【技人国ビザ】「人文知識」と「国際業務」がまたがる仕事の申請戦略

【技人国ビザ】「人文知識」と「国際業務」がまたがる仕事の申請戦略|海外営業・グローバル人事・登録支援機関担当者向け

【技人国ビザ】「人文知識」と「国際業務」がまたがる仕事の申請戦略

海外営業・グローバル人事・登録支援機関担当者向け

読了時間:約15分

この記事を読むとわかること

  • 技人国ビザの「人文知識」と「国際業務」の正しい違いと関係性
  • 複数の区分にまたがる仕事の場合、どちらで申請すべきかの判断基準
  • 入管が「主たる活動」をどう見極めるか、その審査ポイント
  • 「海外営業」「グローバル人事」「登録支援機関」など具体的なケースでの考え方
  • 複合的業務の専門性をアピールする書類作成のコツ

その仕事、「人文知識」?「国際業務」?それとも両方?

「海外営業職、これって『人文知識』?それとも『国際業務』?」

「外国人社員の労務管理をする仕事、ビザはどうなるの?」

「登録支援機関で働く外国人のビザって、何が正解?」

「業務内容が半々くらいの場合、どちらで申請した方が有利?」

「職務内容説明書に、正直に全部書くと不利になる?」

1. はじめに:あなたの仕事は「人文知識」?「国際業務」?

行政書士しかま事務所の鹿間と申します。当事務所は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の申請支援を専門としており、これまで多数の企業様および外国人の方々のビザ取得を継続的にサポートしてまいりました。

近年、グローバル化が進む現代ビジネスにおいて、従来の単一専門分野では対応しきれない複合的な職務が急増しています。例えば、「海外市場を分析し(人文知識)、現地で交渉する(国際業務)」、「日本の労働法制を理解しながら(人文知識)、多言語で外国人社員をサポートする(国際業務)」といった業務が代表的です。

複合的職務の増加による申請の複雑化

このような複合的職務に就く外国人の技人国ビザ申請では、「人文知識」と「国際業務」のどちらで申請すべきか、という判断が非常に重要かつ難しい問題となっています。誤った区分での申請は、不許可リスクを高めるだけでなく、再申請時の負担も大きくなってしまいます。

本記事では、この「申請区分の判断」と「入管への説明戦略」について、2025年6月時点の最新の法令・運用情報および2024年3月の関連運用明確化に基づき、具体的なケーススタディを交えながら専門家のノウハウを徹底解説いたします。複雑な職務内容を整理し、最適な申請戦略を構築するための実践的な指針をお示しします。

2. 【基本の整理】「人文知識」と「国際業務」の定義と具体例

人文知識

法律学、経済学、社会学、心理学等の人文科学系の専門知識を必要とする業務

典型的な業務例

  • 経理・会計業務
  • 法務・コンプライアンス
  • マーケティング分析
  • 人事・労務管理
  • 経営コンサルティング

国際業務

外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務

典型的な業務例

  • 翻訳・通訳業務
  • 海外取引・貿易業務
  • 外国語による顧客対応
  • 海外展開支援
  • 異文化コミュニケーション

重要な違いと関連性

「人文知識」は大学等での学問的素養との関連性が重視される一方、「国際業務」は外国人としてのバックグラウンドや文化的感性が活かされる点が特徴です。現代の職務では、これらが密接に関連し合うケースが多く、どちらを「主たる活動」として位置づけるかが申請戦略の核心となります。

3. 申請区分決定の大原則:「主たる活動」はどちらか?

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の申請において、職務内容が複数の区分にまたがる場合、入管は「主たる活動(最も重要で、多くの時間を割く活動)」がどの区分に該当するかで判断するという大原則があります。

申請戦略の基本的な考え方

  1. 1. 職務内容を「人文知識」と「国際業務」に分類・整理する
  2. 2. 「主たる活動」がどちらに該当するかを客観的に判断する
  3. 3. 主たる活動を中心に据えた申請書類を構成する
  4. 4. 学歴・職歴との関連性を明確に説明する

注意すべき点

「主たる活動」の判断は、単純に時間的な比重だけで決まるものではありません。業務の重要性、報酬への影響度、本人の専門性との関連の深さなど、複合的な要素を総合的に考慮する必要があります。この判断を誤ると、審査の過程で整合性の問題を指摘され、追加説明や最悪の場合は不許可となるリスクがあります。

