中国の富裕層が日本へ移住するためのビザ戦略

中国の富裕層が日本へ移住するためのビザ戦略:行政書士が徹底解説 | 行政書士しかま事務所

はじめに

こんにちは。行政書士しかま事務所の行政書士、鹿間です。当事務所では、日本への移住を希望する外国人の方々のビザ申請を多数サポートしてまいりました。近年、中国の富裕層の方々から日本への移住に関するご相談が増加しています。その背景には、日本の地理的近接性、高い生活環境の質、充実した教育水準、資産保全の安定性、そして新たなビジネス機会への期待があると考えられます。

日本に長期滞在または永住するためには、適切な「在留資格(ビザ)」の取得が不可欠です。特に中国の富裕層の方々にとって、資産背景や日本での活動予定に応じた最適なビザ選択が重要になります。また、2025年5月現在、日本政府は海外の優秀な人材や投資家を積極的に受け入れるための様々な制度改正を行っており、新たな移住の機会が生まれています。

本記事では、中国の富裕層の方々が日本へ移住するための主要な在留資格の選択肢、それぞれの要件、メリット・デメリット、そして申請における重要なポイントについて、2025年5月時点の最新情報をもとに解説いたします。

富裕層の日本移住における主要な在留資格(ビザ)の選択肢

中国の富裕層が日本への移住を検討する際、主に以下の在留資格(ビザ)が選択肢となります。それぞれの特徴と要件を詳しく見ていきましょう。

① 在留資格「経営・管理」(Business Manager Visa)

概要

「経営・管理」は、外国人が日本において会社を設立し事業を経営する、または事業の管理に従事するための在留資格です。富裕層の方々が自身の資産管理会社を設立したり、日本で新たなビジネスを展開したりする際の一般的な選択肢となります。

主な要件(2025年現在)

  • 事業所の確保:独立した事業所の確保が必要です。自宅とは別の事務所を賃貸するなどして証明する必要があります。
  • 事業規模要件:以下のいずれかを満たす必要があります。
    • 資本金・出資金が500万円以上
    • 常勤職員(日本人または永住者等)を2名以上雇用
  • 事業の継続性:具体的かつ実現可能な事業計画が求められます。収益性や事業の安定性が見込めることを示す必要があります。
  • 申請者の適格性:申請者自身が経営者または管理者として適格であることを示す必要があります。

富裕層にとっての活用例

「経営・管理」ビザは、以下のような事業活動を行う富裕層の方々に適しています

  • 日本国内での資産管理会社の設立・運営
  • 不動産投資・管理事業の展開
  • 貿易会社の設立(中国と日本の間のビジネス展開)
  • 飲食業などのサービス業への参入
  • コンサルティング業の展開
メリットデメリット・注意点
  • 比較的自由な事業活動が可能
  • 配偶者や子どもの帯同が可能(「家族滞在」ビザ)
  • 事業が安定すれば最長5年の在留期間が付与される
  • 永住許可申請の要件(10年の在留)を満たすことができる
  • 2025年1月から導入されたスタートアップビザを利用すれば、要件の猶予期間が最大2年間ある
  • 事業の継続性と収益性の証明が必要
  • 初回申請では短期間(4ヶ月~1年程度)の在留期間しか付与されないことが多い
  • 更新時に事業実績の審査が行われる
  • 税務申告や社会保険手続きなど事業運営に関わる義務がある
  • 実態のない形だけの会社設立では更新時に不許可となるリスクがある

スタートアップビザ(2025年最新情報)

2025年1月より、「外国人起業活動促進事業」(通称:スタートアップビザ)が制度一本化され全国展開されました。この制度を利用すると、「事業所の確保」と「事業の規模」の2つの要件を最大2年間猶予できます。この期間中に「特定活動」の在留資格で日本に滞在しながら、会社設立や事業準備を進め、要件を満たした後に「経営・管理」への在留資格変更が可能です。資金力はあるものの、日本での事業をゼロから立ち上げたい富裕層の方々に適した選択肢となります。

② 在留資格「高度専門職」(Highly Skilled Professional - HSP Visa)

概要

「高度専門職」は、高度な専門的知識や技術、経験を有する外国人材を対象とした在留資格です。学歴、職歴、年収、研究実績などをポイント化し、一定点数(70点)以上で認定されます。「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3類型があり、富裕層の方々は主に「高度経営・管理活動」に該当することが多いでしょう。

主な要件(2025年5月現在)

