有料職業紹介と特定技能の送出し機関は何が違う?海外人材を日本へ呼ぶための制度比較と事業者の選び方

有料職業紹介と特定技能の送出し機関は何が違う?海外人材を日本へ呼ぶための制度比較と事業者の選び方

「有料職業紹介」と「特定技能の送出し機関」は何が違う?
海外人材を日本へ呼ぶための制度比較と、事業者の選び方

読了時間:約12分

こんにちは、行政書士しかま事務所の鹿間です。日々、企業の皆様から海外人材の採用に関するご相談をいただく中で、「有料職業紹介事業者に依頼すべきか、それとも特定技能の送出機関を利用すべきか分からない」というお声を頻繁にお聞きします。

この2つの制度は、海外にいる外国人材を日本に呼び寄せるという目的こそ同じですが、その法的根拠、役割、対象となる人材、費用構造など、あらゆる面で根本的に異なります。どちらを選ぶかによって、採用できる人材の属性や、必要な手続き、コストが大きく変わってくるのです。

本記事では、これら2つの制度を専門家の視点から徹底比較し、企業の皆様が自社の採用戦略に最適な「正しい入口」を選択できるよう、具体的な判断基準をお示しいたします。

この記事を読むとわかること

  • 「有料職業紹介」と「特定技能の送出し機関」の役割と法的な違い
  • 採用したい人材のビザによって、利用すべき制度がどう変わるか
  • それぞれのルートでの採用にかかる費用の構造と目安
  • 信頼できる「有料職業紹介事業者」と「送出し機関」を見極めるポイント
  • 自社の採用ニーズに最適なルートを選択するための判断基準

海外人材を採用したいけど、どのルートが最適?

「海外のエンジニアを採用したいけど、誰に頼めばいいの?」

「特定技能の候補者を探しているけど、『送出し機関』って何?」

「有料職業紹介と送出機関、手数料や仕組みはどう違うの?」

「悪質なブローカーに騙されたくないけど、どうやって見分ければ…」

「うちの会社に合った採用方法を、専門家に相談したい」

1. はじめに:海外人材採用、成功の鍵は「正しい入口」の選択

海外人材の採用を決意した企業が次に直面するのは、「どうやって候補者を見つけ、日本に呼び寄せるか?」という課題です。この段階で多くの企業が耳にするのが、「有料職業紹介」と「特定技能の送出機関」という2つのキーワードです。

しかし、これら2つの制度の役割と法的な位置づけを混同しているケースが非常に多く、結果として「思っていた人材と違う」「予想以上にコストがかかった」「手続きが複雑で時間がかかった」といった問題が発生しています。

成功の鍵:制度の違いを正しく理解すること

海外人材採用の成功は、「どの制度を、いつ、どのように活用するか」を正しく判断することから始まります。本記事では、2つの制度を明確に比較し、企業が自社の採用目的に合った「正しい入口」を選択するための実践的なガイドを提供いたします。

2. 【制度比較】「有料職業紹介」と「特定技能の送出し機関」の全体像

まず、2つの制度の根本的な違いを理解するために、詳細な比較表をご覧ください。これにより、それぞれが全く異なる制度であることが明確になります。

比較項目有料職業紹介事業特定技能の送出機関
根拠法職業安定法日本と相手国との二国間取決め(MOC)
主な役割求人企業と求職者のマッチング特定技能候補者の育成・送出し
対象在留資格技術・人文知識・国際業務、高度専門職など
(特定技能も扱い可能)
特定技能のみ
許可・認定機関厚生労働大臣相手国政府
手数料の対象求人企業から成功報酬送出し国の定める範囲内
企業の関与度直接的な契約関係日本の機関を通じた間接的関係

重要なポイント

この表からわかるとおり、両者は法的根拠から対象となる人材まで、あらゆる面で異なる制度です。採用したい人材の職種や在留資格によって、適切な制度が決まってくるのです。

3. ルート1:「有料職業紹介事業」活用のケース(主に技人国ビザなど)

根拠法:職業安定法

有料職業紹介事業は、職業安定法に基づき厚生労働大臣の許可を得た事業者が、求人企業と求職者(国籍を問わず)のマッチングを行い、成功報酬として手数料を得る事業です。

対象となる人材(在留資格)

  • 技術・人文知識・国際業務(技人国):エンジニア、営業、通訳、デザイナーなど
  • 高度専門職:高度な知識・技術を有する専門人材
  • 専門職:会計士、弁護士などの資格職
  • 企業内転勤:海外支社からの転勤者
  • 特定技能も扱い可能(ただし、送出機関との連携が必要な場合が多い)

企業の関わり方

  1. 日本国内の有料職業紹介事業者に採用したい人材の要件を伝える
  2. 事業者から候補者の紹介を受ける(書類選考、面接等)
  3. 採用決定後、紹介手数料を支払う
  4. 在留資格認定証明書(COE)申請は、企業自身または行政書士が行う
  5. ビザ取得後、来日・就労開始

4. ルート2:「特定技能の送出し機関」活用のケース(特定技能ビザ専門)

根拠法:二国間取決め(MOC)

特定技能制度における送出機関は、日本と相手国との二国間取決め(MOC:Memorandum of Cooperation)に基づき、相手国政府が認定した機関です。悪質なブローカー排除と適切な候補者の送出しを目的とした重要な仕組みです。

