採用理由書・雇用理由書の実例と書き方、テンプレート
【実例あり】採用理由書・雇用理由書の書き方とテンプレート
外国人を採用する際に作成する「採用理由書」「雇用理由書」。このページでは、その意味や書き方のポイント、実例、テンプレートを分かりやすく解説します。雇用理由書は在留資格申請において不許可リスクを減らすための重要書類です。当事務所の経験をもとに、効果的な理由書の作成方法をご紹介します。
採用理由書・雇用理由書とは
雇用理由書とは、外国人が日本で就労するために在留資格を申請、または変更する際に作成する書類です。必ずしも入国管理局へ提出する義務はありませんが、会社概要や登記簿謄本、申請人の履歴書や職務履歴書以外で雇用理由を補足説明できる重要資料です。
「採用理由書」と「雇用理由書」は基本的に同じ書類を指します。企業が外国人を採用する理由や、なぜ日本人ではなくその外国人を必要とするのかを説明するものです。
採用理由書・雇用理由書の基本
- 外国人を採用する理由と必要性を説明する書類
- 在留資格申請・更新時の補足資料として活用
- 会社の概要や外国人の職務内容、採用経緯などを記載
- 書式は自由だが、審査官が読みやすい構成が重要
なぜ雇用理由書が必要なのか
在留資格の申請、または変更の際は、入国管理局にて「日本国にとって有益であり、かつ害を及ぼさない人間である」と認められる必要があります。法律で定められた申請書類と添付書類を提出することで審査が行われますが、それだけでは審査官に十分な情報が伝わらないことがあります。
雇用理由書のメリット
定められた申請書類と添付書類だけでなく、雇用理由書を用意して提出することで、提出しない場合に比べて短期間で審査してもらえる可能性が高まります。また、不許可となるリスクや追加資料を求められて審査期間が伸びるリスクを減らすことができます。
雇用理由書に「会社が全面的に当該の外国人の在留資格の申請、または変更を支援している」ということを示すことで、審査官の心証を良くし、スムーズな審査につながります。
入国管理局が見るポイント
雇用理由書を作成する上で、入国管理局の審査官が特に注目する4つのポイントを押さえておく必要があります。
会社規模(事業の安定性)
企業規模や事業の安定性、将来性について記載します。特に中小企業の場合は、経営の安定性や継続性を強調する必要があります。
申請人の経歴
外国人の学歴や職歴、保有資格、語学力などを記載し、「なぜ日本人ではなくこの外国人を採用するのか」を明確に説明します。
業務内容と経歴の合致性
担当させる業務内容と申請人の経歴・スキルの関連性を明確に説明します。在留資格の種類との整合性も重要です。
サポート体制
入社後も企業が申請人を安定的にサポートする体制(住居、生活支援など)について説明します。
これらのポイントをバランスよく記載することで、外国人材の採用が日本社会にとって有益であり、適切な受け入れ体制があることを示すことができます。
雇用理由書の実例
以下は、ホテル事業を展開する企業が、外国人をフロントスタッフとして採用する場合における雇用理由書の一例です。
実際の申請に際しては、各企業の実情に応じて内容の修正が必要となります。
雇用理由書のひな形(PDF形式)は、以下よりダウンロード可能ですので、ご参考としてご活用ください。
東京都中央区1-1-1
株式会社◯◯
代表取締役 ◯◯ △△
1.申請者の概要
氏 名: ◯◯ ◯◯
国 籍: 中華人民共和国
生年月日: 19●●年●●月●●日
2.雇用主の概要
名 称: 株式会社◯◯
所 在 地: 東京都中央区1-1-1
代表者名: 代表取締役 ◯◯ △△
設 立: 2001年5月15日
資 本 金: 10,000,000 円
年 商: 4,250,000,000 円(直近決算期)
従業員数: XXX名(うち、正規雇用外国人従業員 XX名)
事業内容: ホテル・旅館運営事業
事業概況
弊社は●●県を中心に20施設を運営するホテル事業者である。訪日客増により業績は安定しており、経営基盤は確立されている。今後はインバウンド対応強化と事業拡大を計画中である。主要取引先は株式会社△△等である。
3.雇用契約及び処遇
申請者とは正規雇用契約を締結予定である。役職は総合職(国際業務担当)であり、給与は社内規定に基づき、同職務の日本人従業員と同等以上の水準とする。
4.申請者の具体的職務内容
申請者には、弊社運営の「ホテル△△」(所在地:東京都中央区1-1-2)に配属の上、以下の専門的業務に従事させる予定である。
1.フロントにおける専門的対人業務(中国語・日本語使用)
・宿泊予約関連手続き(電話、メール、Web含む)、チェックイン・アウト対応、精算業務。
・外国人客(特に中国語圏)からの各種問い合わせ対応(施設、交通、観光案内等)。
・緊急時・トラブル発生時の外国人客とのコミュニケーション及び初期対応。
2.国際的な顧客対応及び関連業務
・中国語圏客への文化・習慣を考慮したサービス提供、関係部署連携。
・提携施設(温泉等)に関する説明、案内、予約代行。
・Web等を通じた外国語(主に中国語)での問い合わせ対応、情報発信補助。
・外国人客からの意見・要望の収集、分析、サービス改善への反映。
上記職務は、高度な語学能力(日・中)、異文化理解に基づく対人能力、関連知識を必須とする専門業務である。
5.本件雇用の必要性