ポイント制による評価:以下の項目ごとにポイントが設定され、合計70点以上で認定

  • 学歴:博士号(30点)、修士号(20点)など
  • 職歴:10年以上(20点)、7年以上(15点)など
  • 年収:1,000万円以上(40点)、800万円以上(35点)など
  • 年齢:30歳未満(15点)、35歳未満(10点)など
  • 日本語能力:N1(15点)、N2(10点)など
  • その他:イノベーション実績、特許取得、投資経験など

特別高度人材制度(J-Skip)の要件(2023年4月導入)

2023年4月から導入された特別高度人材制度(J-Skip)では、ポイント計算をせずとも以下の要件を満たせば高度専門職として認定されます

  • 高度経営・管理活動の場合:事業の経営または管理に係る実務経験5年以上かつ年収4,000万円以上
  • 高度学術研究活動・高度専門・技術活動の場合:修士号以上取得かつ年収2,000万円以上、または実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上

富裕層にとっての活用例

「高度専門職」ビザは、以下のような富裕層の方々に適しています

  • 日本企業の役員として高額な役員報酬を得る方
  • 投資家として日本で活動する方(特に「高度経営・管理活動」)
  • 高い学歴と専門性を持ち、日本で専門分野の活動を行う方
  • 過去の経営実績や投資実績が豊富な方
メリットデメリット・注意点
  • 永住許可申請までの期間短縮
    • 70点以上:3年
    • 80点以上:1年
    • 特別高度人材(J-Skip):1年
  • 配偶者の就労制限の緩和(原則フルタイム就労可能)
  • 一定条件下での親の帯同が可能
  • 家事使用人の帯同が可能(特別高度人材は最大2名)
  • 入国・在留手続きの優先処理
  • 高度専門職2号への移行で在留期間が無期限になる
  • ポイント計算に必要な各種証明書類の準備が煩雑
  • 高い年収や学歴など厳格な要件がある
  • 特別高度人材(J-Skip)の要件は非常に高い水準(年収4,000万円以上など)
  • 在留期間更新時にも要件を維持していることの証明が必要
  • 本人の活動実態が伴わない場合は更新不許可となるリスクがある

③ 在留資格「特定活動」(特定の富裕層向け制度)

概要

「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を行うための在留資格です。2025年5月時点で、富裕層に関連する主な「特定活動」としては以下のようなものがあります。

金融・資産運用特区関連の特定活動

2024年6月、日本政府は北海道・東京・大阪・福岡の4地域を「金融・資産運用特区」に指定しました。この特区では、海外からの資産運用業の誘致や投資促進のための様々な規制緩和が行われています。2025年5月現在、特区内に拠点を設け、一定額の投資(1億2,000万円程度)を行う外国人投資家に対して、特定活動ビザの発給および永住権取得への優遇措置が検討されています。

また、福岡県では特区内でのベンチャー投資に関する規制緩和が進んでおり、個人投資家による出資制限が緩和されました。これにより、富裕層の個人投資家が日本のスタートアップ企業により投資しやすい環境が整えられています。

デジタルノマドビザ(特定活動46号)

2023年に新設された「特定活動46号」(通称:デジタルノマドビザ)は、日本国外の企業との契約に基づいて報酬を得ながら日本に短期滞在する外国人材を対象としています。年収1,000万円以上という要件から富裕層も対象となりうるビザですが、活動内容が「国外からの収入を得るリモートワーク」に限定されるため、移住の主目的となるものではありません。ただし、短期滞在中に移住候補地としての日本の視察や投資先の調査をするための選択肢となりえます。

メリットデメリット・注意点
  • 特区関連ビザは永住権取得への時間短縮が期待できる
  • デジタルノマドビザは比較的短期間(6ヶ月)の滞在でも取得可能
  • 特定の目的や活動に合わせた柔軟な対応が可能
  • 富裕層ならではの優遇措置が含まれることがある
  • 制度が新しく運用実績や審査基準が不透明な場合がある
  • 適用条件が限定的で該当するケースが少ない
  • 将来的な法改正により制度が変更される可能性がある
  • デジタルノマドビザは長期移住には適さない

各ビザ取得に向けた重要ポイントと準備

「経営・管理」ビザ取得のポイント

  • 事業計画のリアリティと継続性

    単なる形式的な会社設立ではなく、具体的な事業展開の見込みが明確に示された事業計画が必要です。特に、日本市場での収益性や事業の継続性を説明できるような内容が求められます。市場調査データや競合分析、差別化戦略など具体的な裏付けがあるとより説得力が増します。

  • 資本金の形成・出所証明

    資本金500万円以上を選択する場合、その資金の出所と送金経路を明確に証明する必要があります。特に中国からの送金については、送金規制も考慮した上で適切な手続きを踏む必要があります。また、「名義借り」と疑われないよう、資金の実質的な出資者と申請者の関係性も明確にすべきです。