主な役割

  • 特定技能候補者に対する求人情報の提供
  • 日本語教育および技能研修の実施
  • 出国前の各種手続きサポート
  • 候補者の適性評価と選抜
  • 悪質なブローカーの排除

対象となる人材(在留資格)

「特定技能」ビザに限定されます。
対象分野:介護分野、ビルクリーニング分野、工業製品製造業分野、建設分野、造船・舶用工業分野、自動車整備分野、航空分野、宿泊分野、自動車運送業分野、鉄道分野、農業分野、漁業分野、飲食料品製造業分野、外食業分野、林業分野、木材産業分野の16分野

企業の関わり方

  1. 日本の登録支援機関または人材紹介会社に相談
  2. 相手国の認定送出機関と連携し、候補者の紹介を受ける
  3. 特定技能評価試験の合格者から選考
  4. 雇用契約の締結
  5. COE申請・ビザ取得支援
  6. 来日後の支援実施(登録支援機関への委託も可能)

5. 【コスト比較】手数料や費用の構造はどう違う?

有料職業紹介の場合

  • 企業が支払う紹介手数料:理論年収の30~35%が相場
  • 支払いタイミング:採用決定時(成功報酬型)
  • その他費用:COE申請費用、ビザ申請サポート費用など
  • 候補者の負担:基本的になし(法律で制限されている)

特定技能(送出機関経由)の場合

  • 企業が支払う費用:登録支援機関への支援委託費、紹介手数料など
  • 送出機関への費用:国により異なる(透明性の確保が重要)
  • 継続的な支援費用:月額2~5万円程度(登録支援機関への委託の場合)
  • その他費用:技能試験費用、日本語試験費用など

重要な注意点

特定技能制度において、候補者本人から不当に高額な手数料を徴収する悪質なブローカーや送出機関が存在します。

  • 候補者が借金を負って来日するケース
  • 違法な仲介業者による搾取
  • 契約内容の不透明性

これらを避けるため、信頼できる日本の登録支援機関や人材紹介会社を通じて、適切な送出機関と連携することが不可欠です。

6. 【最重要】信頼できる事業者を見極めるためのチェックポイント

有料職業紹介事業者を選ぶ場合

必須チェック項目

  • 許可番号の確認:厚生労働省の「有料職業紹介事業許可」を保有しているか
  • 専門性:外国人の在留資格に関する知識や実績が豊富か
  • 透明性:契約内容や手数料体系が明確に提示されているか
  • サポート体制:ビザ申請の専門家(行政書士等)と連携しているか
  • 実績:同業種での採用成功事例があるか

送出機関が関わる場合(登録支援機関等を選ぶ際)

重要確認事項

  • 送出機関の認定状況:提携している送出機関が相手国政府の認定を受けているか
  • MOC遵守:二国間取決めの内容を適切に理解し遵守しているか
  • 候補者保護:候補者本人から不当な費用を徴収していないか確認する姿勢があるか
  • 専門家連携:行政書士など、ビザ申請の専門家と適切に連携しているか
  • 継続支援:来日後の支援体制が整備されているか

避けるべき事業者の特徴

  • 許可・認定の確認を拒む、または曖昧な回答をする
  • 手数料や費用の内訳を明確に説明しない
  • 候補者の負担について言及を避ける
  • 過度に低料金を謳い、後から追加費用を請求する
  • 法的知識が不足している、または間違った情報を提供する

7. まとめ:自社の採用戦略に最適なパートナーを選ぼう

最適な採用ルート選択の判断基準

1. 採用したい職種・人材の明確化

「どのような職種の、どの在留資格の人材が欲しいのか」を明確にすることが第一歩です。

2. 在留資格による制度の選択

  • 専門職(技人国など) → 有料職業紹介
  • 特定産業分野の技能者(特定技能) → 送出機関との連携

3. 事業者の適法性と信頼性の確認

いずれのルートでも、事業者の許可・認定状況、実績、透明性を必ず確認してください。

海外人材採用の成功は、適切な制度の選択から始まります。「安いから」「紹介されたから」といった理由ではなく、自社の採用戦略に基づいた戦略的な判断を行うことが重要です。

また、どちらのルートを選択する場合でも、ビザ申請は専門性の高い分野です。確実な許可取得と法令遵守のため、行政書士などの専門家と連携することを強くお勧めいたします。

行政書士しかま事務所の海外人材採用コンサルティング

海外人材採用の「入口」で迷ったら、まずご相談ください。
貴社のニーズに最適なルートと、コンプライアンスに則った確実なビザ取得を専門家がナビゲートします。

当事務所の強み

  • 特定技能・技人国ビザに特化した専門性
  • 企業の法務パートナーとしての戦略的サポート
  • 許可を取る「戦略家」としてのこだわり

具体的なサポート内容

  • 最適な在留資格と採用ルートの提案
  • 契約内容のリーガルチェック
  • COE申請の代行
  • 総合的なコンプライアンス相談

本記事の情報は2025年6月29日時点の法令・運用に基づいており、今後の法改正等により変更される可能性があります。 具体的な手続きについては、必ず最新の情報を確認の上、専門家にご相談ください。 当事務所では正確な情報提供に努めておりますが、本記事の内容によって生じた損害については責任を負いかねます。

お気軽にお問い合わせください。090-3426-1600営業時間 9:00 - 18:00 [ 土日・祝日除く ]

メールでのお問い合わせはこちら オンライン相談も承っております