【2024年開始】日本の「デジタルノマドビザ」とは?対象国・年収要件・手続きを行政書士が徹底解説
【2024年開始】日本の「デジタルノマドビザ」とは?
対象国・年収要件・手続きを行政書士が徹底解説
はじめに:デジタルノマドビザとは
2024年4月1日、日本政府は「デジタルノマドビザ」(正式には「特定活動53号」)の受付を開始しました。この新しい在留資格は、海外の企業や顧客と契約し、情報通信技術を用いたリモートワークを行う外国人が、最長6ヶ月間日本に滞在することを可能にするものです。
この制度によって、高収入の外国人専門家が日本で生活・消費活動を行いながら、既存の就労資格とは異なり、日本の労働市場に影響を与えることなく海外の会社のために働くことが可能になります。
本記事では、行政書士として、デジタルノマドビザの制度概要から申請手続き、活動上の注意点まで、2025年5月時点の最新情報を踏まえて解説します。
1. デジタルノマドビザの概要
「デジタルノマド」とは、情報通信技術を活用し、特定の場所に縛られることなく、世界各地を移動しながら働くライフスタイルを実践する人々のことを指します。
日本版デジタルノマドビザ(特定活動53号)は、海外の企業との雇用契約に基づいてリモートワークを行う外国人や、海外の顧客に対してオンラインでサービスを提供する個人事業主が、最長6ヶ月間、日本に滞在することを認める在留資格です。
デジタルノマドビザでできる活動
- 外国の法人・団体との雇用契約に基づき、日本において情報通信技術を用いて当該団体の外国にある事業所の業務に従事する活動
- 外国にある者に対し、情報通信技術を用いて役務を有償で提供し、または物品等を販売等する活動(ただし、日本に入国しなければ提供・販売できないものを除く)
2. 対象者の条件
デジタルノマドビザの取得には、以下の条件を全て満たす必要があります。
2-1. 対象となる国籍
査証免除国(ビザなしで日本に入国できる国)かつ租税条約締結国の国籍保有者が対象となります。現在、以下の49か国・地域の国籍保有者が対象です。
デジタルノマドビザ対象国・地域一覧(2025年5月現在) | ||||
---|---|---|---|---|
アイスランド | アイルランド | アメリカ | アラブ首長国連邦 | イギリス |
イスラエル | イタリア | インドネシア | ウルグアイ | エストニア |
オーストラリア | オーストリア | オランダ | カタール | カナダ |
クロアチア | シンガポール | スイス | スウェーデン | スペイン |
スロバキア | スロベニア | セルビア | タイ | チェコ |
チリ | デンマーク | ドイツ | トルコ | ニュージーランド |
ノルウェー | ハンガリー | フィンランド | フランス | ブラジル |
ブルガリア | ブルネイ | ベルギー | ポーランド | ポルトガル |
マレーシア | メキシコ | ラトビア | リトアニア | ルーマニア |
ルクセンブルク | 韓国 | 香港 | 台湾 |
2-2. 年収要件
申請時点で、申請者個人の年収が1,000万円以上であることが必要です。
年収の判断基準(2025年5月時点の運用)
- 原則として、直近の年収が1,000万円以上であることが必要
- 昇給昇格により申請時点から将来にわたる年収が1,000万円以上となることが見込まれる場合も認められる
- 新規採用で契約年俸が1,000万円の場合も認められる
- 個人事業主の場合は、契約金額ではなく、必要経費を差し引いた利益の金額で判断
- 複数の収入源がある場合、安定的な収入と認められれば合算して1,000万円以上と評価可能
2-3. 民間医療保険加入義務
デジタルノマドビザでの滞在者は「中長期在留者」に該当せず、日本の公的医療保険に加入できないため、民間の医療保険への加入が義務付けられています。
医療保険の要件
- 滞在予定期間をカバーする保険であること
- 傷害・疾病への治療費用補償額が1,000万円以上であること
- 死亡については遺体輸送費または死亡時の保険金支給が補償内容に含まれていること(金額の定めなし)
- クレジットカードに付帯する保険でも、上記条件を満たしていれば可
3. 滞在期間と活動制限
3-1. 滞在期間
デジタルノマドビザでの滞在期間は最長6ヶ月間で、在留期間の更新はできません。日本から出国後、6ヶ月以上経過すれば再びデジタルノマドビザで入国することが可能です。
なお、デジタルノマドビザ保持者は「中長期在留者」には該当しないため、在留カードは交付されません。
3-2. 活動制限
デジタルノマドビザでは、以下の活動が禁止されています
- 日本の公私の機関(個人を含む)と雇用契約や請負契約等を結んで行う就労活動
- 資格外活動(アルバイトなど)
- 日本に入国しなければ提供または販売等できないサービス・物品の提供
重要
デジタルノマドビザの保持者は、滞在中に日本の企業や個人と新たに契約を結び、仕事を請け負うことはできません。あくまで海外の雇用主や顧客のための業務のみが許可されています。
