建設業許可と2024年問題

はじめに

2024年は、建設業界にとって大きな転換期を迎える年です。特に、「2024年問題」と呼ばれる労働環境の変革が、業界全体に大きな影響を与えることが予想されています。この問題は、主に労働時間や残業時間の上限規制に関連するもので、物流業や運送業と密接に関係している建設業界にも深刻な波紋を広げます

本記事では、建設業許可の基本的な要件から、2024年問題が建設業界にどのような影響を及ぼすのか、そして今後の対策について詳しく解説していきます。


建設業許可とは?

要件

建設業を営むためには、法律に基づいて建設業許可を取得する必要があります。許可は、国や都道府県が発行し、建設業許可を得るには、以下の要件を満たす必要があります。

財務的要件

建設業者には、一定の純資産額が求められます。これは、事業が安定して運営できる財務的基盤を示すためのものです。具体的には、業種ごとに異なりますが、純資産が500万円以上であることが一般的な基準となっています。

技術的要件

建設業には、専門的な技術が必要です。したがって、建設業関連の資格を持つ技術者を会社に配置することが求められます。これにより、質の高い工事を適切に行えることが保証されます。

経営経験

建設業者の経営者や役員には、5年以上の実務経験が必要です。これにより、事業者が建設業務を円滑に進行させるための知識と経験を持っていることが確認されます。

以下の記事で建設業許可について詳しく説明しています。

建設業許可についての全て(東京都)

建設業を営む上で、許可取得は事業の信頼性を示す不可欠なステップです。以下は、建設業許可取得のプロセスを理解しやすくまとめたものです。 ↓動画解説はこちらから↓(AI…


建設業許可の種類

建設業許可には、以下の2つの種類があります。

一般建設業許可

一般建設業許可は、比較的小規模な工事を主に行う場合に必要な許可です。元請けとして工事を受注し、軽度な下請け工事を扱う場合に適用されます。

特定建設業許可

特定建設業許可は、元請けとして大規模な工事を行う場合に必要な許可です。例えば、大規模な公共工事や高額な商業施設の建設などで適用されます。下請け業者を複数抱えるようなケースでは、この許可が必要になります。


2024年問題とは?

2024年問題は、2024年4月から正式に施行され、建設業界に大きな影響を与える労働時間の規制強化のことを指します。これは、働き方改革関連法の一環として、建設業界や物流業界を対象に、特に残業時間の上限労働時間の厳格な管理が求められるようになったものです。この問題が特に顕著な理由は、従来から長時間労働が常態化していた業界に対し、急速に労働環境の改善が強制されるためです。

残業時間の上限規制

2024年4月の施行により、建設業界における年間の残業時間は上限規制対象となり年720時間に制限されました。(※原則は年360時間月45時間まで。)これは月平均で60時間の残業が許容される計算ですが、特別な事情がある場合を除き、これを超える残業は違法となります。従来、建設業界ではプロジェクトの遅延や繁忙期などで長時間労働が一般的でしたが、この新規制により、長時間労働の抑制が強く求められています。

  • 違反した場合、労働基準監督署からの是正勧告があり、最終的には罰則を受ける可能性もあります。建設業界の経営者は、この上限規制に対応するために、労働時間の徹底管理を行う必要があり、従業員の働き方を抜本的に見直すことが迫られています。

拘束時間の短縮

同じく2024年4月に施行された規制の一環として、自動車運転業務に従事する労働者の拘束時間が短縮されました。これにより、1日の労働拘束時間が短くなり、また休息時間の延長が義務化されることで、長距離輸送や建設資材の運搬に従事するドライバーの労働環境が大幅に変わりました。

  • 運搬業務を担う従業員の拘束時間が短縮されることで、運搬の回数が減少し、資材の供給や産業廃棄物の運搬が遅れる可能性が高まっています。これにより、現場作業に遅れが生じ、工期全体が長引く懸念が出ています。

2024年問題が建設業に与える影響

労働力不足の深刻化

労働時間の厳格な制限により、建設業界全体での労働力不足がさらに深刻化しています。建設現場で働く作業員やドライバーはもともと不足していた上、労働時間が制限されることで、1人あたりの作業量が減少し、現場の作業効率が低下することが懸念されています。

  • 特に中小企業では、新たな労働力を確保するのが難しく、現場での作業遅延やプロジェクト全体のスケジュール変更が必要になるケースが増えています。

工期の延長とコストの増加

労働時間が短縮されることで、1日に完了できる作業量が減少し、工期が延びることが予想されます。また、急速な労働環境の変化に対応するために、追加の人員を確保する必要があり、それに伴うコストの増加も避けられません。

  • 特に大規模プロジェクトでは、契約に基づく工期の延長により、契約違反やペナルティが発生するリスクも高く、企業の収益性に悪影響を与える可能性があります。

産業廃棄物処理の遅延

2024年問題は、建設業界の産業廃棄物処理にも大きな影響を与えます。運搬車両の稼働時間が制限されることで、廃棄物の処理が遅れ、現場に廃棄物が滞留するリスクが高まります。これにより、作業スペースが不足し、現場での作業進行に大きな支障が出ることが懸念されています。

適切な廃棄物処理が行われない場合、環境への影響だけでなく、法的なリスクも高まるため、廃棄物処理業者との連携や運搬計画の改善が急務です。



建設業界における今後の対策

2024年問題によって労働環境が大きく変わる中で、建設業界が直面する課題に対応するためには、効率的な業務運営が求められています。以下に、業務効率化シフト制の導入労働環境の改善産業廃棄物処理の効率化について詳しく説明します。


効率化の推進

業務プロセスの見直しが重要です。特に工期短縮や作業効率向上には、デジタル技術や自動化が役立ちます。

  • デジタル管理:運搬スケジュールをデジタル化し、リアルタイムでの進捗確認が可能になり、資材の遅れを防ぎ、作業の遅延を最小限に抑えることができます。
  • リアルタイム監視:現場の進行状況をリアルタイムで把握することで、問題が発生した際に迅速な対応ができ、効率的な運営が可能です。

シフト制の導入

労働時間の上限規制に対応するため、シフト制を導入することで、柔軟な労働時間管理が実現できます。これにより、労働者に十分な休息を提供しつつ、工事を効率的に進めることが可能です。

労働環境の改善

労働者の健康管理が不可欠です。長時間労働の抑制と福利厚生の充実により、従業員が健康的に働ける環境を整えることで、長期的な人材確保につながります。

  • 福利厚生:健康診断の充実や、家族との時間を大切にできる環境を整えることで、従業員の満足度向上と離職率低下が期待できます。

産業廃棄物処理の効率化

デジタル技術を使って運搬計画をデジタル化し、リアルタイムで進捗を管理することで、運搬効率が向上し、廃棄物の滞留を防ぐことができます。

リサイクルの推進:廃棄物のリサイクルを進めることで、環境負荷軽減とコスト削減が可能です。リサイクルの徹底は、企業の社会的責任としても評価され、イメージアップにもつながります。

まとめ

2024年問題に対応するためには、効率化の推進シフト制の導入労働環境の改善、そして産業廃棄物処理の効率化が重要な要素となります。これらの対策を講じることで、建設業界は2024年以降も持続的な成長と競争力の維持が可能となります。

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