外国人採用「オファー前」に実施すべきビザ経歴チェックと、内定取消しリスクの回避法

外国人採用「オファー前」に実施すべきビザ経歴チェックと、内定取消しリスクの回避法

外国人採用「オファー前」に実施すべき
ビザ経歴チェックと、内定取消しリスクの回避法

読了時間:約12分 | 行政書士しかま事務所

この記事を読むとわかること

  • 外国人採用における「内定取消し」がなぜ重大な法的リスクになるのか
  • 採用オファー前に専門家がチェックする「ビザ経歴」の重要項目
  • 候補者に失礼なくビザ関連情報を確認するための質問例
  • ビザ取得の可能性を事前に予測し、採用のミスマッチを防ぐ方法
  • 「予防法務」として行政書士を活用する具体的なメリット

その内定、本当に"出して"大丈夫ですか?

「最高の候補者が見つかった!すぐにでも内定を出したいけど、ビザは…?」

「候補者は『ビザは大丈夫』と言っているけど、本当に信じていいの?」

「内定を出した後にビザが不許可になったら、どうすれば…」

「ビザのリスクを考えると、外国人採用に踏み切れない…」

1. はじめに:「内定後にビザが取れない…」企業が陥る最悪のシナリオ

行政書士しかま事務所の鹿間です。当事務所では、特定技能および技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザに特化し、年間約100件規模の外国人採用支援を行っております。

優秀な外国人材を見つけ、面接も順調に進み、「ぜひ採用したい!」と内定を出した瞬間の喜び。しかし、その後のビザ申請が不許可になり、やむなく内定を取り消さざるを得なくなる…。

これが、外国人採用において企業が直面しうる最悪のシナリオの一つです。

この事態は、単に「採用に失敗した」では済まされません。重大な法的リスクを伴う問題なのです。

本記事では、このリスクを回避するための「予防法務」として、内定を出す前に実施すべき「ビザ経歴チェック」の重要性と具体的な方法を解説いたします。

2. 【法的リスク】なぜ外国人への「内定取消し」は危険なのか?

内定の法的性質

日本の労働法では、「内定」は労働契約の成立と解釈されます。つまり、内定通知書を交付した時点で、法的には雇用関係が開始されているのです。

解雇権濫用法理の適用

「内定取消し」は、労働契約法16条に基づく解雇権濫用法理により、以下の条件を満たさない限り違法となる可能性があります

  • 客観的に合理的な理由があること
  • 社会通念上相当と認められること

「ビザが取得できなかった」は常に正当な理由ではない

重要なのは、「ビザが取得できなかった」という理由が、常に正当な取消事由と認められるとは限らないことです。

企業側に、採用候補者のビザ取得可能性を事前に調査する注意義務があったと判断される可能性があります。

企業が負うリスク

  • 訴訟リスク:不当な内定取消しとして提訴される可能性
  • 損害賠償リスク:慰謝料や逸失利益の請求
  • レピュテーション低下:企業イメージの悪化
  • 採用コストの無駄:時間と労力の損失

3. 【解決策】採用失敗を未然に防ぐ「オファー前・ビザ経歴チェック」とは

予防法務の新常識

上記のリスクを回避する最も確実な方法が、内定(採用オファー)を出す前の最終段階で、専門家が候補者のビザ取得可能性を評価する「ビザ経歴チェック(ビザ・デューデリジェンス)」です。

従来の採用プロセス

  1. 書類選考
  2. 面接(1次・2次)
  3. 内定通知
  4. ビザ申請
  5. ❌ ビザ不許可で内定取消し

推奨する新プロセス

  1. 書類選考
  2. 面接(1次・2次)
  3. ビザ経歴チェック
  4. 内定通知
  5. ✅ 確実なビザ申請

これは、採用のミスマッチをなくし、企業と候補者双方を守るための「予防法務」なのです。

4. 専門家は何をチェックする?ビザ経歴チェックの8つの核心項目

① 学歴・専攻内容

卒業した大学・専門学校等の種類、専攻分野の詳細確認

② 職務経歴

これまでの職務内容、役職、期間の詳細な分析

③ 学歴・職歴と業務内容の関連性

技人国ビザ等における最重要審査ポイントの専門的評価

④ 過去の在留資格(ビザ)遍歴

これまでどのようなビザで、どのくらいの期間滞在していたか

⑤ 転職回数と理由、離職後の空白期間

安定性、定着性の評価。特に3ヶ月以上の空白期間の有無

⑥ 資格外活動の状況(留学生だった場合)

