【施行目前!】育成就労制度、企業が「今」備えるべき3つのチェックポイント

【施行目前!】育成就労制度、企業が「今」備えるべき3つのチェックポイント | 行政書士しかま事務所

この記事でわかること

  • 2024年に法案が成立し、2027年までに施行される育成就労制度の最新動向
  • 企業が今から準備すべき具体的な3つのチェックポイント
  • 技能実習制度からの円滑な移行と外国人材の定着のための実践的アドバイス

2024年6月14日、技能実習制度に代わる新たな制度「育成就労制度」の関連法が国会で可決・成立しました。この新制度は遅くとも2027年6月までに施行される見通しとなっています。現在、技能実習生を受け入れている企業や、将来的に受け入れを検討している企業にとって、この制度変更は大きな転換点となります。

本記事では、育成就労制度の概要と、企業が「今」から準備しておくべき3つの重要なチェックポイントについてご説明します。早期に準備を進めることで、制度移行をスムーズに行い、外国人材の活用を成功させるための道筋を示します。

育成就労制度とは ―技能実習制度との違い

育成就労制度は、技能実習制度を「発展的に解消」し、「人材育成」と「人材確保」を目的とした新たな制度です。2025年3月には基本方針が閣議決定され、具体的な制度設計が進められています。

2024年6月14日
育成就労制度の関連法が国会で可決・成立

2025年3月11日
育成就労制度の基本方針が閣議決定

2027年~2030年
3年間の移行期間(両制度併存)

2030年頃
技能実習制度完全廃止・育成就労制度への完全移行

技能実習制度と育成就労制度には、以下のような主な違いがあります。

比較項目技能実習制度育成就労制度
制度目的国際貢献(技能移転)人材育成と人材確保
在留期間最長5年基本3年(その後特定技能への移行を推進)
日本語要件明確な入国時要件なし入国時:N5程度
育成中:N4程度への向上
受入機関の役割監理団体を通じた受入れが基本監理支援機関との連携による受入れ
転籍原則不可一定条件下で可能

重要なポイント

育成就労制度は、単なる技能実習制度の「名称変更」ではありません。企業には、外国人材の「育成」と「定着」に向けた具体的な取り組みが強く求められます。今から準備を進めることが、制度施行時の混乱を防ぎ、競争優位性を確保するカギとなります。

企業が「今」備えるべき3つのチェックポイント

チェックポイント1:日本語教育体制の構築

育成就労制度では、企業に対して「育成就労計画」の策定と認定が求められます。この計画には、業務内容、技能習得目標と並んで、「日本語能力向上」に関する具体的な計画が含まれます。

企業に求められる準備事項:

  • 3年間で100時間以上の日本語教育の提供体制の構築(企業側が費用負担)
  • 入国時N5程度から、最終的にN4程度への向上を目指す具体的カリキュラムの準備
  • 日本語教育を提供できる外部機関との連携体制の構築
  • 日本語教育の時間確保と業務スケジュールの調整方法の検討
  • 日本語能力の定期的な評価と、向上に向けたフィードバック体制の整備

実務上のポイント:日本語教育は単なる「義務」ではなく、コミュニケーション円滑化による業務効率向上、安全管理強化、職場定着率向上など、多くのメリットをもたらします。現在から始められる準備として、社内での日本語学習環境の整備(例:やさしい日本語の導入、日本語学習アプリの活用支援など)を検討しましょう。

チェックポイント2:定着支援・生活支援体制の強化

育成就労制度では、人材の「定着」が重要な目的の一つとなります。技能実習制度と異なり、育成就労後は特定技能への移行を促進し、長期的な雇用を視野に入れた支援体制の構築が必要です。

企業に求められる準備事項:

  • 住居の確保・支援体制の整備(契約サポート、緊急時対応など)
  • 生活オリエンテーションの実施計画(買い物、交通、医療機関など)
  • 相談窓口の設置と多言語対応の整備
  • キャリアパスの明確化(育成就労後の特定技能への移行サポート)
  • 職場におけるコミュニケーション促進策の検討(定期面談、交流会など)

実務上のポイント:外国人材の「離職率」は受入環境に大きく左右されます。特に生活面での不安や孤独感が離職の主要因となるケースが多いため、業務外のサポート体制を充実させることが重要です。今から始められる準備として、地域の多文化共生イベントへの参加促進や、社内メンター制度の検討などが有効です。

チェックポイント3:監理支援機関との連携体制の構築

技能実習制度における「監理団体」は、育成就労制度では「監理支援機関」に変わります。監理支援機関は、外国人材のあっせんから、定期的な訪問、相談対応まで、総合的な支援を行う重要なパートナーとなります。

企業に求められる準備事項:

  • 信頼できる監理支援機関の選定・情報収集(現在の監理団体が移行するかの確認)
  • 監理支援機関との役割分担の明確化(日本語教育、生活支援など)
  • 企業内の外国人材受入担当者の選任と育成
  • 育成就労計画策定への準備と監理支援機関との協力体制の構築
  • 定期的な情報共有の仕組みづくり(ケース会議、定例報告など)

実務上のポイント:監理支援機関の選定は、育成就労制度成功の重要な鍵です。現在の監理団体が新制度に移行するかどうかを早期に確認し、移行しない場合は新たなパートナーを探す必要があります。監理支援機関との連携体制は今から構築しておくことで、制度施行時のスムーズな移行が可能になります。

早期準備がもたらすメリット

育成就労制度への対応を早期に始めることで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 人材確保における競争優位性:優良な受入れ企業として認定されることで、質の高い人材を確保しやすくなります。
  • 制度移行時の混乱回避:事前準備により、制度切り替え時の業務混乱を最小限に抑えられます。
  • 外国人材の定着率向上:充実した支援体制により、人材の定着率向上と早期戦力化が期待できます。
  • 行政手続きの円滑化:育成就労計画の認定や各種申請がスムーズに進みます。
  • 社内の多文化共生環境の醸成:外国人材と日本人社員の相互理解が深まり、職場環境が向上します。

まとめ:今からできる具体的アクション

育成就労制度の施行は2027年までですが、早期からの準備が成功のカギとなります。特に以下の点については、今すぐ取り組むことをお勧めします。

  • 情報収集:育成就労制度に関する最新情報を継続的に収集しましょう。
  • 社内体制の見直し:外国人材の受入れ担当者や体制を明確にし、必要なリソースを確保しましょう。
  • 現在の監理団体との連携強化:新制度への移行計画について、早期に協議を開始しましょう。
  • 日本語教育プログラムの検討:社内または外部機関と連携した日本語教育の具体的プランを検討しましょう。
  • 専門家への相談:行政書士などの外国人雇用に詳しい専門家に早期に相談し、準備を進めましょう。

育成就労制度は、外国人材の育成・定着に重点を置いた新たな制度です。企業にとっては準備すべき事項も多くありますが、早期に対応を始めることで、制度変更をビジネスチャンスに変えることが可能です。当事務所では、育成就労制度への移行に関するご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

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