外国人宗教家を呼びたい/活動したい:「宗教」ビザの要件と申請手続き
外国人宗教家(僧侶、牧師、宣教師、司祭、イマームなど)を日本に招聘したい宗教団体の方、または日本で宗教活動を行いたい外国人宗教家の方へ向けて、在留資格「宗教」に関する要件と申請手続きを解説します。
こんなお悩みはありませんか?
- 海外の宗教家を日本に招聘するための適切な在留資格について知りたい
- 「宗教」ビザの申請に必要な書類や手続きについて詳しく知りたい
- 日本で宗教活動を行う際の法的要件や注意点を理解したい
- 宗教家としての地位や派遣元機関の証明をどのように行えばよいか知りたい
- 在留期間の更新や在留資格の変更について知りたい
1. 在留資格「宗教」とは
在留資格「宗教」は、外国の宗教団体から日本に派遣された宗教家が、日本国内で布教やその他の宗教上の活動を行うために滞在することを認めるビザです。この在留資格は、出入国管理及び難民認定法に基づいて付与されます。
1-1. 対象となる活動
「宗教」の在留資格に該当する活動は、「外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動」と定められています。
具体的に対象となる方は、以下のような宗教家です
- 宣教師
- 牧師
- 神父
- 僧侶
- 司祭
- 司教
- イマーム(イスラム教の指導者)
- ラビ(ユダヤ教の指導者)
- その他の宗教指導者
1-2. 在留期間
「宗教」の在留資格における在留期間は、申請内容や審査結果に応じて、5年、3年、1年または3ヶ月のいずれかが決定されます。
2. 在留資格「宗教」の要件
2-1. 宗教家本人に関する要件
「宗教」ビザを取得するためには、申請者(宗教家本人)が以下の要件を満たしていることが必要です
- 宗教家としての地位の確立:申請者が宗教家(宣教師、牧師、僧侶、司祭など)として正式な地位を有していること
- 派遣元団体からの正式な派遣:海外の宗教団体から正式に派遣されたことを示す派遣状または推薦状を有していること
- 宗教上の活動を行う目的:日本での活動目的が布教や宗教儀式の執行など、宗教上の活動であること
- 生活費支弁能力:日本での生活を維持できる十分な収入または資金を確保できること
なお、単なる信者としての活動や教会等の雑役に従事するだけの場合は、「宗教」の在留資格の対象とはなりません。宗教家として布教活動等を主体的に行うことが求められます。
2-2. 派遣元・受入機関に関する要件
派遣元の宗教団体および日本での受入機関についても、以下の要件を満たす必要があります
- 派遣元が「外国の宗教団体」であること:外国に宗教上の活動を行うための組織を有する宗教団体であること(必ずしも本部が外国にある必要はありません)
- 受入機関の実態と安定性:日本国内に活動の拠点となる施設があり、宗教法人やそれに準ずる団体として実体があること
- 活動内容の具体性と合法性:宗教活動の内容が具体的で計画性があり、かつ日本の法令に反しないこと
「外国の宗教団体」の定義について
「外国の宗教団体」とは、外国に宗教上の活動を行うための組織を有する宗教団体を意味します。必ずしもその団体の本部が外国にある必要はなく、本部が日本にある宗教団体でも、外国に宗教上の活動を行う組織を有していれば「外国の宗教団体」に含まれます。
2-3. 「宗教上の活動」の範囲
「宗教上の活動」には、以下のような活動が含まれます
- 布教活動:宗教の教義を広める活動
- 宗教儀式の執行:礼拝、祈祷会、法要などの宗教儀式の実施
- 信者の教化育成:信者に対する宗教教育や指導
- 関連する宗教活動:所属する宗教団体が運営する施設での宗教用品の販売など、宗教活動に密接に関連する活動
一方、以下のような活動は「宗教上の活動」には含まれません
- 主に修行や宗教上の教義等の研修を行う活動
- 自ら布教その他の宗教上の活動を行わない単なる信者としての活動
- もっぱら教会や寺院などの雑役に従事する活動
注意点
所属する宗教団体が運営する施設以外での語学教育・社会事業などについては、所属する宗教団体の意思に基づいて宗教活動の一環として行われるものでしたら、宗教上の活動に含まれる場合がありますが、これらの活動に対して別途報酬を受け取る場合は、原則として資格外活動許可が必要となります。
3. 申請手続きの流れ
「宗教」ビザの取得手続きは、申請者の状況によって異なります。主な申請パターンは以下の3つです。
3-1. 在留資格認定証明書交付申請(新規入国の場合)
外国にいる宗教家を日本に招聘する場合、まず日本国内の受入機関(宗教法人等)が在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility: COE)の交付申請を行います。