配属先ホテル(ホテル△△)は、●●駅至近であり、年間12,000名超の中国語圏客を受け入れている。しかし、同ホテルで中国語対応可能な常勤従業員は現在1名のみであり、人員が著しく不足している。この状況は、顧客満足度低下や緊急時対応への懸念を生じさせている。従って、高度な語学力と国際的な対人業務経験を持つ申請者の採用は、サービス品質向上と円滑なホテル運営に不可欠であり、弊社の喫緊の経営課題解決に資するものである。
6.申請者の有する能力及び適格性
申請者は、本件職務遂行に必要な以下の専門的能力及び適格性を有する。
学歴:中国□□大学日本語学科卒業(学士)。日本語及び日本文化に関する体系的知識を有する。
語学力:日本語能力試験(JLPT)N1合格済。高度な日本語運用能力は客観的に証明されている。母語中国語と合わせ、バイリンガルでの業務遂行能力を有する。
実務経験:中国国内の○○百貨店にて約5年間、日本人顧客対応を含む通訳・接客業務に従事。異文化環境での顧客対応力、問題解決能力、通訳翻訳スキルを習得済であり、ホテルでの対人業務に直接活用可能である。
職務適性:選考過程で、高いコミュニケーション能力、柔軟性、協調性が確認された。チーム連携や臨機応変な対応が求められる本職務への適性は十分である。
7.在留資格「技術・人文知識・国際業務」への該当性
申請者が従事予定の職務(上記4)は、申請者の有する人文科学分野の知識(日本語学等)及び国際業務経験(語学力、異文化対応力、通訳経験等)を必要とする専門的業務であり、出入国管理及び難民認定法に定める在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当する。
具体的には、
(1) 申請者の学歴・職歴と担当業務内容との間には、直接的な関連性が認められる。
(2) JLPT N1及び5年間の関連実務経験は、業務遂行に必要な専門的能力を客観的に裏付ける。
(3) 担当業務は、その内容から単純労働とは異なり、専門性を要するものである。
以上の理由から、申請者の活動は本在留資格の要件を満たすものと判断する。
8.結論
弊社は、申請者◯◯ ◯◯氏が本件職務に必要な能力・適性を有し、弊社の事業運営、特にインバウンド対応強化に不可欠な人材であると判断する。
ついては、申請者の在留資格「技術・人文知識・国際業務」に係る在留資格認定証明書の交付を申請するものである。
テンプレートのダウンロード
雇用理由書・採用理由書のテンプレート
簡単にカスタマイズできる雇用理由書のテンプレートをご用意しました。
必要事項を入力するだけで、プロフェッショナルな雇用理由書が作成できます。
※PDFをダウンロード後、Adobe Acrobat Reader等で開いて編集できます
作成時の注意点
雇用理由書を作成する際には、以下の点に注意しましょう。
分量について
入国管理局は多くの雇用理由書を読み込んでいるため、A4で1〜2枚程度の分量を目安にしましょう。ただし、難しい申請の場合や、特に説明が必要な場合は、ボリュームが増えてでも詳しく説明したほうが良いでしょう。
専門用語の使用
専門用語は避け、誰でも理解できる言葉で書くことが重要です。特に職務内容の説明では、審査官が理解しやすい表現を心がけましょう。
過去の申請との整合性
過去に在留資格の申請を行っている場合は、その際に提出した内容との整合性を確認しましょう。経歴などに不一致があると、審査に悪影響を与える可能性があります。
最新の法令・ガイドラインの確認
入国管理局の審査ガイドラインは随時更新されます。最新の情報に基づいて作成することが重要です。ネット上に流通しているテンプレートは古い場合があるので注意が必要です。
チェックリスト
- 企業の規模や事業内容を明確に記載している
- 外国人を採用する必然性が明確に説明されている
- 申請人の経歴と業務内容の関連性が示されている
- 在留資格の種類と業務内容が整合している
- 専門用語を避け、わかりやすい表現を使っている
- 入社後のサポート体制が記載されている
- 文書の長さは適切である(A4で1〜2枚程度)
- 過去の申請内容との整合性がとれている
まとめ
雇用理由書・採用理由書は、外国人の在留資格申請を円滑に進めるために重要な書類です。書類の提出は必須ではありませんが、審査をスムーズに進め、不許可リスクを減らすために、丁寧に作成することをおすすめします。
ポイントは以下の通りです
- 会社概要、配属先、業務内容、採用理由を明確に記載する
- なぜ日本人ではなくその外国人が必要なのかを具体的に説明する
- 申請人の経歴と業務内容の関連性を明確に示す
- 専門用語は避け、わかりやすい表現を使用する
- 入社後のサポート体制についても記載する
雇用理由書の作成でお悩みの場合は、行政書士しかま事務所にご相談ください。これまでの経験を活かし、審査に通りやすい雇用理由書の作成をサポートいたします。
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- 雇用理由書・採用理由書の作成サポート
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 永住許可申請
- 帰化申請
- 外国人雇用に関する総合コンサルティング
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※本記事は2025年4月時点の情報に基づいて作成しています。法令やガイドラインの変更により、記載内容が実際の手続きと異なる場合がありますので、最新情報は出入国在留管理局や専門家にご確認ください。
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