  • 事務所の確保

    自宅とは別の独立した事業所の確保が必要です。賃貸借契約書や登記簿謄本などの書類で実態を証明します。単なるバーチャルオフィスやシェアオフィスでは不十分なケースが多いため、実際に事業運営ができる適切な事務所を準備しましょう。

  • 役員報酬の設定

    経営者として適切な報酬設定を行うことも重要です。極端に低い報酬設定は生活の実態や経営参画の本気度を疑われる可能性があります。一方で、会社の資金繰りとのバランスも考慮した現実的な設定が必要です。

  • スタートアップビザの活用

    2025年1月から全国展開されたスタートアップビザ制度を活用すれば、まずは「特定活動」の在留資格で日本に滞在しながら、最長2年間かけて事業準備を進められます。認定を受けた自治体のサポートも受けられるため、効率的に準備が進められるでしょう。

「高度専門職」ビザ取得のポイント

  • ポイント計算の正確性

    ポイント計算表に基づいて正確にポイントを計算し、70点以上となるようポイントの獲得戦略を立てることが重要です。特に年収や職歴、学歴などの高得点項目で確実にポイントを確保しましょう。

  • 各ポイント項目の立証資料の準備

    学歴証明書(学位記、卒業証明書)、職歴証明書(在職証明書、業務内容の記載があるもの)、年収証明書(源泉徴収票、年収証明書)など、各ポイント項目を証明する資料を準備します。外国語の証明書には日本語訳を添付する必要があります。

  • 日本での具体的な活動内容と所属機関の明確化

    高度専門職ビザでは、日本で従事する具体的な活動内容と、所属する機関(企業等)を明確に示す必要があります。単に投資家として資金を投じるだけでなく、どのような専門性を活かした活動を行うのかを具体的に説明することが求められます。

  • 特別高度人材制度(J-Skip)の検討

    年収が非常に高い(経営・管理活動の場合4,000万円以上)場合や、高い学歴と専門性を持つ場合は、特別高度人材制度(J-Skip)の要件を満たせるか検討してみましょう。要件を満たせば、ポイント計算なしで高度専門職ビザが取得でき、永住許可申請までの期間も最短1年に短縮されます。

「特定活動」ビザ取得のポイント

  • 適用条件の徹底的な確認

    「特定活動」は個別指定の在留資格であるため、自分が対象となる特定の活動条件を正確に理解し、それに合致することを証明する必要があります。特に金融・資産運用特区関連の特定活動は、2025年5月時点では運用の詳細が検討段階であるケースもあるため、最新情報の確認が重要です。

  • 指定される活動内容の正確な理解

    「特定活動」ビザでは、指定された活動以外を行うことはできません。どのような活動が認められるのか、どのような制限があるのかを正確に理解しておく必要があります。

  • 必要な投資や活動実績の証明

    金融・資産運用特区関連の特定活動では、一定規模の投資実績や特定の活動実績が求められる可能性があります。これらを客観的に証明できる資料の準備が必要です。

重要:申請書類の正確性と一貫性

いずれのビザ申請においても、提出書類の正確性と一貫性が非常に重要です。特に富裕層の方々は、資産形成の経緯や事業の実態などについて詳細な説明が求められることがあります。矛盾のない一貫した説明と、それを裏付ける客観的な証拠資料の提出が必要です。書類不備や虚偽の申告は、不許可の原因となるだけでなく、将来の申請にも悪影響を及ぼす可能性があります。

日本移住における富裕層特有の検討事項

資産運用と管理

日本に移住する富裕層にとって、資産運用と管理は重要な関心事です。日本は国際的な金融センターとしての地位を高めようとしており、2024年に指定された金融・資産運用特区(東京、大阪、福岡、北海道)では、資産運用業に関する規制緩和や優遇措置が進められています。ただし、日本の金融機関での口座開設には、在留カードや住民票など一定の居住実態が求められることが一般的です。また、海外資産の運用継続と日本国内での新規投資のバランスを検討する必要があります。

不動産投資

日本の不動産は、安定した収益性と資産価値の維持が期待できる投資先として人気があります。ただし、不動産購入のみではビザは取得できないことに注意が必要です。不動産投資は「経営・管理」ビザの事業内容の一部として位置づけるか、または居住用として購入することが一般的です。不動産取引には様々な税金(不動産取得税、固定資産税、登録免許税など)がかかる点も理解しておく必要があります。

