日本の産業を支える外国人労働者: 特定技能ビザの拡張
行政書士しかま事務所
特定技能ビザ制度と労働力不足解消の新たな展開
2019年、日本は特定産業の労働力不足を解消し、外国人労働者による日本経済への貢献を目指して、特定技能ビザ制度を導入しました。この制度は特定技能1号と特定技能2号の二つのカテゴリーに分けられ、それぞれ異なる要件と在留期間を設けています。
特定技能1号は、一定の技能と日本語能力を持つ労働者を対象に、最長5年間の在留が許可されます。
一方、特定技能2号は、より高度な技能を持つ労働者を対象に、更新を通じて事実上無期限の在留が可能です。
特定技能1号
- 特定産業分野で一定の技能を有していること
- 日本語能力試験N4以上を取得していること
- 在留期間：最長5年
特定技能2号
- 特定産業分野で高度な技能を有していること
- 日本語能力試験N4以上を取得していること
- 特定技能1号の在留資格を取得し、5年間の在留期間を満たしていること
- 在留期間：更新の継続によって事実上無期限
特定技能ビザ対象分野の拡充と期待される効果
2023年12月、政府は対象分野の拡充を検討する案を発表しました。これは、コロナ禍による深刻な人手不足に加え、国際的な人材獲得競争の激化という2つの背景に基づいています。
2024年2月には、自動車運送業、鉄道業、林業、木材産業の4分野を特定技能1号に追加する閣議決定案が発表されました。これは、経済成長戦略の一環として、更なる人材確保を促進することを目的としています。
これら分野の人手不足解消は、物流効率化、交通網の安全保障、持続可能な森林資源管理、国内木材利用の促進など、社会全体に利益をもたらす重要な課題に直結します。特定技能ビザ制度の拡充がこれらの分野の活性化につながることが期待されます。
特定技能ビザ制度拡充案の展望と課題
2023年12月案は、14分野を特定技能1号に追加する検討案でした。一方、2024年2月閣議決定案は、その中から4分野に絞り、より慎重な検討を経て決定されました。
2023年12月案で検討されていた10分野は以下の通りです。
- 農業
- 漁業
- 宿泊
- 飲食料品製造
- 建設
- 造船・舶用工業
- 情報通信
- 医療
- 介護
- ビルメンテナンス
- 素形材・産業機械製造
- 環境
2024年2月閣議決定案で追加される4分野は以下の通りです。
- 自動車運送業
- 鉄道業
- 林業
- 木材産業
4分野追加により、人手不足解消と産業活性化が期待されます。
自動車運送業では、物流や観光業の効率化が促進されます。鉄道業では、安全運行の確保とサービス向上に貢献します。林業では、森林資源の持続的な管理と地域経済の活性化に貢献します。木材産業では、国内木材の有効活用と新たな雇用創出に貢献します。
制度の課題
制度拡大は人手不足解消に貢献する一方、以下の課題も指摘されています。
課題
- 外国人労働者の受け入れに伴う、社会保障や教育などのインフラ整備
- 外国人労働者の日本語教育や職業訓練の充実
- 外国人労働者の人権や労働環境の保護
行政書士の役割
行政書士は、特定技能ビザの申請支援を通じて、企業と外国人労働者の架け橋となり、円滑な受け入れと多文化共生社会の実現に貢献します。
特定技能ビザ制度は、日本経済と社会にとって重要な意味を持ちます。制度の適切な運用と課題解決が今後の大きな課題です。行政書士として、これらのプロセスをサポートし、制度の成功に貢献することが重要です。
特定技能ビザ制度は、日本が直面する人手不足問題の解決策として重要な位置を占め、外国人労働者の受け入れを通じて日本経済のさらなる活性化が期待されます。しかし、その成功は政府、企業、社会が一体となって制度の運用を見直し、課題に対応していくことにかかっています。行政書士は、この制度が円滑に機能するためのキーパーソンとして、外国人労働者と日本社会との橋渡しを行う責任があります。今後も、制度の正しい理解と適用を支援し、多文化共生の実現に向けて努力していく必要があります。