- 日本の受入機関が、最寄りの出入国在留管理局に必要書類を提出して申請
- 審査の結果、認められれば在留資格認定証明書が交付される(通常1〜3ヶ月程度)
- 交付された在留資格認定証明書を海外の宗教家に送付
- 宗教家本人が、自国の日本大使館・領事館にてビザ申請を行う
- ビザが発給され、日本に入国
3-2. 在留資格変更許可申請(既に日本に滞在している場合)
既に他の在留資格(留学、家族滞在など)で日本に滞在している外国人が、「宗教」の在留資格に変更する場合の手続きです。
- 申請者本人または申請取次者(所属機関の職員や行政書士など)が、最寄りの出入国在留管理局に必要書類を提出して申請
- 審査の結果、認められれば在留資格変更許可が下り、新しい在留カードが交付される
3-3. 在留期間更新許可申請(継続して活動する場合)
既に「宗教」の在留資格を持ち、引き続き同じ活動を継続して行う場合の手続きです。
- 在留期間満了日の3ヶ月前から申請可能
- 申請者本人または申請取次者が、最寄りの出入国在留管理局に必要書類を提出して申請
- 審査の結果、認められれば在留期間が更新され、新しい在留カードが交付される
4. 必要書類
「宗教」ビザの申請に必要な書類は、申請の種類によって異なります。ここでは各申請パターン別に必要書類を紹介します。
4-1. 在留資格認定証明書交付申請(新規入国)の場合
必要書類 | 備考 |
---|---|
在留資格認定証明書交付申請書 | 1通(出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロード可能) |
写真 | 1葉(縦4cm×横3cm、申請前6か月以内に撮影、無帽、無背景) |
返信用封筒 | 定形封筒に宛先を明記し、簡易書留用の切手を貼付したもの |
外国の宗教団体からの派遣状等の写し | 派遣機関からの派遣期間、地位及び報酬を証明する文書 |
派遣機関及び受入機関の概要を明らかにする資料 | 宗派、沿革、代表者名、組織、施設、信者数等を含む資料 |
宗教家としての地位及び職歴を証明する文書 | 派遣機関からの証明書等(派遣状に記載がある場合は不要) |
パスポートの写し | 提出可能な場合(申請時に任意提出) |
4-2. 在留資格変更許可申請の場合
必要書類 | 備考 |
---|---|
在留資格変更許可申請書 | 1通(出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロード可能) |
写真 | 1葉(縦4cm×横3cm、申請前6か月以内に撮影) |
パスポート及び在留カード | 原本提示 |
外国の宗教団体からの派遣状等の写し | 派遣機関からの派遣期間、地位及び報酬を証明する文書 |
派遣機関及び受入機関の概要を明らかにする資料 | 宗派、沿革、代表者名、組織、施設、信者数等を含む資料 |
宗教家としての地位及び職歴を証明する文書 | 派遣機関からの証明書等(派遣状に記載がある場合は不要) |
4-3. 在留期間更新許可申請の場合
必要書類 | 備考 |
---|---|
在留期間更新許可申請書 | 1通 |
写真 | 1葉(縦4cm×横3cm、申請前6か月以内に撮影) |
パスポート及び在留カード | 原本提示 |
外国の宗教団体からの派遣状等の写し | 派遣の継続を証明する文書 |
住民税の課税(または非課税)証明書 | 1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの |
納税証明書 | 住民税の納税状況が確認できるもの |
重要な注意点
- 提出書類が外国語で作成されている場合は、日本語の訳文を添付してください。
- 日本で発行される証明書は、発行日から3か月以内のものを提出してください。
- 申請内容や状況によっては、上記以外の資料の提出を求められる場合があります。
- 申請書は両面印刷ではなく片面印刷で提出してください。
5. 審査のポイントと注意点
「宗教」ビザの審査において特に重視されるポイントと、申請時の注意点について解説します。
5-1. 主な審査ポイント
宗教家としての地位の確立
申請者が正規の宗教家(宣教師、牧師、僧侶など)として認められているかどうかが重要です。宗教家としての地位、経歴、資格などを証明する文書が求められます。
派遣元・受入機関の信頼性
派遣元の宗教団体と日本での受入機関が実態のある組織であり、安定した活動実績があるかどうかが審査されます。
具体的な活動計画
日本での宗教活動の内容が具体的で、「宗教」ビザの対象活動に合致しているかどうかが重要です。抽象的な活動計画では審査が厳しくなる場合があります。