税金制度

日本に移住する際は、日本の税制についての理解が必要です。特に重要なのは以下の点です

  • 居住者判定:日本に住所を有する場合や1年以上の居所を有する場合は「居住者」として、世界中の所得に対して日本で課税されます。
  • 所得税・住民税:最高税率は所得税45%、住民税約10%と非常に高い水準です。
  • 相続税・贈与税:日本の相続税・贈与税は国際的に見ても高税率であり、居住者は国外資産も課税対象となります。ただし、「非永住者」は海外資産の取り扱いに特例があります。
  • 出国税:一定の金融資産を保有する居住者が国外転出する際には、未実現のキャピタルゲインに対して課税される「出国税」の対象となる可能性があります。

富裕層の方々は複雑な資産構成を持つことが多いため、日本と中国双方の税理士によるアドバイスを受けることをお勧めします。

子女の教育環境

子どもの教育環境も移住の重要な検討事項です。日本には多くのインターナショナルスクールがあり、英語や中国語による教育を受けることが可能です。また、日本の公立・私立学校も高い教育水準で知られています。子どもの年齢や語学力、将来のキャリアプランに合わせた学校選びが大切です。なお、「高度専門職」ビザ保持者は、一定条件下で子どもが高校・大学を卒業後も日本に残って就職活動を行うことが認められています。

生活環境・医療

日本は安全性、清潔さ、公共交通機関の充実度、医療水準の高さなど、生活の質の面で世界的に高い評価を受けています。特に医療面では、最先端の医療技術と国民皆保険制度により、質の高い医療サービスを受けることができます。ただし、外国人向けの多言語対応医療施設は限られているため、言語面での不安がある場合は事前に調査しておくことをお勧めします。

永住許可(Permanent Residency)への道筋

最終的に日本での永住を希望する場合、永住許可申請の要件を理解しておくことが重要です。一般的な永住許可の基本要件は以下の通りです

  • 素行が善良であること
  • 独立した生計を営むに足りる資産または技能を有していること
  • 日本国の利益に合すると認められること
  • 原則として10年以上日本に在留していること(ただし高度人材は短縮あり)

各ビザから永住許可を目指す場合の一般的な期間は以下の通りです

  • 経営・管理ビザ:通常10年の在留歴が必要
  • 高度専門職ビザ(70点以上):3年の在留歴で申請可能
  • 高度専門職ビザ(80点以上):1年の在留歴で申請可能
  • 特別高度人材(J-Skip):1年の在留歴で申請可能
  • 金融・資産運用特区関連:優遇措置により短縮される可能性あり(詳細は2025年5月時点では検討中)

まとめ

中国の富裕層が日本へ移住するためのビザ選択は、個々の目的、資産状況、事業計画、家族構成などによって最適なものが異なります。2025年5月時点での主な選択肢を整理すると

  • 「経営・管理」ビザ:日本での起業や事業経営を希望する方に適しています。スタートアップビザを活用すれば段階的に要件を満たしていくことも可能です。
  • 「高度専門職」ビザ:学歴、職歴、年収などの条件でポイントを積み上げることができる方、または特別高度人材(J-Skip)の要件を満たす高収入の方に適しています。永住許可申請までの期間短縮など大きな優遇措置があります。
  • 「特定活動」ビザ:金融・資産運用特区での投資活動など、特定の条件を満たす方に限定的に適用される可能性があります。最新の制度改正を注視する必要があります。

いずれのビザも、事前の十分な情報収集、周到な準備、そして正確な申請が不可欠です。特に「経営・管理」や「高度専門職」は、計画性や立証資料の質が審査を大きく左右します。

また、移住に際しては、ビザ取得だけでなく、税制、資産管理、教育、医療などの側面も総合的に検討し、長期的な視点での計画を立てることが重要です。将来的な永住許可取得も視野に入れた戦略的なアプローチが成功への鍵となるでしょう。

専門家(行政書士)への相談のすすめ

複雑なビザ要件の理解、事業計画の策定、膨大な申請書類の準備、入国管理局との折衝など、富裕層の移住計画には専門的なサポートが不可欠です。

行政書士しかま事務所では、中国人富裕層の日本移住に関するビザ申請(経営・管理、高度専門職等)、法人設立、各種コンサルティングについて、近年高まるニーズに応えるかたちで体制を整えております。投資や事業展開を通じた安定的な在留を目指す方に対し、法的要件を踏まえた最適なプランのご提案から申請書類の作成・提出まで、一貫して対応いたします。

中国語によるご相談にも、通訳を介した対応が可能です。日本での移住・拠点設置をお考えの方や、そのアドバイザーの皆様は、どうぞお気軽にご相談ください。

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