4. 「主たる活動」を判断する3つの基準

① 業務時間の配分

全業務時間のうち、各区分の業務が占める割合(%)を客観的に分析します。主たる活動は一般的に50%以上を占めることが望ましいとされています。

実務での計算例

  • 週40時間勤務の場合、主たる活動は20時間以上
  • 月単位での業務時間配分も有効な指標
  • 繁忙期・閑散期の変動も考慮に入れる

② 業務の重要性と報酬との関連性

どちらの業務が、企業の事業においてより重要で、本人の報酬決定においてより重視されているかを評価します。

判断要素

  • 企業の事業戦略における位置づけ
  • 売上や利益への直接的な貢献度
  • 職務給・成果給の基準となる業務
  • 昇進・昇格時の評価基準

③ 本人の学歴・職歴との最も強い関連性

申請者のバックグラウンド(大学での専攻やこれまでのキャリア)と、最も強く結びつくのはどちらの業務かを分析します。

関連性の評価基準

  • 大学での専攻分野と業務内容の直接的な関連
  • 過去の職歴で培った専門性の活用度
  • 資格や認定の活用可能性
  • 継続的な専門性の発展可能性

5. 【ケーススタディ】複合的職務の申請戦略と立証ポイント

ケース1:海外マーケティング・海外営業担当者

職務内容

  • • 海外市場の調査・分析
  • • マーケティング戦略の立案
  • • 現地代理店との交渉
  • • 英語でのプレゼンテーション
  • • 契約書の作成・レビュー

申請戦略の考え方

  • • 市場分析:人文知識(経済学)
  • • 戦略立案:人文知識(経営学)
  • • 現地交渉:国際業務
  • • 語学対応:国際業務
  • • 契約業務:人文知識(法学)

推奨申請戦略

経営学・経済学専攻の場合:「人文知識」を主軸に申請。市場分析や戦略立案が業務の核心であり、専門知識を国際的な場面で活用するという構成で説明。
国際関係学・語学専攻の場合:「国際業務」を主軸に申請。異文化コミュニケーションや現地との交渉が主たる活動である点を強調。

ケース2:グローバル人事・労務担当者

職務内容

  • • 日本の労働法制に基づく制度設計
  • • 外国人社員の労務管理
  • • 多言語での社内コミュニケーション
  • • 異文化理解促進プログラム
  • • 海外拠点の人事制度統一

申請戦略の考え方

  • • 労働法制:人文知識(法学)
  • • 制度設計:人文知識(社会学)
  • • 多言語対応:国際業務
  • • 異文化理解:国際業務
  • • 海外統一:国際業務

推奨申請戦略

法学部・社会学部卒の場合:「人文知識」を主軸に申請。日本の労働法制に関する専門知識が業務の基盤であることを強調。
その他の学部卒の場合:「国際業務」を主軸に申請。外国人社員との多言語コミュニケーションや異文化理解が主たる活動である点を前面に出す。

ケース3:国際法務・契約担当者

職務内容

  • • 国際契約書の作成・審査
  • • 海外法制度の調査・分析
  • • 外国語での法的文書作成
  • • 国際紛争の対応
  • • コンプライアンス体制構築

申請戦略の考え方

  • • 契約法務:人文知識(法学)
  • • 法制度分析:人文知識(法学)
  • • 外国語文書:国際業務
  • • 国際紛争:国際業務
  • • コンプライアンス:人文知識

推奨申請戦略

一般的な戦略:「人文知識」を主軸に申請。法律知識が業務の絶対的な基礎となるため、その専門知識を国際的な場面で活用するという構成で説明することが最も自然で説得力がある。

ケース4:登録支援機関・人材派遣会社の外国人担当者

職務内容

  • • 外国人への生活相談・支援
  • • 行政手続きの説明・代行
  • • 多言語での各種書類作成
  • • 日本の社会制度の説明
  • • 異文化適応支援

申請戦略の考え方

  • • 生活相談:国際業務
  • • 行政手続:人文知識(行政学)
  • • 多言語対応:国際業務
  • • 制度説明:人文知識(社会学)
  • • 異文化支援:国際業務

推奨申請戦略

生活相談メインの場合:「国際業務」を主軸に申請。外国人の文化的背景への理解と多言語対応が業務の核心。
制度説明・書類作成メインの場合:「人文知識」を主軸に申請。日本の社会保障制度や行政手続きに関する専門知識の提供が主たる活動。

6. 説得力を高める!複合的業務のための書類作成術

職務内容説明書の作成ポイント

1. 業務の明確な分類

担当業務を「人文知識に関連する業務」「国際業務に関連する業務」に明確に分類し、それぞれの業務内容を具体的に記述します。

記述例
「【人文知識関連業務(約60%)】市場分析レポート作成、競合他社調査、マーケティング戦略立案」
「【国際業務関連業務(約40%)】英語でのクライアント対応、海外代理店との交渉、契約書翻訳」

