配偶者ビザ申請:「理由書」で婚姻の真実性をどう立証するか?

配偶者ビザ申請:「理由書」で婚姻の真実性をどう立証するか? | 行政書士しかま事務所

1. はじめに:配偶者ビザ申請における最大の関門

配偶者ビザ(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」)の申請において、最も重要かつ審査の核心となるのが「婚姻の真実性」の立証です。単に法的に有効な婚姻関係があるというだけでは、入国管理局(入管)の審査を通過することはできません。

特に近年、偽装結婚による不正な在留資格取得を防ぐため、入管の審査は厳格化しています。真実の夫婦であっても、その実態を客観的に証明できなければ、不許可になるリスクが高まっています。

本記事では、日本人または永住者の配偶者(パートナーの方)の立場から、「理由書」や「質問書」を通じて婚姻の真実性をどのように立証すべきか、その具体的な方法とポイントを解説します。

2. 婚姻の真実性立証が重視される背景

入管法上、配偶者ビザの交付要件として「婚姻が日本人の配偶者等としての活動を継続して行うことを目的とするものであること」が定められています。つまり、純粋に夫婦として生活するという目的以外の動機(例:単に日本での就労や在留を目的としたもの)による婚姻は、たとえ法的に有効な婚姻関係であっても、在留資格付与の対象とはならないのです。

入管が特に注視するケース

  • 出会いから結婚までの期間が極端に短いケース
  • 年齢差が大きいケース(特に外国人配偶者が若い場合)
  • 言語によるコミュニケーションが困難なケース
  • 過去に偽装結婚や不法滞在等の入管法違反歴がある外国人の場合
  • 結婚後も夫婦が長期間別居している場合
  • 親族への結婚の報告がなされていない場合
  • 夫婦間での経済的扶助関係が見られない場合

特に上記のようなケースでは、真実の婚姻関係であることを客観的かつ具体的に立証する「理由書」の役割が決定的に重要となります。

3. 理由書作成前の準備:証拠資料の収集

効果的な理由書を作成するためには、婚姻の真実性を裏付ける客観的な証拠資料の収集が不可欠です。これらの資料は理由書の内容を補強し、説得力を高める重要な役割を果たします。

3-1. 収集すべき主な証拠資料

以下に挙げる資料は、婚姻の真実性を立証する上で特に有効とされるものです。可能な限り多くの資料を収集しましょう。

  • コミュニケーションの証拠:LINEやWhatsApp、メール、Skypeなどのメッセージ履歴(特に交際期間中のもの)
  • 共同生活の証拠:同居している場合の生活写真、家族での行事参加写真
  • 経済的な共同関係の証拠:共同口座の通帳コピー、お互いの送金記録
  • 交流の証拠:旅行写真、デート写真(日付がわかるもの)
  • 結婚式や婚約パーティーの証拠:写真、招待状、ゲストリスト
  • 親族との交流証拠:家族写真、親族への紹介を示す写真や手紙
  • SNSでの交流:FacebookやInstagramなどでの関係性を示す投稿
  • 第三者証明:知人や親族からの夫婦関係を証明する陳述書

3-2. 証拠資料の整理方法

収集した資料は、以下のポイントに留意して整理しましょう

  • 時系列での整理:出会いから現在までの流れがわかるように
  • 重要な場面の厳選:すべてを提出するのではなく、重要な転機や継続的な関係を示す資料を選別
  • 日付の明確化:特に写真等は撮影日時が分かるように整理
  • 説明文の添付:特に外国語のメッセージ等には簡単な翻訳や状況説明を付記

注意点

提出する証拠資料は真正なものに限ります。虚偽の資料や改ざんされた資料の提出は「虚偽文書の提出」として法的責任を問われる可能性があるだけでなく、発覚した場合は確実に不許可となります。

4. 効果的な理由書の書き方

理由書は、配偶者ビザ申請において婚姻の真実性を説明する最も重要な書類の一つです。申請者(外国人配偶者)とパートナーの方(日本人・永住者配偶者)それぞれが作成することが望ましいですが、特にパートナーの方の理由書は、日本語で詳細かつ具体的に記述することが重要です。

4-1. 理由書に盛り込むべき内容

  • 出会いの経緯:いつ、どこで、どのように出会ったか
  • 交際の経過:交際開始時期、どのように関係が発展したか
  • 結婚を決意した理由:なぜこの人と結婚を決めたのか、具体的なエピソード
  • 結婚後の生活計画:住居、仕事、家計の運営方法など
  • コミュニケーション方法:使用言語、意思疎通の状況
  • 家族・親族の反応:両家の受け入れ状況、紹介時のエピソード
  • (別居期間がある場合)別居中の交流方法:連絡頻度、訪問状況など
  • 相手の人柄・魅力:配偶者のどのような点に惹かれたか

