外国人アーティスト・タレントを呼ぶには?在留資格「興行」ビザ徹底解説

外国人アーティスト・タレントを呼ぶには?在留資格「興行」ビザ徹底解説 | 行政書士しかま事務所

世界的なエンターテイメント産業のグローバル化に伴い、日本でも海外のアーティストやタレント、スポーツ選手などを招聘し、公演やイベントを行う機会が増えています。しかし、日本で報酬を得て活動するためには、適切な在留資格が必要です。本記事では、外国人アーティストやタレントが日本で活動するために必要な在留資格「興行」について、その概要や申請手続き、特に重要な招聘機関・施設要件を詳しく解説します。

注目ポイント:令和5年8月1日に在留資格「興行」に係る基準省令等が改正され、施行されました。本記事では最新の基準に基づいて解説しています。

1. 在留資格「興行」とは

在留資格「興行」とは、外国人が日本国内で芸能活動やスポーツ活動などを行うために与えられる在留資格です。「出入国管理及び難民認定法」(入管法)において、「演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動」と定義されています。

興行ビザで可能な活動例

  • 音楽アーティストのコンサート・ライブ公演
  • 演劇・舞踊・伝統芸能の公演
  • プロスポーツ選手の試合出場
  • 映画・ドラマ・CM等の撮影
  • モデルとしての広告・ファッションショー出演
  • テレビ番組への出演
  • 商業用レコード・映像の録音・録画

在留期間

在留資格「興行」の在留期間は、3年、1年、6月、3月または30日と定められています。活動内容や招聘機関の状況により、適切な在留期間が決定されます。

2. 基準省令に基づく在留資格「興行」の区分

在留資格「興行」の審査基準は、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(基準省令)に定められています。令和5年8月1日の改正により、従来の1号〜4号の区分が一部統合され変更されました。

区分活動内容主な要件
基準1号演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏の興行に係る活動 イ:風営法第2条第1項第1号から第3号までに規定する営業を営む施設で行われる活動
ロ:イ以外の施設で行われる活動(公的機関主催、文化交流目的、観光施設、客席収容100人以上の施設など)
基準2号演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏の興行以外の興行(スポーツ等)に係る活動報酬要件:日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上を受けること
基準3号芸能活動(商品・事業宣伝、放送番組・映画製作、商業用写真撮影、レコード録音等)報酬要件:日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上を受けること

3. 招聘機関・施設に関する要件

在留資格「興行」の申請において、特に重要なのが招聘機関(契約機関)と施設に関する要件です。基準区分によって要件が異なりますので、詳細に解説します。

3-1. 基準1号イの招聘機関要件(風営法関連施設)

風営法に関連する施設での活動に対する招聘機関の要件は最も厳格です。これは過去に人身取引や不法就労等の問題が発生したことを背景としています。

  1. 経験要件:外国人の興行に係る業務について通算して3年以上の経験を有する経営者または管理者がいること
  2. 欠格事由:当該機関の経営者または常勤の職員が以下に該当しないこと
    • 出入国または労働に関する法令に関し不正または不当な行為をした者
    • 暴力団員または5年以内に暴力団員であった者
    • 風営法違反等により罰金刑に処せられ5年を経過しない者
    • 人身取引等に関与した者
    • 不法就労助長罪等により刑に処せられ5年を経過しない者
  3. 報酬の支払い:過去3年以内に興行活動を行った外国人に対して、その報酬の全部または一部を支払わなかったことがないこと
  4. 適正遂行能力:外国人の興行に係る業務を適正に遂行する能力を有すること

令和5年改正ポイント(カテゴリー制度):招聘機関は過去の申請実績に応じて2種類のカテゴリーに分類され、カテゴリー1(過去に基準1号イに適合するとして在留資格認定証明書の交付を受けたことのある機関)とカテゴリー2(それ以外の機関)で審査期間や提出書類が異なります。

3-2. 基準1号ロの施設要件

風営法関連施設以外での演劇・演芸・歌謡・舞踊・演奏の興行に関する施設要件は、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 国・地方公共団体の機関または特殊法人が主催する興行、学校教育法に規定する学校等において行われるもの
  • 文化交流に資する目的で、国・地方公共団体または独立行政法人の援助を受けて設立された本邦の公私の機関が主催するもの
  • 外国の情景または文化を主題として観光客を招致するために、外国人による興行を常時行っている敷地面積10万平方メートル以上の施設で行われるもの
  • 客席において飲食物を有償で提供せず、かつ、客の接待をしない施設(営利を目的としない本邦の公私の機関が運営するものまたは客席部分の収容人員が100人以上であるものに限る)において行われるもの
  • 当該興行により得られる報酬の額(団体の場合は総額)が1日につき50万円以上であり、かつ、30日を超えない期間本邦に在留して行われるもの

令和5年改正ポイント(客席要件):「客席部分の収容人員が100人以上」の規定について、客席が設置されていないライブハウス等でも、スタンディングで100人以上収容できる施設も認められるようになりました。また、客席と一体性のある場所に設置されているバーカウンター等で飲食物を提供する場合でも、客がバーカウンターで飲食物を受け取り、自ら客席に運んで飲食する場合は、「客席において飲食物を提供」には当たらないこととなり、要件が緩和されました。