4. 家族の帯同について
デジタルノマドの配偶者および子供も、特定活動54号の在留資格で日本に滞在することが可能です。
4-1. 家族の要件
- 査証免除対象国・地域の国籍保有者であること(デジタルノマド本人と同じ国籍である必要はない)
- デジタルノマド本人と同様に、民間医療保険に加入していること(傷害疾病への治療費用補償額は1,000万円以上必要)
- デジタルノマド本人との身分関係を証明できること
家族の滞在期間は、デジタルノマド本人と同様に最長6ヶ月間です。家族も在留カードは交付されません。
5. 申請手続き
デジタルノマドビザの申請方法には主に以下の通りです。
5-1. 在留資格認定証明書(COE)申請ルート
既に日本国内に受入機関や代理人がいる場合は、在留資格認定証明書(COE)の交付申請から始めることができます。
- 日本の入国管理局に在留資格認定証明書交付申請を行う
- 審査に通ると在留資格認定証明書が交付される
- 証明書を本国の日本大使館・領事館に提出し、ビザ申請を行う
- ビザが発給されたら、日本に入国できる
5-2. 必要書類
申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請書または査証申請書
- 証明写真
- 滞在中の活動予定を説明する資料
- 年収額(1,000万円以上)を証明する資料(納税証明書または所得証明書)
- 現在の稼働状況を証明する資料(雇用契約書、在職証明書など)
- 民間医療保険の補償内容に係る説明書
- 民間医療保険の加入証書および約款の写し
- 家族を帯同する場合は、身分関係を証する書類(結婚証明書、出生証明書など)
- 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記し、簡易書留用の切手を貼付したもの)
外国語で作成された書類には、日本語の訳文を添付する必要があります。また、日本で発行される証明書は、発行日から3か月以内のものを提出してください。
6. デジタルノマドビザに関するQ&A
Q1: 日本滞在中に一時的に出国して再入国することはできますか?
A: はい、可能です。デジタルノマド向けの在留資格「特定活動」で滞在中に、在留期限の満了日以前に再び入国する意図をもって一時的に出国する場合は、再入国許可またはみなし再入国許可による出国が可能です。在留期限の満了日までに日本に戻れば、当該在留資格を維持できます。
Q2: 滞在中に日本国内を移動しながら生活することはできますか?
A: はい、可能です。デジタルノマドビザでは、滞在中に日本国内の複数の場所に移動して生活するための特別な手続きは必要ありません。
Q3: デジタルノマドビザで滞在中、日本で所得税を納付する義務はありますか?
A: 多くの場合、日本での滞在期間が課税年度または継続する12か月において合計183日以下である等の租税条約上の要件を満たせば、日本において免税となります。ただし、租税条約の内容は国によって異なるため、事前に確認が必要です。
Q4: 本国から持ち込んだパソコンやスマートフォンを日本国内で使用できますか?
A: 日本の技術基準適合証明等を取得し、「技術基準適合マーク」が表示されている機器は使用できます。そうでない場合でも、日本の技術基準を満たし、国際規格に合致している機器(Wi-FiロゴやBluetoothロゴの表示があるもの)の一部は、入国から90日以内に限って使用できます。90日を超える場合は、日本の「技術基準適合マーク」が表示されている機器を使用するか、日本でレンタルしたモバイルWi-Fi機器に有線で接続するなど、直接電波を発しない方法で使用する必要があります。
7. まとめ
日本版デジタルノマドビザ(特定活動53号)は、海外から高収入を得ている専門家が、最長6か月間日本で生活しながらリモートワークを行うことを可能にする制度です。ただし、年収1,000万円以上、対象国の国籍保有者であること、民間医療保険への加入など、いくつかの厳格な条件があります。
また、日本国内の企業・個人との雇用契約や請負契約に基づく就労は認められず、あくまで海外の雇用主や顧客のための業務のみが許可されている点に注意が必要です。
デジタルノマドビザの申請手続きや要件は複雑であり、また2024年に始まったばかりの制度であるため、今後運用が変わる可能性もあります。ビザ申請の経験が豊富な行政書士にご相談いただくことで、スムーズな申請手続きが可能となるでしょう。
行政書士しかま事務所のサポート
行政書士しかま事務所では、デジタルノマドビザ(特定活動53号)の申請サポートを承っております。申請書類の作成から、必要書類の収集アドバイス、申請代行まで、ワンストップでサポートいたします。
また、外国人の方向けに英語対応も可能です。デジタルノマドビザに関するご相談は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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