4-2. 理由書作成の具体的ポイント

効果的な理由書のポイント

  1. 具体性を重視する:抽象的な表現(「優しい人柄に惹かれた」等)だけでなく、具体的なエピソード(「体調を崩した際に、自分の仕事を調整してまで看病してくれた」等)を交えて説明
  2. 時系列を明確に:出会いから現在までの重要な出来事を日付とともに記載
  3. 感情だけでなく事実も:感情面(「愛している」等)だけでなく、共同生活の実態や経済的協力関係など客観的事実も記載
  4. 裏付け資料との整合性:提出する写真や証拠書類と矛盾がないよう注意
  5. 文化・習慣の違いへの対応:国際結婚ならではの文化や習慣の違いをどう乗り越えているかも記載
  6. 将来計画の具体性:漠然とした計画ではなく、住居、仕事、子育て等についての具体的計画

4-3. 理由書のフォーマットと体裁

理由書に決まったフォーマットはありませんが、以下の点に注意して作成しましょう

  • A4用紙を使用(手書きでも印刷でも可)
  • 表題として「理由書」と記載
  • 日付を記入
  • 作成者の氏名を記載し、押印または署名
  • 段落分けをして読みやすく構成
  • 必要に応じて小見出しをつける
  • 文字サイズは読みやすいサイズ(10.5pt以上推奨)

長さの目安は、A4で2〜3枚程度です。あまりに短すぎると情報不足と見なされる可能性がある一方、冗長すぎると重要なポイントが埋もれてしまう恐れがあります。

5. 入管からの質問書への対応

申請後、入管から「質問書」が送付されることがあります。これは申請内容に不明点がある場合や、より詳細な情報が必要と判断された場合に発行されるものです。質問書への回答は審査の重要な判断材料となるため、慎重に対応する必要があります。

5-1. 質問書が発行されるケース

  • 提出書類だけでは婚姻の真実性の判断が難しい場合
  • 出会いから結婚までの期間が短い場合
  • 年齢差が大きい場合
  • 長期間の別居がある場合
  • 過去に在留資格申請の不許可歴がある場合
  • 提出書類の内容に矛盾や不明点がある場合

5-2. 質問書の一般的な内容

質問書では、主に以下のような内容が問われます

  • 出会いから結婚に至るまでの詳細な経緯
  • お互いの家族構成や家族への結婚の報告状況
  • 結婚式・婚姻届提出時の状況
  • 日常的なコミュニケーション方法や使用言語
  • 相手の職歴や学歴に関する知識
  • 相手の趣味・嗜好に関する知識
  • 共同生活の実態(家事分担、余暇の過ごし方など)
  • 経済面での協力関係

5-3. 質問書回答の注意点

回答時の重要注意点

  • 配偶者との事前調整を避ける:質問書は配偶者と別々に回答することが前提です。答え合わせをしたと思われる回答は不自然と判断される可能性があります
  • 誠実に回答する:わからない点は「不明」と正直に回答するほうが、虚偽の回答をするよりも信頼性が高まります
  • 具体的に回答する:「はい」「いいえ」だけでなく、具体的な状況や背景も説明しましょう
  • 回答の一貫性を保つ:過去の申請書類や理由書と矛盾がないように注意してください

質問書への回答は、婚姻の真実性判断における「最終試験」とも言える重要なものです。期限内に丁寧に回答することが重要です。

6. 実際のケーススタディ

ここでは、当事務所が過去に支援した事例から、婚姻の真実性立証が特に重要だったケースとその対応方法を紹介します。(※個人情報保護のため、詳細は一部変更しています)

6-1. 年齢差のある国際結婚のケース

【事例】50代後半の日本人男性とフィリピン人女性(30代前半)の結婚。出会いから結婚までが6ヶ月と短期間で、年齢差も大きいケース。

対応策:

  • 出会いのきっかけとなった共通の知人からの証明書(第三者証明)を取得
  • 交際期間中のやり取りをLINEのスクリーンショットで時系列に整理
  • 相手の母国を訪問した際の写真や、相手の家族と交流している様子の写真を提出
  • 理由書では、年齢差を意識しつつも、共通の価値観や相互尊重の関係性を強調
  • 将来設計(老後の計画も含む)を具体的に記載

6-2. 長期間別居している夫婦のケース

【事例】結婚後も外国人配偶者が本国で仕事を続けており、1年以上別居状態が続いているケース。

対応策:

  • 別居期間中の定期的なビデオ通話記録の提出
  • 日本人配偶者が相手国を訪問した際の航空券や出入国スタンプのコピー
  • 送金記録の提出(経済的扶助関係の証明)
  • 別居を余儀なくされた合理的理由(仕事の契約期間、家族の介護等)を詳細に説明
  • 来日後の具体的な生活プランを詳細に記載

6-3. 再申請ケース(一度不許可になったケース)

【事例】婚姻の真実性に疑義があるとして一度不許可となり、再申請するケース。

対応策:

