配偶者ビザへの変更は、単なる「在留資格変更」手続きですが、審査のポイントや必要書類は、既に日本に住んでいるという特性を踏まえた対応が必要です。
留学・就労ビザから配偶者ビザへ変更するメリット
留学ビザや就労ビザから配偶者ビザへの変更には、以下のようなメリットがあります。
- 就労制限の解除:留学ビザの週28時間の就労制限から解放され、フルタイム勤務が可能に
- 就労先の自由度向上:就労ビザの場合、職種や業種に制限がありますが、配偶者ビザではほぼすべての職種で働くことが可能
- 在留期間の長期化:最長5年の在留期間が付与される可能性(初回は通常1年または3年)
- 永住許可申請への近道:就労ビザより短い期間で永住許可申請が可能(一般的に婚姻生活が3年以上かつ日本に1年以上継続して在住)
- 安定した生活基盤:家族としての身分が保障される
留学・就労ビザからの変更特有のポイント
留学ビザからの変更特有の課題
留学ビザから配偶者ビザへの変更には、以下の特有の課題があります。
- 経済的自立の証明:学生からの転換のため、夫婦の収入源や経済的自立を特に重点的に審査される
- 継続的な在籍証明:留学期間中の学校への出席状況や成績が審査されることがある
- 結婚の経緯説明:出会いから結婚に至るまでの経緯をより詳細に説明する必要がある
- 帰国意思の変更説明:当初の「卒業後帰国」から「日本での定住」へ方針転換した理由の説明
就労ビザからの変更特有の課題
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)から配偶者ビザへの変更には、以下の特有の課題があります。
- キャリアパスの変化:専門職としての在留から配偶者としての在留への変更理由の説明
- 転職予定の説明:配偶者ビザ取得後に転職予定がある場合は、その計画を示す必要がある場合も
- 両立の証明:仕事と結婚生活の両立が可能であることを示す
重要:在留資格「留学」や「技術・人文知識・国際業務」などの活動制限のある在留資格から配偶者ビザへの変更は、審査のポイントが大きく異なります。単なる書類の差し替えではなく、「身分関係に基づく在留」への変更としての審査が行われます。
必要書類リスト(留学・就労ビザからの変更特有)
通常の配偶者ビザ申請に必要な基本書類に加え、留学・就労ビザからの変更では以下の書類が特に重要です。
基本的な申請書類
- 在留資格変更許可申請書(申請人等作成用1・2・3、所属機関等作成用1)
- 申請人の写真(縦4cm×横3cm、3か月以内に撮影したもの)
- 住民票(世帯全員のもの、マイナンバーの記載がないもの)
- パスポート及び在留カードの原本(提示)
婚姻関係を証明する書類
- 日本人配偶者の場合:戸籍謄本(発行から3か月以内のもの)
- 永住者配偶者の場合:配偶者の在留カードおよび婚姻証明書
- 婚姻要件具備証明書または婚姻成立証明書(外国での婚姻の場合)
婚姻の真実性を証明する書類(特に重要)
- 交際から結婚までの経緯説明書(出会いから現在までの詳細な時系列)
- 2人の関係を示す写真(交際期間、結婚式、日常生活、両家族との交流など)
- LINE・メッセージ・メールのやり取り(日付入りのもの、コミュニケーションの頻度を示すもの)
- 結婚式の証拠(招待状、写真、領収書など)
- 日常の共同生活の証拠(公共料金の支払い証明、家賃の支払い証明、共同名義の資料など)
経済的基盤を証明する書類
- 在職証明書(日本人/永住者配偶者、または申請者本人のもの)
- 給与明細(過去3~6か月分)
- 源泉徴収票または確定申告書の控え
- 預金通帳のコピー(過去6か月〜1年分、出入金状況がわかるもの)
- 年金証書または年金支払通知書(該当者のみ)
留学ビザからの変更時の追加書類
- 卒業証明書または卒業見込証明書(すでに卒業している場合や卒業予定の場合)
- 在学証明書と成績証明書(在学中の場合)
- 出席率証明書(日本語学校など、出席状況を示すもの)
- 今後の進路に関する説明書(就職予定がある場合は内定通知書や雇用契約書)
就労ビザからの変更時の追加書類
- 在職証明書(現在の就労先のもの)
- 雇用契約書のコピー
- 転職予定がある場合は新しい会社の内定通知書や雇用条件説明書
- 職務経歴書(日本での就労実績を示すもの)
実務アドバイス:留学・就労ビザからの変更では、特に「婚姻の真実性」と「経済的基盤」の2点が重点的に審査されます。これらを立証する証拠を豊富に用意することで、審査がスムーズに進む可能性が高まります。
申請手続きの流れ
STEP 1: 書類の準備
上記の必要書類をすべて収集・準備します。特に「交際経緯説明書」は詳細かつ具体的に作成することが重要です。
STEP 2: 理由書の作成
留学・就労ビザから配偶者ビザへ変更する理由を明確に説明した理由書を作成します。特に以下の点を詳しく記載します。
- 出会いから結婚に至るまでの詳細な経緯
- 現在の同居状況と今後の生活計画
- 経済的な生活基盤の説明
- 留学・就労から配偶者ビザへ変更する具体的な理由
STEP 3: 申請書の作成・提出
申請書に必要事項を記入し、準備した書類とともに管轄の出入国在留管理局へ提出します。申請時に在留カードを提示する必要があります。
STEP 4: 審査期間
審査期間は通常1~3か月程度ですが、ケースによって異なります。留学・就労ビザからの変更の場合、場合によっては結婚の真実性を確認するための電話調査や呼び出し調査が行われることがあります。
STEP 5: 結果通知
審査結果が出ると申請時に渡されたハガキが届きます。「在留資格変更許可」の場合は、そのハガキを持って出入国在留管理局へ行き、新しい在留カードを受け取ります。
注意:申請中に現在の在留期限が切れそうな場合は、早めに申請することをお勧めします。申請中に在留期限が切れた場合でも、申請中は「特例期間」として滞在が認められますが、この間は一時出国ができないなどの制限があります。
審査のポイントと対策
1. 婚姻の真実性(最重要ポイント)
留学・就労から配偶者ビザへの変更では、「便宜上の結婚」や「偽装結婚」ではないことの証明が特に重視されます。
審査ポイント | 対策 |
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共同生活の実態 |
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コミュニケーションの証拠 |
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結婚の経緯 |
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家族との交流 |
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2. 経済的基盤(安定した生活の証明)
留学・就労ビザからの変更では、特に「安定した生活ができるか」という点が重視されます。
審査ポイント | 対策 |
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安定した収入 |
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貯蓄状況 |
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住居の安定性 |
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今後の就労計画 |
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3. 日本での在留状況(留学・就労時の活動実績)
現在の在留資格での活動状況も審査の対象となります。
在留資格別のポイント | 対策 |
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留学ビザの場合 |
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就労ビザの場合 |
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重要:留学ビザの場合、出席率が低い、成績が著しく悪い、または卒業の見込みがないなどの状況は、審査に悪影響を与える可能性があります。就労ビザの場合も、頻繁な転職や在留資格と関係のない仕事をしていた場合は、説明が必要となることがあります。
留学・就労からの変更に関するよくある質問
Q1: 留学ビザで在学中に配偶者ビザへの変更申請はできますか?