3-3. 基準2号・3号の招聘機関・施設要件

スポーツ興行(基準2号)や商業宣伝・映像製作等の芸能活動(基準3号)については、招聘機関に関する特定の要件はありませんが、以下の点が重要です。

  • 招聘機関が適法に設立・運営されていること
  • 日本人が同様の活動を行う場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を支払うこと
  • 契約内容が明確かつ適正であること

4. 在留資格「興行」の申請手続き

在留資格「興行」の申請手続きは、主に以下の流れで進められます。

  1. 在留資格認定証明書(COE)の申請
    • 日本の招聘機関が外国人に代わって日本の出入国在留管理局に申請
    • 審査期間は通常1〜3ヶ月程度(基準1号イのカテゴリー1は最短2週間)
  2. 在留資格認定証明書の受け取りと海外送付
    • 審査に通過すると在留資格認定証明書が発行される
    • 招聘機関は証明書を海外の外国人アーティスト等に送付
  3. ビザ(査証)申請
    • 外国人は居住国の日本大使館・領事館で在留資格認定証明書を提示してビザを申請
    • 通常5営業日程度でビザが発給される
  4. 来日・入国審査
    • ビザを取得して来日、入国審査時に在留カードが交付される

4-1. 必要書類

在留資格認定証明書交付申請に必要な主な書類は以下のとおりです(基準区分によって異なる場合があります)。

  • 申請人(外国人)に関する書類
    • 在留資格認定証明書交付申請書
    • 写真(縦4cm×横3cm)
    • 返信用封筒(簡易書留用)
    • 申請人の経歴書及び活動に係る経歴を証する文書
    • パスポートの写し
  • 招聘機関に関する書類
    • 登記事項証明書
    • 決算報告書(直近のもの)
    • 事業内容を明らかにする資料
    • 基準1号イの場合:経営者・常勤職員名簿、外国人の興行に係る業務経験を証する書類、申立書
  • 施設に関する書類
    • 施設の概要を明らかにする資料(座席数・面積・図面等)
    • 風営法に係る営業許可証の写し(該当する場合)
  • 契約に関する書類
    • 興行に係る契約書の写し(報酬額、活動内容、期間等が明記されたもの)
    • 招へい理由書(通常興行を行っていない会社等の場合)

5. 申請における注意点と不許可事例

在留資格「興行」の申請において、以下の点に注意が必要です。

5-1. 主な注意点

  • 十分な準備期間の確保:興行の日程が決まったら、少なくとも3〜4ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。
  • 契約内容の明確化:報酬額、活動内容、活動場所、活動期間を明確に契約書に記載しましょう。
  • 施設要件の事前確認:特に基準1号の場合、施設が要件を満たしているか事前に確認してください。
  • 招聘機関の実績・体制:基準1号イでは特に、招聘機関の過去の実績や体制が重要です。
  • 報酬額の適正性:報酬額が活動内容に見合った適正な金額であることが必要です。基準1号の場合、月額20万円以上が目安となります。
  • 活動範囲の厳守:認められた活動内容・場所以外での活動は資格外活動となり、法的制裁の対象となる可能性があります。

注意:在留資格「興行」で認められているのは申請時に認可された契約内容と出演場所に限定されます。追加の公演やイベント出演、テレビ出演等を行う場合は、資格外活動許可の取得が必要な場合があります。

5-2. 不許可となりやすい事例

  • 招聘機関の事業実態や経営状況が不安定
  • 施設が基準省令の要件を満たしていない
  • 報酬額が不当に低い、または支払いの裏付けが不十分
  • 外国人の経歴や能力が活動内容に見合っていない
  • 過去の在留状況に問題がある(資格外活動や不法就労等)
  • 提出書類に不備や虚偽がある

特に基準1号イの場合、招聘機関の欠格事由に該当する場合は不許可となります。また、風営法関連施設での活動は人権侵害防止の観点から厳格に審査されます。

6. 行政書士への相談メリット

在留資格「興行」の申請は複雑で、基準省令の解釈や必要書類の準備には専門的な知識が必要です。特に以下のような場合は、専門家である行政書士への相談をお勧めします。

  • 初めて外国人アーティスト・タレントを招聘する場合
  • 風営法関連施設での活動を予定している場合
  • 複数の会場・活動内容がある場合
  • 過去に不許可となった経験がある場合
  • 短期間での申請が必要な場合

専門家にご相談ください

行政書士しかま事務所では、在留資格「興行」の申請サポートを行っています。外国人アーティスト・タレントの招聘に関する複雑な手続きを、経験豊富な専門家がスムーズにサポートいたします。

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まとめ

在留資格「興行」は、外国人アーティスト・タレント・スポーツ選手等を日本に招聘し、公演・イベント・撮影等を行うために必要不可欠なビザです。特に招聘機関や施設に関する要件が複雑で、基準区分によって大きく異なることが特徴です。

令和5年8月1日の法改正により一部要件が緩和されましたが、依然として厳格な審査が行われています。特に風営法関連施設での活動に対しては、招聘機関の実績や体制に関する厳しい要件が設けられています。

外国人アーティスト・タレントの招聘を計画している事業者の皆様は、十分な準備期間を確保し、必要な要件を満たしているか事前に確認することが重要です。不明点や複雑な事案については、専門家である行政書士にご相談いただくことで、スムーズな申請手続きが可能になります。

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