  • 前回の不許可理由を正確に分析し、その点を重点的に補強
  • 不許可以降も継続的な関係を維持していたことを示す新たな証拠(訪問記録、コミュニケーション記録等)を追加
  • 第三者(友人、知人、職場の同僚等)からの夫婦関係を証明する陳述書を複数取得
  • 生活実態をより具体的に示す写真や資料の追加
  • 前回よりさらに詳細な理由書の作成(特に不許可理由とされた点について)

7. よくある失敗例と対策

配偶者ビザ申請において、真実の婚姻関係にもかかわらず不許可となってしまうケースは少なくありません。ここでは、よくある失敗例とその対策を解説します。

7-1. 理由書が抽象的・感情的すぎる

失敗例:「とても優しい人柄に惹かれて結婚しました。大好きです。」といった抽象的・感情的な表現だけで具体性に欠ける理由書。

対策:具体的なエピソードや客観的事実を交えて説明する。例えば「病気で寝込んだ際に仕事を早退してまで看病してくれた思いやりに惹かれた」など、具体的なエピソードを記載する。

7-2. 証拠資料が不足している

失敗例:「二人で撮った写真がほとんどない」「交際期間中のメッセージ履歴を保存していない」など、客観的証拠が不足しているケース。

対策:日頃から意識して二人の関係を示す資料を収集・保存する。また、第三者証明(知人や家族からの陳述書)などで補強する。

7-3. 夫婦間の基本情報の不一致

失敗例:質問書への回答で、お互いの生年月日や家族構成などの基本情報に食い違いがあるケース。

対策:日常会話の中でお互いの基本情報(生年月日、家族構成、学歴、職歴など)を自然と知っておく関係を築く。ただし、質問書回答直前の「答え合わせ」は不自然さにつながるため避ける。

7-4. 経済的基盤の弱さ

失敗例:パートナーの方(日本人・永住者配偶者)の収入が低く、安定した生活基盤が示せないケース。

対策:収入証明だけでなく、貯蓄状況や親族からの支援体制、外国人配偶者の就労予定なども含めた経済計画を具体的に説明する。

最大の失敗要因:一貫性の欠如

上記のどの失敗例よりも致命的なのが、提出書類間の「一貫性の欠如」です。理由書と質問書の回答、提出写真と説明内容など、すべての資料間で矛盾がないよう注意しましょう。矛盾点は虚偽申請の疑いを強く抱かせる要因となります。

8. 専門家のサポートを受けるメリット

配偶者ビザ申請、特に婚姻の真実性立証は、入管実務に精通した専門家(行政書士)のサポートを受けることで、大幅に成功率を高めることができます。

8-1. 行政書士に依頼するメリット

  • 最新の審査傾向の把握:日々変化する入管の審査傾向や重視ポイントを熟知している
  • 効果的な理由書作成:どのような内容をどう表現すれば効果的か、プロの視点からアドバイス
  • 適切な証拠資料の選定:数多くの証拠資料から、真に有効なものを厳選
  • 質問書対応のサポート:回答の方向性や表現方法についての助言
  • 不許可リスクの低減:過去の類似案件の経験から、不許可リスクを事前に回避
  • 時間と労力の節約:複雑な申請手続きを効率化し、スムーズに進行

8-2. 当事務所のサポート体制

行政書士しかま事務所では、配偶者ビザ申請における婚姻の真実性立証を含め、申請全般を以下のようにサポートしています

  • 初回無料相談:現状分析と申請戦略の提案
  • 書類収集指導:必要書類リストの提供と収集方法の説明
  • 理由書作成サポート:ヒアリングに基づく効果的な理由書の作成支援
  • 証拠資料の厳選・整理:提出すべき証拠の選定と効果的な整理
  • 申請書類の作成・点検:すべての申請書類の作成と最終確認
  • 入管への同行サポート:必要に応じて入管への同行と手続きサポート
  • 質問書対応:質問書が発行された際の回答方針と表現の助言
  • 不許可対応:万が一不許可となった場合の再申請戦略の立案

9. まとめ

配偶者ビザ申請において、婚姻の真実性の立証は最も重要な要素です。特に「理由書」と「質問書への回答」は、その立証の中核を担う書類となります。

真実の夫婦であっても、その事実を客観的に説得力をもって証明できなければ、ビザ取得は難しくなります。本記事で解説した以下のポイントを押さえ、慎重に準備を進めましょう

  1. 充実した証拠資料の収集と整理
  2. 具体的かつ一貫性のある理由書の作成
  3. 誠実で具体的な質問書への回答
  4. 婚姻関係の客観的証明
  5. 継続的な関係性の証明

また、入管実務に精通した専門家のサポートを受けることで、申請の成功率を大幅に高めることが可能です。配偶者ビザの取得は、あなたとパートナーの新しい生活の第一歩です。慎重かつ万全の準備で、その第一歩を確実なものとしましょう。

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行政書士しかま事務所では、配偶者ビザ申請における「婚姻の真実性立証」を含む申請全般をワンストップでサポートしています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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