A: はい、在学中でも申請可能です。ただし、「留学」の本来の目的を達成できなくなる場合(例:結婚を理由に退学する場合)は、その理由と今後の計画を明確に説明する必要があります。卒業後の申請の方がスムーズなケースが多いですが、在学中でも十分な理由と証拠があれば許可される可能性があります。
Q2: 日本人との結婚後、すぐに配偶者ビザへの変更申請をするべきですか?
A: 法的には婚姻成立後すぐに申請可能ですが、結婚生活の実態を示す証拠(共同生活の証拠など)を集める時間を考慮すると、1~2ヶ月程度の共同生活期間を経てから申請することをお勧めします。ただし、現在の在留期限が迫っている場合は、早めに申請する必要があります。
Q3: 就労ビザから配偶者ビザへの変更で、今の仕事を辞める必要がありますか?
A: いいえ、必ずしも現在の仕事を辞める必要はありません。配偶者ビザの取得後も同じ職場で働き続けることができます。むしろ、安定した職がある方が経済的基盤の証明になります。ただし、配偶者ビザ取得後は、就労制限がなくなりますので、業種や職種を変更することも自由です。
Q4: 留学ビザから配偶者ビザへの変更で、大学を中退する場合、問題になりますか?
A: 結婚を理由とした中退は、きちんと説明できれば問題にはなりません。しかし、「なぜ学業を続けながら配偶者ビザに変更しないのか」という点について、説得力のある理由(例:フルタイム就労の必要性、家庭の事情など)を説明する必要があります。可能であれば卒業まで学業を続け、その間に配偶者ビザへの変更申請を行うことも一つの選択肢です。
Q5: 配偶者の収入が少ない場合、申請者本人が働いている証明があれば大丈夫ですか?
A: はい、配偶者の収入が少ない場合でも、申請者本人が安定した収入を得ている場合は、それを経済的基盤の証明として提出できます。夫婦合算での収入が生活を維持するのに十分であることを示せれば問題ありません。特に就労ビザからの変更の場合は、申請者本人の収入証明が有効です。
Q6: 配偶者ビザへの変更が不許可になる主な理由は何ですか?
A: 留学・就労ビザからの変更で不許可になる主な理由は以下の通りです
- 婚姻の真実性が疑われる場合(交際期間が極端に短い、共同生活の実態がない等)
- 経済的基盤が不十分と判断された場合
- 現在の在留資格に違反している場合(無断アルバイト、出席率不良など)
- 提出書類に虚偽や不備がある場合
- 申請者または配偶者に犯罪歴がある場合
専門家によるサポートのメリット
留学・就労ビザから配偶者ビザへの変更は、一般的な配偶者ビザ申請と比べて以下の点で複雑になることがあります
- 在留目的の変更に関する審査が追加的に行われる
- 婚姻の真実性をより詳細に立証する必要がある
- 現在の活動状況(留学・就労)と結婚生活の整合性を説明する必要がある
行政書士しかま事務所では、留学・就労ビザから配偶者ビザへの変更に特化したサポートを提供しています
行政書士しかま事務所のサポート内容
- 個別の状況に合わせた書類準備アドバイス:留学生・就労者それぞれの状況に適した効果的な証拠書類の提案
- 説得力のある理由書・経緯説明書の作成サポート:審査官が重視するポイントを押さえた文書作成
- 申請書類の精査と不備防止:必要書類の漏れや記載ミスのチェック
- 申請後のフォローアップ:追加資料の要請があった場合の対応サポート
- 在留期限切れが近い場合の迅速対応:優先的な書類準備と申請スケジュールの調整
配偶者ビザへの変更でお悩みの方へ
留学・就労ビザから配偶者ビザへの変更は、一般的なケースとは異なる点が多く、適切な準備が不可欠です。行政書士しかま事務所では、これまでの豊富な経験を活かし、お客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。
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※この記事は2025年時点の情報に基づいています。入管法や申請要件は変更される可能性がありますので、最新情報は出入国在留管理庁のウェブサイトでご確認いただくか、専門家にご相談ください。
※すべてのケースが同様に審査されるわけではなく、個別の事情により必要書類や審査内容が異なる場合があります。