速やかに専門家(行政書士・弁護士等)に相談することをお勧めします。
4. 申請に必要な書類と作成上の留意点
在留資格変更許可申請には多数の書類が必要です。申請人(留学生)側と採用企業側の両方で準備する必要があります。
4.1 申請人(留学生)側で準備する主な書類
書類名 | 要件・留意点 |
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在留資格変更許可申請書 |
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写真(縦4cm×横3cm) |
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パスポート及び在留カード | 原本を提示(申請取次の場合はコピーも必要) |
卒業証明書または卒業見込証明書 |
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成績証明書 |
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履歴書 |
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専門学校卒業の場合は、以下の追加書類も必要です
- 専門士または高度専門士の称号証明書:専門学校発行のもの
- カリキュラム説明資料:学校の授業内容や取得できる技能を説明する資料
- 専攻と業務の関連性説明書:本人作成の説明書(学校での学びと就職先での業務の関連性を具体的に説明)
- 外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定学科修了証明書(該当する場合)
4.2 受入れ企業(採用企業)側で準備する主な書類
書類名 | 要件・留意点 |
---|---|
会社の登記事項証明書 | 発行3ヶ月以内のもの(法務局で取得) |
決算報告書 |
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会社案内・事業内容説明資料 |
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雇用契約書(または労働条件通知書) |
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採用理由書 |
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法定調書合計表 |
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従業員数・外国人雇用状況 |
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実務上の重要知識
2024年から、企業規模によって提出書類が簡素化されるカテゴリー制度が導入されています。上場企業(カテゴリー1)や、前年の源泉徴収税額が1,000万円以上ある企業(カテゴリー2)などは、一部書類の提出が免除されています。詳細は出入国在留管理庁のホームページで確認するか、専門家に相談することをお勧めします。
4.3 書類作成上の重要ポイント
4.3.1 業務内容の記載
「技人国」ビザの審査において最も重視されるのが「業務内容」の記載です。以下の点に注意して記載することが重要です
- 具体性:抽象的な記載ではなく、具体的な業務内容を記載する
- 専門性:単純作業ではなく、専門的・技術的要素を明確に示す
- 関連性:学歴・専攻との関連性が明確に理解できるように記載する
- 一貫性:申請書、雇用契約書、採用理由書などで業務内容の記載に一貫性を持たせる
業務内容の記載例(良い例・悪い例)
【悪い例】「営業業務」「システム開発」「翻訳業務」
【良い例】「主に中国市場向け製品の市場調査分析、マーケティング戦略立案、および中国企業との商談・技術折衝業務」「Javaを用いたWeb系バックエンドシステムの設計・開発、およびAI技術を活用したデータ分析機能の実装」「日本語⇔英語の技術マニュアル翻訳、および外国人技術者向け研修資料の作成」
4.3.2 採用理由書の作成
採用理由書は審査において重要視される書類の一つです。以下の点を含めて作成することをお勧めします
- 当該外国人を採用する具体的な理由
- 業務上必要となる専門的な知識・技術と、申請人の学歴・経歴との関連性
- 外国人材でなければならない理由(言語能力、国際的視点など)
- 採用により期待される会社への貢献
- 今後のキャリアパス・育成計画
4.3.3 申請書類作成上の留意点
- 正確性:記載事項(特に氏名、生年月日、学歴、職歴等)に誤りがないこと
- 整合性:全ての提出書類間で記載内容に矛盾がないこと
- 明瞭性:記載内容が明確で理解しやすいこと
- 網羅性:必要書類に漏れがないこと
5. 2025年における審査基準の変更点と実務への影響
2025年の「技人国」ビザに関する審査基準や運用には、以下のような変更点や重要な傾向が見られます。
5.1 専門学校卒業者に対する審査基準の緩和
2024年3月に施行された法務省告示により、一部の専門学校卒業者に対する審査基準が緩和されました。2025年現在も継続適用されており、以下の点が重要です
- 外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定学科修了者:文部科学大臣が認定した特定のプログラムを修了した場合、学歴と職務の関連性判断が従来よりも柔軟になりました。