生活基盤の安定性
申請者が日本で安定した生活を送れるだけの収入や財政的基盤があるかどうかが審査されます。報酬額や生活費の支弁方法を明確に示すことが重要です。
5-2. 申請時の注意点
- 派遣状の詳細さ:派遣状には派遣期間、地位、役割、報酬などを具体的に記載することが重要です。
- 在留資格に該当する活動の立証:単なる信者や雑役ではなく、宗教家として布教などの活動を行うことを明確に示す必要があります。
- 過去の実績の証明:過去の宗教家としての活動実績や資格を示す証明書類があると有利です。
- 違法行為の回避:宗教活動の内容が日本の法令に違反する場合や公共の福祉を害する場合は許可されません。
- 納税状況の確認:在留期間更新の際には、納税義務を適正に履行していることが重要です。
在留資格変更・更新のガイドライン
在留資格の変更や更新の審査では、以下の点も考慮されます
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
- 素行が不良でないこと
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- 雇用・労働条件が適正であること
- 納税義務等を履行していること
- 入管法に定める届出等の義務を履行していること
6. 宗教ビザに関するよくある質問
Q1. 宗教ビザで結婚式の司式はできますか?
宗教ビザで在留する宣教師・牧師・神父・僧侶などが、結婚式の司式を行うことは、所属する宗教団体の指示に基づいて宗教活動の一環として行われるものであれば、宗教ビザの活動範囲内として認められます。ただし、所属する宗教団体の指示がない場合や、別途報酬を受け取る場合は、資格外活動許可が必要となる場合があります。
Q2. 宗教系の学校で教員として活動できますか?
宗教ビザで在留する宗教家が、ミッション系の教育機関(幼稚園・学校など)の教員として活動することは、所属する宗教団体の意思に基づいて宗教活動の一環として行われるものであれば、認められる場合があります。ただし、所属する宗教団体から通常受ける宗教上の活動に対する報酬とは別に、教員としての報酬が支払われる場合は、資格外活動許可が必要となります。
Q3. 宗教ビザの最長在留期間はどれくらいですか?
「宗教」の在留資格における最長の在留期間は5年です。申請内容や審査結果に応じて、5年、3年、1年または3ヶ月のいずれかの期間が決定されます。在留期間満了後も継続して活動を行う場合は、在留期間更新許可申請を行う必要があります。
Q4. 宗教ビザでアルバイトはできますか?
「宗教」の在留資格を持つ方が、本来の宗教活動以外の収入を得る活動(アルバイトなど)を行う場合は、原則として事前に資格外活動許可を受ける必要があります。ただし、所属する宗教団体の意思に基づいて宗教活動の一環として行われる活動であれば、許可なく行える場合もあります。具体的なケースについては、専門家にご相談ください。
Q5. 日本の宗教団体が本部の場合でも「宗教」ビザは取得できますか?
はい、取得可能です。「外国の宗教団体」の定義において、必ずしも本部が外国にある必要はありません。本部が日本にある宗教団体でも、外国に宗教上の活動を行う組織を有していれば「外国の宗教団体」に含まれます。したがって、申請人が海外の宗教団体に所属しており、その団体から派遣状等を受けている場合は、「宗教」ビザの対象となります。
7. まとめ
「宗教」ビザ(在留資格)は、外国の宗教団体から日本に派遣された宗教家が布教などの宗教活動を行うために滞在することを認める在留資格です。申請に当たっては、宗教家としての地位の証明、派遣元・受入機関の信頼性、活動内容の具体性、生活基盤の安定性などが重要な審査ポイントとなります。
申請手続きは、新規入国の場合は在留資格認定証明書交付申請、既に日本に滞在している場合は在留資格変更許可申請、継続して活動する場合は在留期間更新許可申請を行います。それぞれの申請に必要な書類を適切に準備し、審査のポイントを押さえて申請することが重要です。
「宗教」ビザの取得・更新は、書類準備や要件の立証など専門的な知識が必要とされます。不明点や懸念事項がある場合は、出入国在留管理に精通した行政書士への相談をお勧めします。
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※本記事は2025年5月時点の情報に基づいています。法改正や運用の変更により、内容が変わる場合がありますので、最新情報については出入国在留管理庁のウェブサイトをご確認いただくか、専門家にご相談ください。
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