2. 時間配分の明記

それぞれの業務内容について、おおよその時間配分(%)を明記し、「主たる活動」が何かを明確にします。

週40時間中、約24時間(60%)を市場分析・戦略立案に従事
週40時間中、約16時間(40%)を国際的な業務に従事

3. 専門性の具体的な記述

単なる業務の羅列ではなく、なぜその業務に専門知識が必要なのか、どのような専門性を活用するのかを具体的に説明します。

採用理由書(企業作成)の作成ポイント

1. 申請区分の明確化

申請する区分(主たる活動)を明確にし、その業務が企業の事業戦略上いかに重要であるかを強調します。

記述例
「本職務における主たる活動は、経済学・経営学の専門知識を活用した海外市場分析及びマーケティング戦略立案(人文知識)であり、当社の海外展開戦略の核心となる業務です。」

2. 複合的業務の必要性

なぜこの複合的な業務をこの人材に任せたいのか、なぜ単一の専門性では不十分なのかを論理的に説明します。

3. 学歴・職歴との関連性

本人の学歴・職歴が、この複合的業務全体(特に主たる活動)を遂行する上で最適であることを論理的に記述します。

書類作成時の注意点

  • 職務内容説明書と採用理由書の内容を一致させる
  • 時間配分は実態に即した合理的な数値を記載する
  • 「主たる活動」の一貫性を全書類で保つ
  • 専門用語は適切に使用し、必要に応じて説明を加える

7. まとめ:正しい区分判断と丁寧な立証で、グローバルキャリアを築く

技人国ビザの申請において、職務内容が「人文知識」と「国際業務」にまたがることは、現代のグローバル化したビジネス環境においてはむしろ自然なことです。重要なのは、その複合的な業務内容を恐れることなく、戦略的にアプローチすることです。

成功への鍵

  • 業務内容の正直かつ正確な分析
  • 「主たる活動」の明確な定義
  • 客観的な判断基準の活用
  • 説得力のある書類作成

避けるべきリスク

  • 曖昧な区分判断での申請
  • 書類間の整合性の欠如
  • 学歴との関連性の軽視
  • 専門家の助言を求めない独断

複合的な職務内容は、決して申請の障害ではありません。むしろ、現代のグローバル人材が持つべき多様な専門性の証明となります。適切な戦略と丁寧な立証により、その価値を最大限に活かした申請が可能です。

最終的な申請戦略

「主たる活動」を軸とした一貫性のある申請書類の構成、客観的な判断基準に基づく区分決定、そして申請者の専門性を最大限に活かした立証戦略。これらの要素を組み合わせることで、複合的な職務内容であっても、審査官に対して説得力のある申請を行うことができます。

行政書士しかま事務所の「複合的職務」ビザ戦略コンサルティング

行政書士しかま事務所は、技人国ビザにおける複合的職務の申請という、専門的な判断を要する案件のサポートに豊富な経験と実績を有しています。単なる申請代行ではなく、お客様の事業戦略と人材戦略を理解した上で、最適な申請戦略をご提案いたします。

具体的なサポート内容

  • 企業の採用計画と候補者の経歴を基にした、最適な申請区分の判断と戦略立案
  • 審査官に誤解を与えない、説得力のある職務内容説明書や採用理由書の作成支援・レビュー
  • 登録支援機関や人材派遣会社など、業界特有の業務内容に関するビザ適合性診断

よくあるご相談

  • 「うちの会社のこのポジションは、どちらで申請すべき?」
  • 「この候補者の経歴で、業務との関連性をどう説明すれば?」
  • 「複合的な業務内容の場合、どう書類を作成すべき?」

私たちの強み

複雑なグローバル業務のビザ申請において、私たちは単なる申請代行ではなく、「戦略的パートナー」として機能します。採用のミスマッチと不許可リスクを防ぐため、事前の詳細な分析と、審査官の視点を考慮した申請戦略の構築を行います。

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複雑なグローバル業務のビザ申請、専門家が最適な戦略を描きます。
採用のミスマッチと不許可リスクを防ぐために、ぜひご相談ください。

この記事の情報は2025年6月25日時点での法令・運用に基づいています。在留資格の申請については、個別の事情により判断が異なる場合があります。具体的な申請については、必ず専門家にご相談ください。
免責事項:本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の最新の運用や個別の事情を考慮した専門家の判断が必要です。

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