- ファッションデザイン関連教育機関:特定のファッションデザイン教育機関の修了者については、専門士・高度専門士の称号がなくても申請が可能になりました。
5.2 デジタル人材に対する優遇措置
2025年のデジタル社会推進政策の一環として、IT・デジタル分野の人材については審査において一定の優遇措置が見られます
- 情報処理技術者試験合格者:一定のIT関連資格保持者については、学歴要件を満たさない場合でも「技人国」ビザの取得が可能となる特例措置が継続しています。
- DX人材:デジタルトランスフォーメーション関連業務に従事する場合、専攻と職務の関連性判断が柔軟化しています。
5.3 地方創生特例措置
2025年の地方創生政策の一環として、地方における外国人材の受入れを促進するための特例措置が適用されています
- 地方創生特区における特例:特定の地域では、通常より要件が緩和された審査基準が適用される場合があります。
- 地方企業への就職:東京圏以外の地方企業への就職の場合、特に中小企業においては審査が柔軟に行われる傾向があります。
5.4 審査実務における傾向
2025年における審査実務では、以下のような傾向が強まっています
- 実質的な業務内容の精査:職種名や肩書ではなく、実際に行う業務内容の実質に基づいた審査が厳格化しています。
- 就労条件の適正性:給与額や労働条件の適正性がより重視されるようになっています。最低賃金法の遵守だけでなく、同等の日本人労働者との均衡を考慮した報酬設定が求められます。
- 小規模企業の審査強化:小規模企業や新設企業の場合、経営の安定性や外国人雇用の必要性について、より詳細な説明を求められる傾向があります。
実務上の注意点
2025年の審査実務では、オンラインシステムの普及に伴い、過去の申請履歴や資格外活動違反歴の確認がより容易になっています。過去に違反歴がある場合は、その経緯と改善状況について明確な説明が必要になることがあります。また、留学期間中の学業成績や出席率についても、履歴確認の一環として審査されることがあります。
6. 留学生特有の注意点と不許可事例分析
留学生が「技人国」ビザへの変更申請を行う際に特に注意すべき点と、実際の不許可事例について分析します。
6.1 学歴・専攻と職務内容の関連性不足
最も多い不許可理由の一つが、学歴・専攻と職務内容の関連性が十分に立証できていないケースです。
不許可事例:専攻と業務の不一致
経営学を専攻した留学生がIT企業でプログラマーとして就職しようとしたケース。履修科目にプログラミングやシステム開発に関する科目がほとんどなく、専攻と業務の関連性が認められませんでした。
対策:就職先の業務は専攻と関連性のある職種を選ぶことが基本です。どうしても希望する場合は、その業務に関連する副専攻や選択科目の履修実績、独学での資格取得などの補完要素を示すことが必要です。
6.2 在学中の出席率・学業成績不良
留学の本来の目的である「学業」に真摯に取り組んでいたかどうかも、間接的に審査に影響します。
不許可事例:学業不振
留学期間中の出席率が著しく低く、成績も不良であった留学生のケース。申請時に提出された成績証明書で多数の「不可」評価があり、在学中の就学状況に問題があると判断されました。
対策:留学期間中は学業に真摯に取り組み、適切な出席率と成績を維持することが重要です。特に低年次の成績不振があった場合は、その後の改善状況を示す追加資料(学校からの所見等)を用意することが有効な場合もあります。
6.3 資格外活動違反(オーバーワーク)
留学生のアルバイト時間制限(週28時間以内)を超えて働くことは「資格外活動違反」として、入管法第73条の2に基づく罰則対象となります。
不許可事例:恒常的な時間超過
複数のアルバイト先で働き、恒常的に週40時間以上働いていたことが発覚した留学生のケース。入管調査による勤務先への照会で違反が判明し、不許可となりました。
対策:留学中は資格外活動許可の範囲内(週28時間以内)でアルバイトを行うことが絶対条件です。複数のアルバイト先で働く場合も、合計時間が制限を超えないよう厳格に管理することが必要です。
6.4 採用企業の経営状態・事業実態
採用企業の経営状態や事業実態も重要な審査ポイントです。特に小規模企業や新設企業の場合は注意が必要です。
不許可事例:経営不振企業
連続赤字で債務超過状態の小規模企業に就職しようとした留学生のケース。会社の財務状況から安定的な雇用継続性に疑義があるとして不許可となりました。
対策:採用企業選びの段階で、会社の経営状態や規模、実績などを確認することが重要です。小規模企業や赤字企業の場合は、今後の事業計画や回復見込みなど、経営の安定性・継続性を示す追加資料の提出が有効です。
6.5 報酬額の妥当性
提示された給与額が同業種・同職種・同地域の日本人の賃金水準と比較して著しく低い場合、不許可になるリスクがあります。
不許可事例:低賃金雇用
ITエンジニアとして月給15万円という低賃金での雇用契約を結んだ留学生のケース。同業種・同地域の標準的な賃金水準(初任給で22万円程度)を大きく下回るとして不許可となりました。
対策:雇用契約時には、同業種・同職種の標準的な賃金水準を参考に、適正な給与額を設定することが重要です。特に、最低賃金ギリギリの設定や、同等の日本人社員より著しく低い賃金設定は避けるべきです。
6.6 申請書類の不備・矛盾
提出書類の不備や記載内容の矛盾・不整合も、不許可につながる重要な要因です。
不許可事例:書類間の矛盾
申請書に記載された業務内容と、雇用契約書や採用理由書に記載された業務内容に大きな相違があるケース。入管調査官の電話確認で説明と書類の内容が一致せず、不許可となりました。