週28時間ルールなどを遵守していたかの確認

⑦ 素行(法令遵守状況)

交通違反歴、犯罪歴の有無(本人からのヒアリング)

⑧ その他(家族構成、扶養状況など)

将来のビザ更新や永住申請にも関わる要素の確認

5. 採用プロセスへの組み込み方と、候補者への丁寧な確認方法

適切なタイミング

書類選考、一次・二次面接を経て、最終候補者に絞り込み、内定を出す直前の段階が最適です。

候補者への説明例

「○○様の採用を前向きに考えており、スムーズな入社手続き(ビザ申請)のために、専門家(行政書士)を交えて在留資格の取得可能性を事前に確認させていただけますでしょうか。これは○○様にとっても、入社後のビザの不安を解消するメリットがございます。」

必要な書類

  • 詳細な職務経歴書
  • 卒業証明書(最終学歴)
  • 在留カードの写し
  • パスポートの出入国記録部分
  • 前職の退職証明書(該当する場合)

Win-Winの関係構築

このプロセスは候補者にとっても、「この会社は外国人採用に真剣で、私のキャリアを大切に考えてくれている」という印象を与え、信頼関係の構築につながります。

6. 「ビザ経歴チェック」がもたらす企業への真のメリット

法的リスクの回避

内定取消しという重大な法的リスクを抜本的に回避できます

時間とコストの削減

採用プロセスの時間とコストの無駄を大幅に削減できます

事業計画への影響最小化

ビザ取得の確実性が高まり、事業計画への影響を最小化できます

企業イメージの向上

候補者に対してコンプライアンス意識の高い、誠実な企業という印象を与えます

長期的なメリット

入社後のビザ管理(更新、変更等)もスムーズになり、継続的な外国人採用の基盤が構築されます。

7. まとめ:攻めの採用と守りの法務、両立のための新常識

グローバルな人材獲得競争において、優秀な外国人材への迅速なアプローチは不可欠です。しかし、その「攻めの採用」を支えるためには、オファー前の「ビザ経歴チェック」という「守りの法務(予防法務)」が新常識となっています。

成功の鍵

この一手間が、将来の大きなトラブルを防ぎ、企業と外国人社員の双方にとって良い結果をもたらします。

行動を起こす時期

外国人採用における「内定取消し」のリスクは、今すぐにでも対策が必要な経営課題です。明日から実践できる予防法務を始めましょう。

行政書士しかま事務所の「ビザ・デューデリジェンス」サービス

当事務所では、企業の外国人採用プロセスにおける
「ビザ・デューデリジェンス(ビザ経歴チェック)」サービスを提供しています。

サービス内容

  • 最終候補者の学歴・職歴と業務内容の関連性分析
  • 技人国ビザ等の取得可能性に関する専門的意見書作成
  • 潜在的なリスクの洗い出しと対策提案
  • 採用決定後のスムーズなビザ申請手続きサポート

こんな企業様におすすめ

  • 優秀な外国人候補者を見つけたが、ビザの確実性に不安がある
  • 過去にビザ不許可で内定取消しになった経験がある
  • 外国人採用のコンプライアンスレベルを向上させたい
  • 採用の最終決定前に専門家の意見が欲しい

「内定を出す前に、この候補者のビザが本当に大丈夫か、
専門家のセカンドオピニオンが欲しい」

そのようなご要望に、技人国ビザ専門の行政書士が的確にお応えします。

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本記事の情報は2025年6月22日時点のものです。法改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁のウェブサイト等でご確認ください。

ビザ申請の可否は個別のケースにより異なります。具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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