対策:全ての提出書類間で記載内容の整合性を確保することが重要です。特に業務内容や雇用条件など重要事項については、申請書、雇用契約書、採用理由書など複数書類間で一貫した記載を心がけてください。
6.7 申請プロセスの不適切な処理
申請のタイミングや手続きの不適切な処理も問題となることがあります。
不許可事例:在留期限切れ後の申請
留学ビザの期限切れ後に「技人国」ビザへの変更申請を行ったケース。適法な在留期間内に申請しなかったことで不法残留状態となり、不許可となりました。
対策:在留期限切れの前に必ず申請を行うことが絶対条件です。在留期限が近づいている場合は、少なくとも期限の1ヶ月前には申請することをお勧めします。
7. まとめ:成功するビザ申請のためのポイント
留学生が「技人国」ビザを取得するための重要なポイントを以下にまとめます。
7.1 申請成功のための5つの核心ポイント
- 専攻と職務内容の明確な関連性の証明
自身の学歴・専攻と就職先での職務内容との関連性を具体的かつ説得力をもって説明できる資料を準備することが最重要です。特に専門学校卒業者は、専攻内容と業務の高い関連性が求められます。
- 具体的かつ専門的な業務内容の明示
「営業」「事務」などの抽象的な業務内容ではなく、具体的にどのような専門的・技術的要素を含む業務に従事するのかを明確に示すことが重要です。
- 適正な労働条件の確保
日本人と同等以上の報酬額、合理的な労働時間・休日設定など、適正な労働条件が保障されていることを示す必要があります。
- 留学中の素行と学業成績
留学期間中の適切な出席率維持、学業への真摯な取り組み、資格外活動(アルバイト)制限の遵守など、「留学」の本来目的に沿った活動実績が重要です。
- 採用企業の安定性と雇用の必要性
採用企業の経営状態の安定性、当該外国人を雇用する具体的な必要性、適切な労務管理体制の整備などが求められます。
7.2 申請準備のプロセス
「技人国」ビザ申請を成功させるためには、計画的な準備が重要です。以下の手順で申請準備を進めることをお勧めします
- 情報収集と自己評価:自身の学歴・専攻と希望職種の関連性、資格外活動歴などを客観的に評価する
- 就職活動時の配慮:専攻と関連性の高い職種・企業を選ぶ
- 内定後の早期相談:内定後、専門家(行政書士等)に早めに相談する
- 必要書類の計画的準備:申請人側・企業側双方で必要書類を計画的に準備する
- 申請内容の一貫性確保:全ての書類で記載内容の整合性を確保する
- 余裕を持った申請スケジュール:在留期限に十分な余裕を持って申請する
7.3 申請後の対応
申請後も以下の点に注意することが重要です
- 入管からの連絡への即応:追加資料の要求や電話確認があった場合は迅速かつ正確に対応する
- 現在の在留資格の活動制限遵守:審査中も「留学」の在留資格の制限(週28時間以内のアルバイトなど)を厳守する
- 許可通知への対応:許可通知を受け取ったら速やかに新しい在留カードを取得する
「技人国」ビザの申請は、適切な準備と正確な書類作成が成功のカギを握っています。不明点や心配事がある場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。
8. 専門家への相談:行政書士のサポート内容
8.1 行政書士に相談すべきケース
以下のような場合は、特に行政書士への相談をお勧めします
- 専攻と希望職種の関連性が不明確:自分の専攻と就職先の業務内容の関連性をどう説明すればよいか分からない場合
- 複雑な履歴:転校や休学、複数の学歴や職歴がある場合
- 小規模企業への就職:採用企業が小規模または設立間もない企業の場合
- 過去の問題:資格外活動違反や在留期限超過などの過去の問題がある場合
- 不許可歴:過去に在留資格の申請で不許可になったことがある場合
- 書類準備の負担軽減:多忙で書類準備の時間が十分に取れない場合
8.2 行政書士に相談するメリット
行政書士は、申請取次制度(出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の3)に基づき、外国人に代わって在留資格に関する申請を行うことができる専門家です。行政書士に相談・依頼することには以下のようなメリットがあります
- 専門的知識とノウハウ:在留資格申請の専門的知識と豊富な実務経験に基づくアドバイスが受けられる
- 書類作成の精度向上:適切かつ効果的な書類作成により、不許可リスクを低減できる
- 時間と労力の節約:申請手続きを代行することで、自身は本来の活動(就職準備等)に集中できる
- 入管とのコミュニケーション:追加資料の要求や照会に適切に対応できる
- トラブル対応:予期せぬ問題が発生した場合の対応策を提案できる
8.3 行政書士しかま事務所のサポート内容
当事務所では、留学生の方々の「技人国」ビザ申請に関して、以下のような包括的なサポートを提供しています:
- 初回無料相談:申請の可能性や必要書類についての初回相談は無料で承っています
- 申請戦略の立案:個々のケースに応じた最適な申請戦略をご提案します
- 必要書類の作成支援:申請書や説明資料の作成をサポートします
- 企業側への説明・協力依頼:採用企業に対して必要な書類や説明内容についてアドバイスします
- 申請取次:申請人に代わって出入国在留管理局への申請手続きを代行します
- 追加資料対応:審査過程で追加資料を求められた場合の対応をサポートします
- 結果受領と在留カード取得:許可後の在留カード取得までをサポートします
当事務所は、多くの留学生の就職ビザ申請を成功に導いてきた実績があります。専門的かつ丁寧なサポートで、皆様の日本での新たなキャリアスタートをお手伝いします。